【松浦弥太郎さんが考える投資vol.2】発明を発見することは自分だけの宝物になります。

松浦弥太郎

50代のクウネル世代にとって、今後の資産形成は重要な課題。「投資」についても考えている方が多いと思います。そもそも投資とは?『僕が考える投資について』(祥伝社)を上梓した松浦弥太郎さんの、投資についての明快で健やかなアプローチをご紹介します。そこで見つかるのは、自分の価値を高め、豊かに生きるためのヒントです。シリーズ第2回になります。

インプットを重ねて発明発見する

ひたすら同じテーマについてインプットしていると、あるとき点と点が線になって「ああ、わかったぞ」という感覚が降りてきます。そうか、○○とはこういうことかと見えてくる。つかんだ本質が、言葉になって湧き出てくるのです。

この「わかった」は、自分だけのもの。自分なりの発見であり、発明です。ここまで辿り着いたら、まぎれもなくいい投資になっていると言えるでしょう。20代のころ、僕にはとにかく時間があり余っていました。人の役に立てる仕事も大してできない、「高校を中退してアメリカに行っていた」という若造に、声がかかることも少なかったのです。

その状態がつらくてたまらず、時間を埋めるようにしてずっと映画を観たり本を読んだりして過ごしていたのですが、その中でいくつかの「わかった」が降りてきたのです。

「映画とは、こういうエンターテインメントなんだな」「古典とはこういう存在なんだな」といった自分なりのひらめきとも言える、発明発見が浮かび、僕はその学びに大きな充実感を得られました。

いやなことを忘れるために膨大な量のインプットをしていたら、それによって自分なりに本質をつかんだ、ということなのでしょう。当時は投資をしている意識はありませんでしたが、間違いなく人生の糧になっていることは実感できました。

20代で見つけたこの「大量にインプットすると発明発見がある」という「発明」は、今も生きています。

たとえば、ひょんなことからドキュメンタリー映画を撮ることになったとき。

もちろん映画の撮影なんて経験がありませんから、依頼をいただいたときはやや不安もあったのですが、「量を浴びると発明がある」ことを僕は知っていました。

だから、まずはたくさんのドキュメンタリー映画を観ることにしたのです。ドキュメンタリー映画の名作から新作まで、数えきれないくらいの本数を手に取り、ひとつひとつじっくりと観ていきました。そうすればいつか、何かしらの発明が得られるはずだ、発見できるはずだと信じながら。

すると、何本目を観たときだったでしょうか、ある瞬間に「ドキュメンタリー映画ってこういうことか!」と「わかった」瞬間がやってきたのです。「こうすればいいんだ」と、ふっと降りてきた。ドキュメンタリー映画とはこういうもので、こういう要素が必要で、こんなふうに伝えればいいのか……。ここまで来たらもう、あとは迷いなく仕事に入ることができます。

松浦弥太郎

「わかる」ということ

伊丹十三さんも初監督映画である『お葬式』を撮ることになったときには、名作と呼ばれる日本映画をすべて観たそうです。その中で、映画をヒットさせる要素「おもしろくて役に立つ」が「わかった」のだそう。まさに発明したと言えるでしょう。

『暮しの手帖』で編集長をしていたときも、雑誌について四六時中考え、生活についてインプットを重ね、学びつづけていたからこそ、あるとき「こういうものが選ばれるのだなあ」とふと「わかった」瞬間がありました。それこそ、学びの蓄積があったからこその発明だったのでしょう。その発明に従って誌面づくりを変えた結果、部数も大きく伸びていったのです。

こうした「わかった」感覚は、あるテーマでインプットするときの僕のひとつのゴールです。

僕はいつも、あたらしいことを学ぶときには、この感覚が得られるまで、浴びるようにインプットします。この自分なりの発明発見は一生もので、自分だけの宝物になるはずです。

これは映画のようなものづくりやクリエイティブな仕事だけでなく、あらゆる仕事の学びに当てはまる感覚だと思います。目的を持ってきちんと投資すれば、どこかのタイミングでひらめきがおとずれるはずです。

徹底的に時間をかけることで、「わかる」瞬間がおとずれる。その自分だけのいわば「成果」は、きっとあなたのオリジナリティとなるはずです。

イラスト/ミヤタタカシ

              ※本記事は『僕が考える投資について』(祥伝社刊)からの抜粋です。

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