自宅こそひらめきの場所。インテリアスタイリストが実践する“素敵な家”の作り方【後編】

作品が生み出されるクリエーターの住まいとは?美術館、店舗、個人宅などの空間演出やインテリアスタイリングを手がけている黒田美津子さんのご自宅を訪問しました。

PROFILE

黒田美津子/くろだみつこ

『Hanako』などの編集記者を経て、インテリアスタイリストに。雑誌、広告のほか、商業施設、ホテル、住宅、展示会などのインテリアディレクションや空間演出を手がける。

暮らしのすべてが仕事の糧に

北欧のカイ・フランクの色ガラスをはじめ、旅先で買ってきたものを飾って。「ブータン、南アフリカ、ジンバブエ、チェコなど、母と世界中を旅した思い出が蘇ります」

玄関では父のイギリス時代の写真や小物、花などが迎えてくれる。玄関と廊下の上部に棚をつけ、文学全集などの本は空間を活かした収納に。照明は北欧のルイス・ポールセン。

インテリアスタイリストとして活躍する黒田美津子さんの住まいは、建物を覆う蔦の葉っぱが印象的な一軒家。

部屋の中で目を引くのは、棚いっぱいに並んだ素敵な小物たち。アンティークのガラスや作家ものの器、古道具などがセンスよく飾られていますが、一つひとつに思い入れが。休日もゆったりとこの棚を眺めながら過ごしているそう。

「ずっと仕事ばかりしているせいか、自分のものを買うときも、ただ好みだけで選ぶわけではなくて、頭の片隅に『仕事で使えるかしら』という意識がつねにあって。棚には、そういう視点で集めたスタイリングのヒントになりそうなもの、旅行好きだった母と旅したときに買ったもの、そして祖父母から受け継いだもの、という3種類が入り混じって置いてあるんです」

「椅子は祖父が上海から運んで愛用していたものをリメイク」。ドイツのトーネット社のテーブルもお気に入り。

自宅は発想を得るためにも大切な場所

この中の私物を撮影に使うこともあり、組み合わせを試したりして、スタイリングの構想を練っているそう。

「頭の中で考えるよりも、実物を見て触れたほうがイメージが湧くんです。たとえばティーカップの色がヒントになって、“あの部屋にはこういう色をアクセントに取り入れるといいかも”といった発想が生まれることも多いんですよ。家族との思い出も一緒に飾っているので、こういうものに囲まれていると心の支えにもなってくれるようで、とても安心するんです」

「ここで食事をしたり、パソコンでニュースを見たり。アルヴァ・アアルトの半円形テーブルは、この家にぴったりなコンパクトさ」

「母から譲り受けた火鉢をアップサイクルしてガラスケースに。昔から家にあった古い裁縫道具や小物、器などを飾っています」

キッチンに置かれた器や照明もさりげなくおしゃれ。壁のカラフルなイラストの棚は、中目黒の古物店で見つけて取り付けたもの。

気持ちが落ち着くと、いいアイデアも浮かんでくると言います。

「オフィスではパソコン作業に追われて、ゆっくりスタイリングのプランを考える余裕がないし、アイデアって、そのことを集中して考えているときはなかなか浮かばないもの。お風呂に入ったり、好きな写真集を眺めたり、家でリラックスしながら関係ないことをしているときに、ふっとひらめいたりするんですよ。本当はオンとオフをわけたほうが健康にもいいのかもしれませんが、私生活とシームレスにつながっているのがスタイリングの仕事。そういう意味でも自宅は発想を得るための大事な場です」

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『クウネル』9月号掲載 写真/玉井俊行、取材・文/矢沢美香

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『クウネル』No.122掲載

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