【女ひとりで家を建てる④前編】5軒目の家は鎌倉山の洋館。そこをカフェにする計画が……。

井手しのぶさん 家を建てる

家は3度建てないとわからないと言われますが、これまで自分のために建てた家は7軒。そんなパワフルな女性〈クウネル・サロン〉プレミアムメンバーの井手しのぶさん。井手さんの家づくり顛末を6回にわたりお届けする連載第4回目・前編です。今度は5軒目の鎌倉山の家の話。アクティブな井手さん、そこでカフェを始めるのですが……。

2004年、鎌倉山に古家付きの土地を買った。通称、鎌倉山ロータリーの目と鼻の先。春には桜の名所となり、周辺には名店が点在する人気のエリアだ。
「カフェをやってみたかったんです。町なかではなく緑あふれる中で、テラスでもお茶ができるような。見つけたのは35坪ほどの土地に築40年の木造2階屋が建つ物件。モルタルの壁に木製の上げ下げ窓が可愛い洋館でイメージにぴったり。静かな環境も気に入りました」

予定通りカフェに変身させるべくリノベーション。いったんスケルトン状態にして、床にはテラコッタを張り、壁は白くペイント。小さな前庭はウッドデッキにして犬連れも利用できるテラス席を設けた。2階は壁や天井を取り払って露出した柱や梁を白く塗り、床は古材のフローリング。一部を吹き抜けにしてアイアンの螺旋階段で階下とつなぎ、建材や海外で買い付けてきた家具・雑貨を展示するパパスホームのギャラリー風スペースに。小屋裏の木組みを大胆に生かした、まさに近ごろ人気の古家リノベーションの先取りと言えそう。

井手しのぶさん 家を建てる
壁も天井も取り払い、小屋裏の木組みを露出させて白くペイント。リビングの奥にはアフガニスタンの大きなアンティーク装飾柱を取り付けて布を垂ら し、その奥をバスルームに。

「ただ昔の家なので今みたいに断熱がちゃんとされていないし、おまけに天井を抜いたから、夏は直射でとにかく暑い。スレート屋根に断熱塗料を塗ってしのぎました。気のせいかもしれませんが、少しはマシになったような」

念願のカフェオープンしたものの……

こうして無事にカフェ&デリ「ボーノ」がスタート。1、2年頑張ったものの、経営はまったくの赤字。現実はそうそう甘くない。引き時も肝心と、結局カフェは断念することに。とはいえせっかく力を入れたリノベがもったいない。1階を事務所に使ってみたりと試行錯誤の期間を経て、最終的には自らの住まいを移すことに決めた。当時暮らしていたのは鵠沼にあるオフィス併設の家。すでに箱根の別荘も手放していたし、住まいを独立させて、鵠沼の仕事場と少し距離をおけるのも魅力だった。

「念願のカフェは失敗だったけど、空間自体は思うように手を入れて、自分好みに仕上がっていたから、すぐ売ろうという気にはなれませんでした。場所が静かで、緑豊かなのも気に入っていたし。もうひとつ、息子と離れたかったのもあるかな。鵠沼では息子と2人だったから、見ているとどうしても身のまわりのあれやこれやに手を出したくなる。20歳で独立させたいと思っていたので、いったんここで暮らしを分けることにしました。
その後、鵠沼の家を人に貸すことになり、彼はアパート暮らしに。ちゃんと予定どおりに独立できました」

カフェから自宅へ再びリノベーション

鎌倉山の古家はカフェから自宅へと変更するにあたり、またまたリノベーション。庭のデッキは板塀を立てて道路から目隠し。カフェの名残のテラコッタ床はモルタルに。2階のフローリングは一部を剥がして防水加工を施し、モルタルを塗ってバスルームにした。ドアは嫌いだからもちろん扉なしでオープンに。中には脚付きのバスタブを置き、入り口にはパリで見つけたアフガニスタンの大きなアンティークピラー(装飾柱)を門構えのように設置する大胆さ。そこにバリ島で購入したイカット生地を掛けて目隠し にした。まるでそこだけモロッコかバリのような異世界。

「もともとひとつ所に留まれない性質だから、インテリアの好みもよく変わるんです。白基調のナチュラルテイストが好きだった時期もあれば、マゼンタピンクをテーマカラーに空間づくりをしていた時もある。この当時はモロッコ風のエキゾチックテイストにはまっていました。キッチンのタイルをパープルにしたりね。ちょうど仕事で内装材やインテリア商材を探しにあちこち海外を旅行していた時期で、行く先々の街から刺激を受けたんです。この家も3、4回はリノベを繰り返しました。仕事が忙しかったので、自分の家の模様替えが一種のストレス解消になったんですね」

→【女ひとりで家を建てる④後編】に続く

■■これまでの記事 ■■
【女ひとりで家を建てる①前編】自分のために7軒もの家を建てた女性の家づくりの記録。
◎ 【女ひとりで家を建てる①後編】海のそばに住む夢を実現すべく家を建てたものの……。
◎ 【女ひとりで家を建てる②・前編】自分の家を7軒も建てるまで色々ありました。
【女ひとりで家を建てる②後編】3軒目の家を建てたとき、家づくりの会社が始動。
【女ひとりで家を建てる③前編】人生バブル期、4軒目に建てた家は箱根の別荘。
【女ひとりで家を建てる③後編】事件勃発。人生のバブル期はまさかの転換期でもあり……。別荘を建て、手放すまで

『ku:nel』2016年9月号掲載

取材・文・構成…佐々木信子(tampopo組)

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