これはたるみ……!? 写真1枚から始まった、新しい美容ルーティン。【中川正子さんフォトエッセイVol.2】
50歳は人生の折り返し地点というけれど、旅の途中のようなもの。まだまだ成長できるし、もっと人生を楽しみたい。でも、実際は暮らしも体も気持ちもいろいろと変化するわけでーー。そんな50代のリアルな視点で、暮らし、美容と健康、装い、人との関わり、仕事、学び、旅……とさまざまなテーマで、今思うこと、日々のちいさな発見や挑戦を、写真家・中川正子さんが写真と文で綴ります。第2回は、美容のお話。ある日気づいてしまったたるみ問題のために始めた”舌エクササイズ”、果たして効果のほどは?
あごが、ない!
きっかけは1枚の写真だった。
友人に送ってもらったじぶんの横顔を見て驚愕した。あごが!ない!!
皮膚が、一直線につながっていた。あごの先端から首の根元のあたりまで。2枚目の写真を見る。そこには大笑いするわたしがいた。あごを引き、顔をくちゃくちゃにして笑ってる。とても楽しそうだ。皮膚は引かれたあごの下で折りたたまれ、二重あご、というか三重あごといった様相。愕然とした。なにこれ!!
友は楽しい集いの記録を送ってくれただけ。でも、もう、あごのことしか考えられない。慌てて手鏡をつかみ洗面所に走る。背筋を伸ばして映るわたしはだいたいいつも通りだ。ためしに、あの写真のじぶんと同じようにあごをちょっと引いて笑ってみた。すると、そこには! アコーディオンのように畳まれたわたしの皮膚が発生した。
これはあごというより、首の皮のたるみなのでは……!
こうして見ると、あごと首の境界はたいへん重要である。
舌って筋肉があるのか!
「首 たるみ」で検索してみる。無数の記事がヒットする。Instagramも開く。検索履歴が即座に反映されたアルゴリズムは首たるみ関連のポストをみるみる提案してくる。皮膚のたるみも理由だけど、舌の筋肉の衰えも関係していると主張するポストを読んだ。なんと!考えたこともなかった。舌って筋肉があるのか。そりゃそうか。
早速そのポストにあったエクササイズをやってみる。舌を根元から思いっきり上にあげ、前に突き出し、さらに舌先を天高く向けるというもの。その姿勢で30秒。鏡に映るじぶんは決して誰にも見せられないおそろしい顔つき! 舌って、こんなに伸びるのか。っていうか、じぶんの舌、ひさしぶりに見たな。
そういえば先日友人が「舌回し」をやってるなんてさらっと言ってた。その時はまったくの人ごとで、へーなんてスルーしてたけど。突然気になる。「舌回し」と検索してみると、なるほどたくさん出てくる。
早速舌をぐるりと回してみる。こういうエクササイズのよいところは、器具も何も必要なくその場でできる点。限界まで前に突き出されていたわたしの舌は、今度は上下の歯の表面を擦るようにぐるぐると回される。突然酷使されて驚いているでしょう。しばらく鏡に向かって続けてみる。
顔が、暇じゃないか!
揺れる草、流れる景色。わたしは舌を回す。
ピンポン。そこで玄関のベルが鳴る。時間がもったいないのでドアを開ける寸前までぐるぐると回しながら向かう。ドアを開ける瞬間にさっと舌を元に戻した。いつもの宅配便のお兄さん。1秒前までわたしがとんでもない顔で舌をぐるぐる回していたなんて知らないでしょう。
荷物を受け取りながら舌や口の中全体がなんとなくじんじんしていることに気づく。これは…効いているのかも!!
それからというもの、運転中は舌を突き出すか、舌を回すようになった。車移動が多い日々、時間を有効に使うべくポッドキャストを聞いたりしてきた。でもまだまだ工夫の余地があった。
顔が、暇じゃないか!
15分移動するのであれば15分間舌を回し続ける。たまに、上げる。赤信号では隣の車から少しずらして停まるようにしている。ふと向けた視線の先にとんでもない表情の女がいたら、よそ様の安全運転に影響を及ぼしてしまうかもしれない。
舌を回し始めて1週間ほど、もはやそれは暮らしの一部となった。また別の友人がわたしの写真を送ってくれた。とてもシャープな横顔だった。やった!たった1週間で!?
喜び勇んで鏡の前に確認に行く。あれ??
たいして変わってない。じぶんを欺かない正直な角度で見る。事実を受け止める。ほぼ同じシルエットのままだった。1週間じゃだめか。
写真を撮るときはあの奇跡の角度で乗り切ろう。しかし抜本的解決には至っていない。まったく、手強い皮だ。舌の筋トレだけで果たして足りるのだろうか。他にも何か別の筋肉があるのか。
首の皮一枚で、生きている
舌先を天高く。きもちも!
気の置けない同世代の友人たちと食事に行く。「いや、首の皮1枚でさ」友人が仕事でのギリギリのピンチを脱した話をしてくれる。
首の皮!!
ちょっとちょっとそれ、今まさにわたしのトピックなんだけど!! 彼女のピンチの話が一段落したところで、そう切り出してみた。首の皮がさ。いや、皮より肉よ。えー、ほうれい線よ。おでこのしわよ。白髪よ。体力よ。みんないろいろある。もりあがる。
鶏皮を注文する。わたしは塩が好きなのだ。皮の話をしながら鶏皮って。生きるって味わい深い。
今日もこの原稿を書きながら舌を回しています。初めて回した時よりもずいぶん早く回せるようになりました。まだ効果のほどは不明ですが、もしかすると滑舌が良くなるとか、他のよいことがあるかもしれません。
加齢のサインにすべて抗いたいわけじゃない。でもできればベターでいたい。ベストとは言わずともね! これからもネバーギブアップでいきたいと思います。ぐるぐると!
PROFILE
中川正子/なかがわ・まさこ
写真家
神奈川・横浜生まれ、千葉・船橋育ち。2011年に東京から岡山へ拠点を移す。自然な表情をとらえたポートレートや美しいランドスケープなどを得意とし、雑誌、広告、書籍など多ジャンルで活躍。写真集も多数出版。執筆も手がけ、エッセイ『みずのした』(くも3)を2024年に発表。
写真・文/中川正子