後藤由紀子さんが考える「ものの値段」について。「そのものが持つ価値に見合っているかどうかを考えます」

後藤由紀子さんのデュラレックス

静岡・沼津で暮らしの道具の店『hal(ハル)』を営む後藤由紀子さん。50代ならではの装い、台所の工夫、人付き合いのコツなど、暮らしにまつわるさまざまなことを紹介した著書を多数出版しています。日々の生活から生まれるアイデアや気づきは素直で等身大。多くのファンの心をつかんでいます。
そんな後藤さんの暮らしのエッセイをお届けします。


歳を重ねるごとに「物」へのこだわりが薄くなってきました。


今回はお買い物のお話を。
今年の夏、大きな買い物をふたつしました。ひとつは2階の和室のエアコン。もうひとつは冷蔵庫です。エアコンは、その部屋にずっとエアコンがなかったので欲しいなとは思っていたのですがなかなか購入に至らず……。そんなとき、一定の条件や規定を満たせば自治体から補助が出ることを知り、購入に至りました。

冷蔵庫は欲しいサイズ感と、その補助の条件が見合わず通常どおり購入することになりました。夫は当初、壊れていない冷蔵庫を買うことに難色を示していたのですが、夫婦ふたりになったためサイズを一回り小さくしたかったのと、新機種だと省エネで電気代も安くなるので、このタイミングで買い替えられたのはよかったと思っています。

買い物というと、意外に思われるかもしれませんが、私は買い物をする際、あまりこだわりません。いえ、正確には「こだわりが薄くなってきた」のかもしれません。

たとえば、以前はちょっとした台所道具(ボウルやバットなど)も雑誌で見たり、料理家の方が使っている「どこそこのもの」を使っていましたが、いまは100円ショップのものも多く使っています。100円ショップの商品の質が年々良くなってきていることもありますが、使い勝手もよく、シンプルなものも多いので既存のものともよくなじみます。

ほかにも、ホームセンターでは焼き網やフライパン、お玉やフライ返しなども買います。つくりがしっかりしていて丈夫なので毎日使うにはもってこいなのです。

ファッションも然り。手仕事のものや素材感やデザインにこだわりのあるブランドのものももちろん買いますが、ファストファッションや手ごろなブランドのものも多数、愛用しています。

後藤由紀子さんのジップロックコンテナ
柳宗理のボウルを子どもたちに譲ったため、『ジップロック(R)』の保存容器をボウル代わりに使用しています。
後藤由紀子さんのバット
100円ショップで購入したバット。調理中にお玉やトングを置いたり、下味をつけた肉や魚を冷凍する際などに使っています。
後藤由紀子さんのデュラレックス
『デュラレックス』のグラスは丈夫さが◎。シンプルなのでどんな食器とも合わせやすいです。
後藤由紀子さんの車
車は『ダイハツ』のタントに乗っています。車は代々、義父や義兄からのおさがりに乗っていたのですが、これは生まれて初めて自分で買った車。
後藤由紀子さんのニット
『無印良品』で買ったVネックのニット。気に入った形は色違いで買いがちです。
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■道具なのか、心を豊かにしてくれるものなのか。その見極めを


「安かろう悪かろう」という言葉がありますが、いまは一概にそうは言えないですね。私は買い物をする際、それが適正価格なのかを考えるようにしています。また、自分のなかで基準にしているのは、それを「道具と考える」のか、それとも「心を豊かにしてくれる」のか。そのどちらなのかということ。

すべてがこの基準に当てはまるわけではないですが、台所道具でも食器でも洋服でも、それを意識していれば買い方や使い方、付き合い方が分かってくる気がします。

プロダクトの食器はシンプルで丈夫なことが特長。一方で、作家さんの器には温かみや趣があり、物によっては経年変化も楽しめる。使うたびに気分が上がったり、幸福感に包まれたりと、金額云々だけでは語れない素晴らしさがあります。

だからこそ、お店で取り扱うものを選んだり決めたりする際も、自分自身が使ったり身に着けたりするものを買うときも、名前やメーカーに引っ張られないようにしたいと思っています。

お買い物することは大好きなので、物の値段や価値をよく見極めながら、これからも賢く楽しくお買い物を続けていきたいと思います。

後藤由紀子さんのガラス皿
辻和美さんの大皿。手仕事によるテンテンは大量生産では出せない味わい深さがあります。
後藤由紀子さんの丼鉢
ろくろの技術が高い濱田正明さんのどんぶり。スタッキングしてもきれいにおさまり収納時も美しい。独立した息子と娘もそれぞれ愛用中です。
後藤由紀子さんのワンピース
『スクランプシャス』のワンピース。オールシーズン着られそうな生地感がうれしい。
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