静岡・沼津で暮らしの道具の店「hal(ハル)」を営む後藤由紀子さん。50代ならではの装い、台所の工夫、人付き合いのコツなど、暮らしにまつわるさまざまなことを紹介した著書を多数出版しています。日々の生活から生まれるアイデアや気づきは素直で等身大。多くのファンの心をつかんでいます。そんな後藤さんの暮らしのエッセイをお届けします。
夫との出会いは地元のカフェ。
ふと目に留まったのは……。
今回は、夫婦の話について。
まずは、お恥ずかしながら夫との出会いについてお話ししたいと思います。
静岡県の沼津市で生まれ育ち、18のときに念願の東京へ行きました。
仕事も遊びも楽しく、友達にも街にも恵まれ、日々充実して存分に謳歌していましたが、24歳のときに沼津にUターン。
きっかけは、失恋したこと……。
しばらくやさぐれていた期間もありましたが、ある日、お手伝いをしていたカフェに初めて見る男性が現れてカウンターに着席。
ふと目をやると、セーターのひじの部分が薄くなって、その下のTシャツが透けて見えていることに気が付いたのです。
まさに理想の男性!?
失恋にも理由があったのかもしれません。
東京時代、気の合う友人とよく、こんなことを話していました。
「今年はマリンが流行るというとみんながボーダー。赤いパンツというと揃いも揃って赤いパンツを履いているけれど、ファッションがくるくる変わる男子より、気に入ったシャツの襟がほつれるくらい着続けるような人がいいよね」と。
!!!まさに目の前に、ひじ部分が薄くなるほど愛用しているであろうセーターを着た男性が現れたのです。
すぐさま裏にいってオーナーに「あのカウンターの人、何をしている人?」と聞くと「庭師」との返事。
盆栽が趣味の父が喜びそう。そんなことが頭をよぎりました。
その後、私から猛烈アタックをして付き合ってもらえることになりましたが、彼はちょうどブラジルのプロジェクトに関わっていて、たまたま3か月限定の帰国中だったのです。
ブラジルに戻ってから、しばらくは時差12時間の遠距離恋愛でした。
結婚、子育てを経て、
あっという間に25年が過ぎました。
その後、結婚して子どもが生まれ、子育てに仕事に家事にと慌ただしくも楽しい日々。
ささいなケンカはもちろんありましたが、お互いに思いやりをもって協力してきました。
そして去年の6月、息子に続いて娘が独立して家を出たことで、夫婦ふたり暮らしに戻りました。
25年も一緒にいると、夫の性質や対処法もよく分かるものです。
たとえば、うちの夫婦の場合。
夫は空腹になると機嫌が悪くなるため、車で大渋滞に巻き込まれたときに飴などをサッと差し出せるように用意しておくことは欠かせません。
また、外食する際は、行列ができて長時間待つようなお店には行かないようにしています。
ちょっとしたことですが、夫の腹の虫が鳴らないように私なりに工夫しているのです。
また、夫は庭師で職人気質なので、なるべく夫を立てるようにも心がけています。
家事をやってもらったら「ありがとう」を多めに言うようにすると、夫も気分がよくなり、いろいろ手伝ってくれるから。
「夫婦平等」の世の中、夫婦で協力して育児も家事もやるのは当たり前ですが、やっぱり、男の人はおだてて立ててあげると家庭内はうまく回る気がします。
毎日、一緒に暮らしていれば思うこともたくさんありますが、それは「お互いさま」。そのことも忘れないようにしています。
穏やかに健やかに。
これからもともに歳を経ていけたら。
夫婦の形は十人十色。
素敵だなと思うご夫婦はたくさんいるけれど、とくに理想や〇〇風というのはなく、私たちオリジナルな感じです。
アウトドアが好きな夫と、インドアな私。
お互いの趣味や楽しみを尊重しつつ、休みを合わせて美術館や温泉に行くのが最近の楽しみです。
たわいもないけんかも多々ありますが、これからも、日々の暮らしを心地よく過ごして、おいしいものを一緒に食べたり、なんてことないおしゃべりをしたり、テレビや映画を観て笑ったり泣いたり。
月並みですが、健康第一をテーマに今後も穏やかに健やかに暮らせたらと思っています。
後藤由紀子/ごとうゆきこ
静岡・沼津で器と雑貨の店「hal」を営む。飾らない人柄が感じられるエッセイや、着こなしも人気。近著に『毎日のこと、こう考えればだいじょうぶ。』(PHP研究所)。ママ向けオンラインコミュニティ「ママカレ」(小田急電鉄)で講師を務めるほか、YouTube「後藤由紀子と申します。」も好評。
http://hal2003.net
Instagram「@gotoyukikodesu」「@halnumazu」
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