元Hanako、Hanakoママ編集長の片岡延江さん。25年間勤めた会社を退職し、築古家屋を購入しDIY再生中。知識や経験不足もあり、問題は次から次に勃発……。現場工事は着々と進み、念願のDIYで片岡さんも作業に積極参加。いよいよ「空き家再生プロジェクト」第一弾が完了!大家日記シリーズ一号物件編のファイナルです。
元Hanako編集長の大家日記 一号物件編
vol1:会社辞めて家買って、DIYリノベの大家さんをしています。
vol2:荒れ果てた部屋や庭木をみて唖然、残置物の処分で苦戦しました。
vol3:人気物件だと思っていたのに!?入札してから明るみに出てきた真実。
vol4:持主とやっと連絡が取れた。実は「成年後見人制度」が関わる物件ということが明らかに!
vol.5:50代「何かを始めたい」と大ジャンプして人生更新中。
vol.6:良心的な職人さんと出会い、いよいよ築古家屋の再生スタート!
vol.7:築古家屋再生プロジェクト、いよいよメンバーそろい踏み。
vol.8:「家づくりって、楽しいけど苦しいです」
ボロボロだった物件も内装工事が進んでいます。今回は建築士の須藤さんにお願いしましたが、出来上がっていくうちに、明らかに一般のリフォームとは違う、デザインされている物件になっていくことに「さすがだな」と思いました。
1階の床はフローリングに、徳島の建材メーカーから無垢のアカシアを取り寄せました。壁と天井は合板仕上げにして木目を生かします。システムキッチンやトイレ、照明や玄関のインターフォンなどは、 須藤さんが指定するものを直販サイトや「アマゾン」、「Yahoo!」から購入しました。鏡や水回りの備品はイケアです。
当初の予算額は少しオーバーしましたが、水回りを一新したことを考えると大満足な内容で、私の目指す「シンプルだけど温かみのある、使い勝手のいい家」になってきました。後から知ったことですが、建築家の須藤さんはグッドデザイン賞も取っている方で、今回のリノベは普段なら受けない予算感の仕事でしたが、私が空家再生に奮闘していることに共感し「面白そう」と受けていただいたようです、ご一緒できたのはラッキーでした。
時間コストはかかるが
やっぱり楽しいDIY
大きな修復は業者の方に任せましたが、費用を抑えるために、経年劣化で古ぼけていた柱や階段など自分で補修してみようと思いました。大工さんが「きれいに貼ったぞ」と胸を張って言っていた天井と壁の合板も、自分で塗装することにしました。
木の塗装といえば「ニス」が思い浮かびますが、須藤さんのおすすめは「ワトコオイル」です。英国の生まれの植物油ベースのオイルで、木目と質感を生かしながら好みの色みに変化させることができます。
いよいよ、私のDIYの出番です。須藤さんに選んでもらった色の一斗缶をネットで購入し、やる気満々でしたが……。初心者が陥るという養生の大変さにはめげました。養生とは、汚したくない部分を覆うことですが、床の端々や窓などにテープを貼ったり、マスカーで覆ったりで、あっという間に時間が過ぎます。
自宅から高速を飛ばせば車で50分のリノベ物件ですが、高速代とガソリン代で往復6千円。電車で行けばその3分の1で済みますが2時間はかかるという現実。
時間コストも考えると、割に合わないDIY作業に「おいおい」と思ったりしましたが、やれば確実にきれいになり、思い描いてたものがカタチとなっていくことに、結局は時間も忘れて熱中しました。
ハウツーの情報は今やネットでいくらでも調べることができるので便利です。とはいえ、調べきれない微細なこともあるので、私は職人さんに携帯の「メッセージ」を使って教えてもらっています。そのたびに「そうすればいいのか!」と膝を叩いて感激し、またDIYの沼にハマっています。
錆で枠が朽ちて傾きかけている物置があり、処分するか迷いましたが、結局再生しました。あれば入居者にとっても便利なはず、それで家賃が上がるわけでもないのですが、「もったいない根性」が勝ちました。ホームセンターで鉄のアングルを切断し、崩れそうな部分に打ち付けて、塗装をしたらだいぶ立派になりました。そんなこんなをやっていると完成がどんどん先になります。
週末は家族に手伝ってもらったり、平日は始発で出かけたりしながら、すべてが完成したのは足場を組んでから5か月経った晩秋でした。紅葉し始めて、近くの木からどんぐりが落ちてきてそんな季節でしたが、うれしくて毎日でも物件を眺めていたいと思いました。
空き家再生コンプリートしたら
「女神」と呼ばれて
のちに、町会のおじさんたちが完成した物件を見て、私のことを「女神さま」って呼んでたよと、工務店の社長さんから聞きました。「伸びた木は電線に引っ掛かりそうだし、防犯や景観の面からも、空家を何とかしてほしいと散歩するたびに思っていた」とのこと。
どうなることか思った空家再生でしたが、終わってみれば「なんだか楽しかった」「またやってみたい」と思っている自分がいました。そして、実際に、懲りずにこの地に物件を増やし、また板金屋の伊藤さんにもお世話になるのですが。
ちなみに、このリノベ物件は現在貸し出し中で、不動産屋さん情報によると「入居者さんは家具や植物を素敵にレイアウトして、すっごくおしゃれに暮らしている」とのことです。よかった、よかった。
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◎【女ひとりで家を建てる①前編】自分のために7軒もの家を建てた女性の家づくりの記録。
◎ 【女ひとりで家を建てる①後編】海のそばに住む夢を実現すべく家を建てたものの……。
◎ 【女ひとりで家を建てる②・前編】自分の家を7軒も建てるまで色々ありました。
◎【女ひとりで家を建てる②後編】3軒目の家を建てたとき、家づくりの会社が始動。
◎【女ひとりで家を建てる③前編】人生バブル期、4軒目に建てた家は箱根の別荘。
◎【女ひとりで家を建てる③後編】事件勃発。人生のバブル期はまさかの転換期でもあり……。別荘を建て、手放すまで。
◎【女ひとりで家を建てる④前編】5軒目の家は鎌倉山の洋館。そこをカフェにする計画が……。
◎【女ひとりで家を建てる④後編】中古住宅を買って、自分好みにリノベーションする楽しみ
◎【女ひとりで家を建てる⑤前編】自分のために建てた家は何と7軒!これが終の棲家か?!ついに完成した理想の平屋。