若い人の価値観や心理がわかる!辛酸なめ子さんが読み解く若者言葉。【前編】
時代を映し出す若者言葉は日々進化。Z世代独特の言葉遣いは、ポップなフィルターを通して痛みや現実を中和し、コミュニケーションを円滑にするツール。その言葉の裏にはSNS時代を生き抜く若者の〝知恵〟が見え隠れしていました。
どんな事象も受け入れ、肯定の気持ちを表す。
新しい言葉が次々生まれては消えていく若者の世界。追いついていけない大人世代に、旬の若者言葉をご教示くださるのは「若者の研究所」のメンバーです。バイデンハウスが運営するシンクタンク・コミュニティで、クライアント向けに若者特化のマーケティングリサーチや商品開発を行っています。話を伺う中で、今の若者は肯定的な言葉をよく使う、というのが印象的でした。
「関係性の中で矢面に立ちたくない、嫌われたくないという防御心があるんです」と、石崎健人さん。「嫌なことがあっても、とりあえず『ありがとね〜〜』『ありがてぇ』と言っておく。落ち込むんじゃなくていったん感謝します」と、大学生の渡邊藍子さん談。
【まずは、ありがとう】
何に対してもひとまず感謝する。「まずは、ありがとう。でもごめんなさい」と告白シーンで断る際の常套句がルーツ。パワハラ対策にも活用されている。
他人の失敗や悲しい出来事を慰める言葉は「おつかれぃ」。友だちの盛りすぎメイクも「ちゃおじゃね?」と優しくツッコミます。「ぇ」や「ぃ」「〜〜」にもニュアンスが込められています。三上広葉さんによると、子ども時代からネットやSNSに親しんできたZ世代は、会話しながら脳内で絵文字をつけていることも多いとか。
【おつかれぃ】
他人の失敗や悲しい出来事を慰めるときに使う。「単位落としちゃった」「おつかれぃ」など。「大丈夫?」よりも軽いトーンで事の深刻さを和らげる。
【ちゃおじゃね?】
少女漫画雑誌『ちゃお』のような目が不自然に大きい盛りすぎメイクを指す。ダサいと切り捨てず「盛りすぎてもはや漫画だね」との肯定的な意味合い。
また「イケてる」の新バージョンが「やれてる」で、「このコーデやれてる」など、ほめ言葉として使われます。大人が若者の流行に便乗して急に「やれてるね!」と言っても同世代に「は?」と思われそうなので、最新の言葉をいきなり取り入れるのは要注意。全てに感謝するマインドはぜひまねしたいところです。
【やれてる】
「めっちゃ素敵」「いいね」という肯定の言葉。イケてるとニュアンスが似ているが、こちらの方が最新バージョン。「この店やれてる」などと使う。
個性や性格はキャラ化。毒気を抜いた表現に。
懐かしさや情緒を表す「エモい」という言葉を大人世代がようやく使いこなせるようになってきたと思ったら、新しく「エモがり」という言葉が派生していました。思い出に浸りたがる人、昔話が長い人、ポエマーを表す言葉です。「片方が冷めていたら『エモがり』とツッコミを入れます」と、石崎さん。渡邊さんも「インスタで公開日記書き出す人とかも『エモがり』ですね」と、例を挙げます。若者は客観的な視点を大切にしていて、それができていない人を「冷笑」する言葉も多いとのこと。
【エモがり】
思い出に浸りたがる、自分に酔っている人のこと。「喫茶店行きたい」「エモがってんね〜」とツッコミ的に使い、相手がいない場で陰口には使わない。
様々な性格診断も流行しています。恋愛タイプをパターンに分類し、さらに4つのタイプに深掘りした「Love Character64」や、酒の席での生態やコミュニケーションについての「酒タイプ診断」など。「○○タイプ」と診断されたがる若者が多いようです。「自分が何者かわからない若者が、内面を形容する言葉や自己紹介として使います」と、石崎さん。
【○○タイプ】
若者の間で性格診断が流行中。恋愛タイプ診断や、飲み方で性格がわかる酒タイプ診断などがあり、他者理解、自己理解のツールとして会話にも定着。
「スピ女」は、意外にもリアルなスピリチュアル好きの人には使わないそうです。カジュアルに「占いにまた課金しちゃった、スピ女すぎ」と自分にツッコむ感じにも使います。
若者は、人を揶揄する言葉もマイルドに使い、「妖怪」というのも「老害」をソフトに言い換えた言葉とのこと。キャラ化して呼ぶことで攻撃性を削ぎつつ、距離を置くそうです。
余計な敵を作らず、エネルギーの消耗を防ぐ、「エネパ」な処世術が見られます。
【スピ女(おんな)】
スピリチュアル好きな人。ただし、本気度の高い人には使わないのが暗黙のルール。「また占いに課金しちゃった。スピ女すぎ」などカジュアルに使う。
【妖怪】
主に大学のOB、OGを指す。キャラ化して面倒な人との付き合いをやんわり回避。「卒業しても妖怪先輩を飲みに誘ってくれ〜」と自虐的にも使う。
お話を伺った方
PROFILE
辛酸なめ子/しんさん・なめこ
セレブ、スピリチュアル、美容、大人の生き方、社会現象など、多様な話題の事象を取材、独自の観察眼による画文が人気。『世界はハラスメントでできている 辛酸なめ子の「大人の処世術」』(光文社新書)ほか著書多数。
『クウネル』2026年7月号掲載
イラスト・文/辛酸なめ子、編集/矢沢美香
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