【あの人の世界が展開する本棚 】音楽家・かの香織さんが減らして選び抜いた蔵書たち

本を持ったかの香織さんの全身写真

あの人の本棚を見たい!と思う人たちの自宅やアトリエを取材しました。みなさん本が大好きで、それぞれにスタイルが確固としていて壮観!本と向き合う豊かさを噛みしめられます。

減らして減らして残る本が暮らしの糧に

かの香織さんの自宅のベンチの上の書籍コーナー
仙台の『OGATA』製の読書ベンチに本を。コルビュジエ、吉村順三、J・バワなどの建築作品集やウォーホルの画集……。

もう10年ほど、周りのものを消去法で整理しています。どうしても捨てたくない本だけを家に置くように。少なくても十分なんです」かの香織さんは引っ越しごと、本棚は実家の会社に送ったり、本も何百冊ずつ処分してきたそう。自宅に残した本は今、本棚と見立てたリビングのベンチに、大判中心に40~50冊。他にローテーブルにコンパクトサイズの読み物類をランダムに積み重ねています。

本を持ったかの香織さんの全身写真
少ない蔵書は本棚らしい本棚を設置する必然性もなく、その時の考えで移動させるというノマッドなやり方。

「主に好きな建築家、デザイナーの本、写真集です。この後の人生を楽しくシンプルに暮らしたい希望を叶えるために必要な本に絞って。神保町の古書店や、旅先の空港などで見つけた、思い出もある個人的な貴重本ばかり」

ビジュアル本に混じって詩集が数冊。

かの香織さんの書籍コレクション
祖父が庭を造る時参考にしただろう本、今はなさそうな意匠が載っていて感激」。
かの香織さんの書籍コレクション
実家の蔵で発見、珍しい庭の本も大切。大正期の出版『日本庭造図面百種』。
かの香織さんが旅先で見つけた書籍コレクション
アジアなど旅先で求めた本が重なる上には長田弘ほかの詩集が。「詩集は想像を広げるスペースがあるので好き
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詩の本、引き継いだ家業に繋がる日本酒の本もありますが、ビジュアル本が大半。実はそれには理由があって。

「本は大好きなのですがもともと私、難読症で文字いっぱいの本は読みづらくあまり手に取らなくて。文章で情報を取り入れたい本はKindleの読み上げ機能やオーディオブックを活用することが多いんです。上手に使えば、年齢を重ねた人の役に立つやさしいツールだと思います」

無造作に重ねる実用的な本も厳選

重ねて飾っているかの香織さんの書籍
自然療法、色彩、日本酒に関する本。「私にとっては新しい語彙の宝庫」という日本酒造りの専門書『最新酒造講本』も。

必要な本を選ぶ決断を冴えさせ、足りる量の蔵書で暮らす。かのさんスタイルは特別なようで、現代ブックライフへの賢い提案の一つと言えそうです。

『クウネル』2023年1月号掲載

写真/玉井俊行、取材・文 /原 千香子

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