家は3度建てないとわからないと言われますが、これまで自分のために建てた家は7軒。そんなパワフルな女性〈クウネル・サロン〉プレミアムメンバーの井手しのぶさん。井手さんの家づくり顛末を6回にわたりお届けする連載第5回目・前編です。今度はついに完成した7軒目の鎌倉材木座の平屋の話。井出さんのプロとしての経験をとことん凝縮した、素敵なお家を見せていただきました。
7軒目・鎌倉材木座の家
緑に囲まれた芝生の庭の奥にちょこんと建つ小さな平屋。井手さんが終の住処として自ら設計した家がとうとう完成した。モルタル仕上げのシンプルな外壁に、大きな窓と回転式の青いドア。
「デザイン的に雨どいは好きではないから」と、 雨水が自然に流れるギリギリの傾斜をつけた片流れの屋根。コンパクトな中に美しさへのこだわりと、プロとしての経験をとことん凝縮した家だ。
譲れなかったのは平屋にすること。生活を共にするのは愛犬のジャックと昌夫、気ままな愛猫ブチャと虎一。老境のジャックに階段は負担になるし、1人と4匹の家族構成でそもそも二階建ての必要性はない。
「イメージしたのは地面から生えてきたような家です。極力自然のままを残し、 家自体が主張しすぎずに周囲と調和できるような。私の理想はル・コルビュジエが両親のために建てて、お母さんが百歳まで暮らしたスイス・レマン湖畔の家。 シンプルでコンパクトだけど、とても豊かで美しい。ずっと憧れでした。以前、千葉のいすみ市にそんな理想がかなえられそうな水辺の土地を見つけたのですが、考えた末に手放しました。だれひとり知 り合いがいないなんて無理(笑)。昨年この土地に出合った時は、理想の平屋がかなうと直感しました。湖はありませんが」
井手しのぶ/いで・しのぶ
神奈川県・湘南エリアを中心にナチュラルな家づくりをする 「パパスホーム 」代表として長年活躍。 2013年に代表を退き、現在は「Atelier23.」を主宰。
シリーズ 女ひとりで家を建てる
①前編:自分のために7軒もの家を建てた女性の家づくりの記録。
①後編:海のそばに住む夢を実現すべく家を建てたものの……。
②前編:自分の家を7軒も建てるまで色々ありました。
②後編:3軒目の家を建てたとき、家づくりの会社が始動。
③前編:人生バブル期、4軒目に建てた家は箱根の別荘。
③後編:事件勃発。人生のバブル期はまさかの転換期でもあり……。別荘を建て、手放すまで
④前編:5軒目の家は鎌倉山の洋館。そこをカフェにする計画が……。
④後編:中古住宅を買って、自分好みにリノベーションする楽しみ
『ku:nel』2016年11月月号掲載
写真 柳原久子/取材・文・構成 佐々木信子(tampopo組)