【脚本家・中園ミホさんが恋した4冊】「この本に出会っていなかったら、脚本家にはなっていなかった」

中園ミホ 脚本家 花子とアン

本を開いたら最後、やめられない、 止まらない。ご飯を食べるのも、眠るのも忘れて本の世界に入り込んでしまうという脚本家の中園ミホさん。何度も読み返すほど夢中になった本や、初めて大人の恋愛に触れたという本まで、中園ミホさんを作った4冊をご紹介します。

カンナとメイコ やなせたかし

『カンナとメイコ』

神津カンナ

「中村メイコさんと神津カンナさん親子の日常を切り取った詩集。絵本も童話もたくさん読んでいましたが、この本は詩も絵も大好き。夏休みはこの本のことばかり考えていました。まるで恋愛しているみたいに。今でもここに出てくる詩は全部覚えています。カンナさんを真似て自分で詩を書いてみたり、脚本家になってからもこの詩集をセリフのヒントにしたり。私がものを書き始めたきっかけでもあり、 今も影響を受けている一冊です」 ( 中園ミホさん )


『詩集 愛する歌 第二集』

やなせたかし

「『人間なんてさびしいね』 は小学4年生の当時、父を亡くしたことと重なって心に残っています。卵の中から人が生まれてくる絵とかも大好き。ファンレターを出したらお返事をくださって、やなせさんとは思春期まで文通をしていました」 ( 中園ミホさん )


夜中の薔薇

『夜中の薔薇』

向田邦子

「気に入った手袋が見つからないから、 やせ我慢して手袋なしで冬を過ごすというお話なんですが、会社の上司に〝女がものにこだわっていると幸せになれないよ〟みたいなことをいわれるんです。でも向田さんは、自分はやっぱり手袋を探していこう、と決断するん です。その妥協しない腹の据わった覚悟がカッコよくて。こだわりをねじ曲げることなく、私は私の思う道を進めばいいんだ、と勇気をもらいました」 ( 中園ミホさん )

「今も妥協しそうになるたびに『手袋をさがす』をめくります。ここだけ色が変わっていて、付箋だらけ。 一言一言が心に刺さって打ちのめされるし、励ましてくれるし、背中を押してくれる。私にとっては、思い入れのある特別な一冊です。もし、この本に出合っていなかった ら、きっとまわりの大人たちの言うまま結婚して脚本家にもならず、違う人生を送っていたかもしれません。向田さんが亡くなった年齢をとうに越してしまいましたが、いまだに雲の上の人。手の届かない憧れの人です」 ( 中園ミホさん )


ペイネ 愛の本

『ペイネ 愛の本』

レイモン・ペイネ

みすず書房

「熱を出して学校を休みがちだった10歳くらいの頃、 母が枕元に置いていってくれた一冊。あるカップルの愛のかたちを描いたロマンティックなフランスの漫画で、ベッドサイドのシーンもあって、大人の恋愛に憧れて夢中になりました」 ( 中園ミホさん )


『ku:nel』2022年1月号掲載

写真 玉井俊行/ 取材・文 矢沢美香/編集 河田実紀 Hata-Raku/ 再編集 久保田千晴

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