元祖「モテ女」ミステリアスな和泉式部が伝説を残した地へ【酒井順子さん女人京都Vol.1】

和泉式部 ― 法輪寺 アイキャッチ

『女人京都』を読み女人ゆかりの地を行くと都の陰影も見えてくる。『女人京都』の著者であるエッセイスト・酒井順子さんに、歴史上の4人の女人にまつわる地を案内いただきました。

教えてくれた人

酒井順子/さかい・じゅんこ

エッセイスト

東京生まれ。平安女性文学を通じて京都好きとなり、大学の講座を受けに長期滞在したことも。『都と京』ほか京都関連著作も多い。最新刊『ひのえうまに生まれて』。

「京都には女性の文化が豊かに刻まれてきました。文学の才を存分に発揮したり、政治的な役割を担ったり、傑出した女性たちの息吹が今も確かに残るよう」という酒井順子さんが綴った『女人京都』は、歴史の中の女人たちの足跡を訪ね歩く、人物と都の探検ガイドです。

「女人の生きざまが感じられる地では自分との共通点が見いだせることも。ただ有名観光地に行くだけよりも京都への親しみが一段と深まり、歴史との繋がりが感じられるのでは」

ご本人再訪による案内を4人の女人の関連の地で決行。そして本に倣い近辺の散策をより充実させる、現代女人の気分に合う立ち寄り甘味や軽食どころも、本に一部加えて提案。

『女人京都』

『女人京都』酒井順子

歴史上の女人足跡を訪ね想像巡らす、雑誌連載をまとめた京都案内エッセイ。史跡巡りの合間になごみの栄養補給も。小学館文庫

和泉式部ーー法輪寺

和泉式部

和泉式部

平安中期を代表する歌人。受領・大江雅致の娘。和泉守・橘道貞と結婚するも天皇の皇子である為尊親王、敦道親王などと恋愛関係にあったと言われていて、恋の模様は『和泉式部日記』にも記されている。

嵐山の寺の静けさに包まれ、謎めいた女人の波乱万丈を想う。

「和泉式部は華麗なる恋愛遍歴を持つ『モテ女』。そのドラマティックな人生と華やかな文才に、うっとりさせられます。和泉式部の物語を女性芸能者などが全国に広めたことで、伝説を残す地も多くてミステリアス。想像をかきたてられますよね」

式部が活躍した京都には、自ら興したとされる寺や、昔、塚があったという和泉式部町など、まつわる場所が何か所も。その中『女人京都』で酒井さんが選んで訪れていたのは、嵐山の法輪寺です。

和泉式部 ― 法輪寺 アイキャッチ

「渡月橋を渡るだけで空気が変わる」と酒井さん、寺の山門を入ったところで初夏の青もみじの鮮やかさにも見とれる。境内は雨でしっとり、ひっそり。ここから石段を上がっていく。

「ここに住んだとされる僧の道命と和泉式部は深い仲だと『宇治拾遺物語』にあります。道命は読経の名手だったそう」酒井さんは今回も渡月橋を渡り「別天地のように静かな」境内を一巡。ご住職から興味深いお話をたくさん伺うこともでき、また新たなワクワクも。

和泉式部 ― 法輪寺

元々は渡月橋までが境内で寺は大堰川水運の往来も見守っていた。舞台からは京都が一望に。

「女帝の命で開かれた寺。女人禁制の地の多い時代に女性を保護する立ち位置であったようです。赤染衛門の参詣は確かとされますが、和泉式部も参られたと考えることはできますね」(藤本住職)

和泉式部 ― 法輪寺

本堂で手を合わせる。本尊は虚空蔵(こくうぞう)菩薩。智恵、福徳、技芸上達、声がよくなる4つのご利益が。

この地でもしや?……と妄想をふくらますのは『女人京都』旅の醍醐味です。そして「法輪寺の記述もある『今昔物語』もまた読みたくなった」と酒井さん。

和泉式部 ― 法輪寺

真言の宇宙観を示す多宝塔。寺の建物は蛤御門の変で焼け明治以降に再興。

法輪寺

元明天皇の勅願で713年行基菩薩が創建。『枕草子』にも紹介されている。十三まいりの寺としても信仰を集める。

: 京都市西京区嵐山虚空蔵山町16
境内自由参拝拝観 : 9:0017:00
https://www.kokuzohourinji.com/

\ほかに立ち寄るなら/

寺で心身リセットした後は……、渡月橋を戻り和菓子店『鶴屋 寿』で桜餅を求めるなり、地元住民に愛される京ずし『嵐山 大善』で軽く小鯛の笹寿司や稲荷寿司をつまむなりで、ほっとする嵐山の立ち寄りを味わいたいものです。

鶴屋 寿

住 : 京都市右京区嵯峨天龍寺車道町30
http://www.sakuramochi.jp/
大島桜に包まれ、白い色が特徴の嵐山さ久ら餅を通年で販売して人気。

嵐山 大善

住 : 京都市右京区嵯峨伊勢ノ上町10-3
https://www.arashiyama-daizen.com/
季節の素材で京ずしを提供。テイクアウトにも便利、一品料理も豊富。

MAP

歴史上の女人 MAP

『クウネル』2026年9月号掲載
写真/大段万智子、イラスト/友野可奈子、取材・文/原千香子

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『クウネル』NO.140掲載

旅を深める本76冊と歩く、京都。

  • 発売日 : 2026年7月17日
  • 価格 : 1,080円 (税込)

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