謎解きだけに終わらない、読み応えのあるミステリー! 山脇りこさんが選ぶ3冊【私の読書時間】

私の読書時間 山脇りこさん

著名人の方にクウネル世代におすすめの本を教えてもらう「私の読書時間」。今回は、料理家でエッセイストの山脇りこさんにお話を聞きました。

PROFILE

山脇りこ/やまわき・りこ

料理家・エッセイスト

長崎市の日本旅館に生まれ、四季の料理に触れながら育つ。新刊『生きていく、軽やかごはん 道具ひとつでずっと好きな味』(集英社)には、道具ひとつで作れる52の軽やかレシピに加え、人生後半を生きる大人たちに寄り添うエッセイを収録。撮影協力/矢口書店

謎解きだけでは終わらない 、学びのあるミステリー 。

気のきいたレシピばかりでなく、『50歳からのごきげんひとり旅』など飾らない言葉で綴ったエッセイが多くの人の支持を得ている山脇りこさん。

「唯一の趣味が読書」で、寝る前はもちろん、朝目覚めるとそのままベッドで本を手に取るのだとか。常時2、3冊を並行して読み、ベッドサイドに、キッチンに、そしてバッグに、必ず本があるそうです。

そんな無類の本好きが選んでくれたのは、「謎解きというなかれ」をテーマにした3冊。

「誰が犯人か、真相はいかにという謎解きで最後まで引っ張るだけでなく、同時に江戸文化や異国の歴史、フェミニズムといったテーマをはらみ、考えさせられる作品を選びました」

木挽町のあだ討ち 長井紗耶子

『木挽町のあだ討ち』
永井紗耶子

「時代小説が好きです。しびれるセリフや気になった箇所はページを折り返しておいて、何度も読み返します」。この作品にもたくさんの折り返しが。直木賞、山本周五郎賞ダブル受賞作品。新潮文庫

1冊目の『木挽町のあだ討ち』は最近映画にもなった話題作。木挽町の芝居小屋の裏で、見事仇討ちを果たした美談の真相を探るべく、一人の武士が事件の目撃者を訪ね歩きます。

「読み出したら止まらず、一晩で読んでしまいました。読後、映像化はむずかしいと思ったぐらい、小説ならではの醍醐味のある1冊。元幇間(もとほうかん)、立師(たてし)など各章の語り手一人ひとりに人生があり、芝居町を愛する心があって。義に生きる支配階級の武士と、芝居小屋という悪所に集う町人の対比も鮮やかです」

流 東山彰良

『流』
東山彰良

国共内戦の結果、中国大陸から台湾へ移ってきた人々の暮らしや思いなど随所に国の歴史がにじむ。「日本人にやさしい国、台湾のことをもっと知りたいと勉強し始めた頃出合った作品」。講談社文庫

2冊目の『』は70年代から80年代の台湾を舞台にした物語。主人公の祖父の殺人事件を軸に、その犯人を突き止めるまでが、彼のやんちゃでエネルギッシュな青春とともに描かれます。

「台湾は複雑な歴史を持つ国で、日本の敗戦で50年に及ぶ日本統治が終わり、その後蔣介石率いる国民党政府が中国本土から敗走してきます。彼ら外省人による、以前からの住民・本省人への弾圧は書籍や映画に多く描かれています。しかし、実は外省人のほうも大変だったのだと教えられるのがこの小説。入り組んだ歴史をリアルに盛り込みつつ、ストーリーとして抜群に面白い。台湾に行く人が必ず訪れる、龍山寺や迪化街 (てきかがい)が舞台になっているのも魅力です」

ザリガニの泣くところディーリア・オーエンズ

『ザリガニの鳴くところ』
ディーリア・オーエンズ
訳/友廣純

生物学者の著者が70歳で初めて書いた小説がベストセラーに。「湿地の詳細な描写が素晴らしい」。タイトルは、茂みの奥深く、生き物が自然のままの姿で生きている場所を指す。ハヤカワ文庫

3冊目の『ザリガニの鳴くところ』はアメリカ南東部の湿地に一人で生きてきた少女が主人公。学校に行かずとも、沼地の生物に親しんできたことを活かし、書物を著すまでに成長しますが、ある死亡事件の犯人として裁かれることに。

「親から捨てられ、かなり特殊な環境で生きてきた女性なのに、共感する部分が大きい。彼女を簡単にどうにかできると思っている男性に対して、絶対に屈しないと抵抗する、女性の本能的な強さを感じます。読者はみんな、彼女に幸せになってほしいと思うはず」

謎解きだけに終わらない、読み応えのあるミステリーが揃いました。

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写真/目黒智子、取材・文/丸山貴未子

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