何度見ても涙腺が……。ミュージカル『ファインディング・ネバーランド』で演劇的喜びに満ちた体験!

演劇ジャーナリスト・伊達なつめさんが心揺さぶられた舞台などをご紹介する連載「劇場が呼んでいる」。今回は名作『ピーターパン』を生んだ作者の人生を追体験し、心揺さぶられる名舞台などをご紹介しています。

PROFILE

伊達なつめ/だてなつめ

演劇ジャーナリスト。4年ぶりにヨーロッパの舞台芸術フェス巡りを計画中。しかしエアもホテルも気持ちいいほど高くなり、清水の舞台から飛び降りる羽目に。

何度見ても涙腺が......演劇的喜びに満ちた体験!

ミュージカル『ファインディング・ネバーランド』

原作/デヴィッド・マギーの映画作品、アラン・ニーの戯曲 演出/小山ゆうな 出演/山崎育三郎、濱田めぐみ、武田真治ほか 5月15日~6月5日 新国立劇場 中劇場

※チケットが完売になっている場合がございます。

個人的には、映画や小説の内容を示すタグに「泣ける」とあるとドン引きする方ですが、この作品を前にすると、その切なさ、美しさ、無情さ、愛おしさに惹きつけられ、何度観ても涙腺が崩壊してしまいます。

スランプで新作舞台の台本が書けない劇作家ジェームズ・バリが、ケンジントン公園で出会ったピーター少年やその家族と交流するなかで、あの永遠の名作『ピーターパン』を生み出すという事実に基づき、映画にもなった話のミュージカル化。観ていてワクワクするのは、昔も今も変わらない、劇作家やプロデューサー、俳優たちの舞台を完成させるまでの悲喜こもごもを、メイキングのドキュメンタリーを見るかのように、ライブで目にする臨場感です。努力や偶然の気づきから演出やダンスが生まれ、最後に観客の存在でひとつの舞台が完成する。その最終過程に「観客役」として参加している自分を実感することができます。

一方、バリの結婚生活は破綻し、ピーターと兄弟たちの母シルヴィアは、夫を亡くした数年後に子どもたちを残して病死。結果、幼いピーターたちは両親に先立たれることに。そんな登場人物たちの、実人生を反映した悲痛な運命も、同時進行で描かれます。ピーターパンという、大人にならないことを選ぶ少年の抱える闇の一端を、観客は、彼ら/彼女らの姿から察することになるのです。

代えがたい生の舞台の魅力と、辛すぎる現実が交錯し、怒濤のようにエモーショナルなひとときが訪れる。これぞカタルシス! 劇場でしか味わえない極上体験です。

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COCOON PRODUCTUIN 2023 『パラサイト』

ポン・ジュノの映画版もエグかったけれど、舞台版もキャストの顔ぶれだけで、すでに半端なさそう。貪欲でエネルギッシュな人たちを描かせたら右に出る者ナシの鄭義信が手がけます。

台本・演出/鄭義信 出演/古田新太、宮沢氷魚、伊藤沙莉、江口のりこほか 6月5日~7月2日 THEATER MILANO-Za、7月7日~17日 大阪・新歌舞伎座

身分や立場を超えた女たちの交流と絆を描く『ピエタ』

『ピエタ』

18世紀、ヴェネツィアの慈善院・ピエタを舞台とした大島真寿美の物語を、小泉今日子が主演・プロデュース。コロナ禍での上演延期を経て、満を持しての上演。キャストの顔ぶれも強力。

原作/大島真寿美 脚本・演出/ペヤンヌマキ 出演/小泉今日子、石田ひかり、峯村リエほか 7月27日~8月6日 本多劇場 ※愛知、富山、岐阜公演あり

『クウネル』2023年7月号掲載
文/伊達なつめ

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『クウネル』No.121掲載

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