静岡・沼津で暮らしの道具の店「hal(ハル)」を営む後藤由紀子さん。
50代ならではの装い、台所の工夫、人付き合いのコツなど、暮らしにまつわるさまざまなことを紹介した著書を多数出版しています。
日々の生活から生まれるアイデアや気づきは素直で等身大。多くのファンの心をつかんでいます。
そんな後藤さんの暮らしのエッセイをお届けします。
いつも元気な母に。「ときにはさぼってね」のお惣菜を。
もうすぐ母の日ですね。母の日の贈り物は決まりましたか?
思えば、子どものころは幼稚園や学校での制作物のほかに、お手伝い券をあげたり、おこづかいを貯めてお花を贈ったりもしました。
学生時代はというと、母の日はそっちのけ……。結婚して義理の母ができてから、実の母にも贈り物をするようになりました。
父が盆栽好きで家のなかによくお花や植物があったので「お花はもういいよ」と母に言われてからは、服飾小物などを贈ることが多くなりました。
さて、今年は何がいいかしら……。
実は、1年ほど前から父が寝たきりになってしまいました。私たち三姉妹でサポートはしていますが、メインで介護をしている母は疲れやストレスが溜まるのでは、と少し心配しています。
なんなら私よりも元気な母ですが、頑張りすぎてしまうところがあるので、少しでも負担が軽くなればと、最近は父の様子を見がてら実家へ寄る際はお惣菜を買っていくことも多いです。
母が倒れてしまったら困るので十分に栄養を摂ってもらいたいこともありますし、できあいのものが心を軽くしてくれることがあると思うのです。
先日、4月にしては驚くほどの夏日となった日に、母に精をつけてほしくて「うなぎを買っていくね」と約束したのですが、スーパーのうなぎがあまりにも高くて手が出ず……。
なので、母の日にはうなぎを買って持って行ってあげようと思っています。
ある日、halを訪れた男子高校生が選んだのは……。
話は変わりますが、母の日というと印象的なエピソードがあります。
halはオープンして20年目になりますが、昔から通ってくださるお客さまのなかには、お子さんがずいぶんと成長された方も。
親子連れで来てくださる方も多いので「こんなに大きくなったんですね!」ということも多々あります。
ある日、高校生くらいの男の子がひとりで来店されました。常連さんの息子さんで、母の日が近いから、お母さんのプレゼントを探しに来てくれたのです。
彼は私に相談するでもなく、じっくりと商品を見てまわり、靴下とタオルハンカチを選び、言葉少なげに「ラッピングをしてください」と言ったのです。
幼稚園のころから、お母さんと一緒に幾度となくhalを訪れてくれた彼。大きくなって「お母さんの好きなお店で何かプレゼントを」というその気持ちだけで私が泣けてしまうほどでした。
考えたり選んだりする時間こそが、贈り物。
贈り物は、内容はもちろん、その気持ちこそがうれしいと常日頃、思っています。
「何がいいかな」「こんなもの喜びそうかな」。渡す相手を思い浮かべながら考えたり選んだりする時間こそが、贈り物の真骨頂な気がします。
極端な話、その中身はなんでもいいのです。
相手のことを思って贈り物を選ぶことは、贈る側にとっても嬉しいもの。
贈り物好きな私も、季節に合わせてお世話になっている方や友人にちょっとしたものを選ぶ、その時間をとても楽しみにしています。
母の日は、ぜひ、気持ちを贈ってみませんか?
お花一本でも靴下一足でもいい。きっと、とびきりの笑顔に会えると思います。
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