明治座150周年記念の「市川猿之助奮闘歌舞伎公演」の魅力とは?【演劇ジャーナリストのおすすめ舞台】

演劇ジャーナリスト・伊達なつめさんのおすすめ舞台をご紹介!1873年の創業から150年を数える東京・『明治座』で、市川猿之助がスペクタクルな歌舞伎公演で奮闘します。

伊達なつめ

『明治座』はオーナーが料亭だけあり食堂や弁当のクオリティの高さでも有名。劇場と甘酒横丁、双方で嗅覚を刺激されること請け合い!

創業150年を迎える明治座で、 市川猿之助の熱い舞台を

本橋の人形町界隈は、かつては江戸三座のうち中村座と市村座があって、芝居町として栄えました。人形町駅から甘酒横丁を抜けると見えてくる『明治座』は、そんな往時をしのばせる一方、150年にわたって、移ろいやすいライブエンタメ界でいま何が受けているのかを貪欲に嗅ぎ取り舞台に乗せてきた、商業演劇の殿堂です。

新派や新国劇が新作を連発した50〜60年代、杉良太郎がゴンドラに乗って登場し流し目で悩殺した80年代、マツケンサンバ・ブームに沸いた00年代。

つねにホットな大衆の嗜好をキャッチしてきたその上演史にあって、盤石の人気を誇るのが、歌舞伎。河竹黙阿弥の新作が初演された世紀から今日に至るまで、明治座ラインナップの絶対王者であり続けています。

個人的には、70年代後半〜80年代の三代目市川猿之助(現・猿翁)の大奮闘が忘れられません。当時の歌舞伎界には、早替わりや宙乗りなど〝ケレン〟と呼ばれるアトラクション的な演出を蔑視する傾向がありました。

そのなかで猿之助はひとり、「これこそが江戸時代の観客を沸かせた歌舞伎なのだ」と主張。埋もれていた通し狂言を復活させ、初演時のようにケレンを駆使した演出で次々にリクリエイトして、観客の熱狂的支持を得たのです。

三代目猿之助により『明治座』で初演された一連の復活通し狂言は、いまや歌舞伎の大事な財産演目。クリエイターとしての才能と知性、俳優としての魅力と実力、いずれを取っても三代目に引けを取らない四代目猿之助が、『明治座』でその偉業を継承することに、深い感慨と愉悦を覚えずにはいられません。

明治座創業百五十周年記念『市川猿之助奮闘歌舞伎公演』

場所:明治座

昼の部:『不死鳥よ 波濤を越えて―平家物 語異聞』
夜の部:『三代猿之助四十八撰の内 御贔屓繫馬』
出演:市川猿之助ほか
5月3日〜28日(10、17日休演)
電:03-3666-6666

※写真は『御贔屓繫馬』より
https://www.meijiza.co.jp/info/2023/2023_05/

『クウネル』2023年5月号掲載
文/伊達なつめ

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