使いやすいキッチンを追求したら「出しっぱなし」に行き着きました。ブランディング・ディレクター福田春美さん。

ふくださん キッチン

「自分にとって使いやすいキッチンって?」。誰しもがキッチン収納について悩んだことがあるかもしれません。必要なものが必要なところに配置されたキッチン。「より使いやすい」「動きやすい」を求めていたら、置きっぱなし、吊りっぱなしのオープンなキッチンになりました。長年の積み重ねで落ち着いたベストなスタイルをブランディングディレクター福田春美さんに伺いました。

長年の積み重ねで落ち着いた私のベスト

吊り下げられたざる、並ぶかごや壺、積み重なる皿、瓶に挿されたしゃもじや箸……。明るいキッチンに道具がずらっと並ぶ様は圧巻。それはさながら、キッチンツールのギャラリーのよう。おいしいものが生まれる気配に満ちた楽しいキッチンです。「この家は収納があまりなかったし、元来収納は苦手。だったら、道具は全部を表に並べてしまえ!とした結果が、出しっぱなし、掛けっぱなしのこの配置なんです」

ふくださん キッチン

並べるときに気を付けたのは、どれだけ自分が動かずに作業できる動線がつくれるか。たとえば、シンクの上に吊り下げられている道具類。左の方には、たわしや野菜ブラシなどの洗浄ツール、中央にはふきん、右にはシンクの周りの汚れを流すための、アルミのマッコリカップ、一番右にはふきんかけといった具合に、この場で使うものを順に配列しています。この「適材適所配置」は、キッチンのすべてで考えられていて、料理中も後片付けも動線はすごくスムーズ。

作業の動きが滞ったり、物の出し入れがしづらかったり、日々の暮らしのなかで感じる滞りはどこの家にもあるもの。それをそのままにしておかないのが福田さん。「小さなストレスがすごく嫌なんです。解決策はないかな?と、暮らしながらなんとなく考え、工夫します」マイナーチェンジを繰り返し、いまは最高に近いフォーメーションなのだと胸をはります。道具も器もすべてが丸見えの大らかで自由なキッチン。すべてが好きで迎え入れた道具だから、隠さず表でスタンバイOK。その道具たちが、福田さんが「好きな景色」をつくり出しているのです。

『ku:nel』2021年5月号掲載

写真 柳原久子 / 取材・文 鈴木麻子

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