【フランスの台所vol.2】旅先で見つけた器や道具で、 異国で出合った味をイエローカウンターで再現。

石坂紀子 フランスの台所

暮らしの中のキッチンの存在とは?という問いに、ひとりの女性は パルタージュ( 仏語で「分かち合う」の意味 )する場所と言いました。家族が集い、友人と語らう、幸せを分け合う場所がキッチンなのです。 パリで暮らす女性たちの、素敵なキッチンと料理を取材しました。今回はMAISON N.H PARISファウンダー兼ファッションプロデューサー・石坂紀子さんのフランスでの台所をご紹介。

本誌の素敵なフランス人のファッションや暮らしを紹介するコーディネー ターとして、また日本でもサークルラフィアバッグがブレイクしたMAISON N.H PARISのファウンダー兼プロデューサーとして、多忙な毎日を送る石坂紀子さん。

「この家は別れた夫とともに、2000年に購入したアパルトマン。昔の縫製工場のアトリエだった場所で、細かな部屋に分かれていました。その壁を壊し、リビング兼ダイニングキッチンのスペースを広く取って、大々的にリノベーションしました」 そのキッチンに、シンボリックに鎮座するイエローのカウンターは、救世軍のバザーで見つけたものだとか。

「値段は5000円程度でした。実はリノベーションでアイランドキッチンを作ろうとしていたんですが、バスル ームに予算をかけすぎてしまい、残念ながらキッチンは後回し。本当はよけいなものが見えない、すっきりしたキッチンにするはずだったんですが」 カウンターの脇に置いた赤いラックも、日本への帰国者が広告に出したもので、お手頃価格で購入できました。「色もバラバラですが、独特の味わいがあるこの感じが、今は気に入っています。コロナで自粛中ですが、我が家は昔から大勢の友人を招いて食事をすることが多く、キッチンで料理する私を皆がカウンター越しに囲み、わいわい話したり、飲んだりするのが、とにかく楽しいんです」

種類豊富なスパイスは分かりやすく

石坂紀子 フランスの台所
クローブ、クミン、カルダモン、シナモンなど、上から見てパ ッと取り出せるよう、空き瓶に入れて、名前をテープで貼って収納。
石坂紀子 フランスの台所
岩塩やナッツ類、クスクス、コンミールなどを保存容器で常備。「子供たちも小さい頃からスパイスが効いた料理を食べていました」
石坂紀子 フランスの台所
イエローのカウンターの引き出しには、豆皿のコレクション。 京都の陶器市や大好きな器屋さんなど、さまざまな場所で出合った豆皿。
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石坂さんは二男、一女の母。現在は長男と長女が留学中で、 14歳の次男とのふたり暮らし。アパルトマンのある10区は、インド、アラブ、アフリカ、 アジアと多国籍な人種が集まっている地区です。

「食育というほどおおげさではないも のの、この環境を生かし、さまざまな異文化を味覚からも学ばせたいと思いました。私は仕事でマダガスカルやインドなど、世界中を旅するので、その国で出合った美味しい記憶をたどって自分なりのオリジナルレシピを作るのが好きなんです。旅先で購入したスパイスを使い、エスニックをモダンにアレンジ。大好きなシェフ、ヨタム・オットレンギの中東料理や、南インド料理のレシピを参考にしています」

平日は仕事に追われることが多いので、料理をするのはもっぱら週末などの時間にゆとりが生まれたとき。 「キッチンで野菜を切っていると、集中できて頭の中が空っぽになり、本当にリフレッシュするんです」 また長年ファッションの仕事をしている石坂さんは、旅先でも器やキッチンツールなどを、そのセンスで見極め、 いろいろと集めています。

「天然素材が好きなので、まな板やすり鉢、サラダサーバーなどはモロッコや北欧で買い集めました。包丁や下ろし金、スライサーなどの刃物は、やはり日本製が一番です」 また優雅でスタイリッシュな脚付きコンポートが大好きで、そのコレクションも見事。

石坂紀子 フランスの台所
美しいカッティングガラスの脚付きコンポートは、昔から好きなデザイン。フランス、 ベルギー、イギリスのアンティークなどが多い。

「パリやフランス郊外、イギリスやベルギーの蚤の市など、アンティークマーケットで出合いがあるたび買ってきました。果物やデザートを並べるとき、 この器にサーブするだけで、特別感が出るのが気に入っています」 。 そして器は高いものを買って仕舞いこむのではなく、日常で使いたいから 〝身の丈にあったもの〟を選んでいると。

「使っているうちに割れてしまうかもしれませんが、やはり大好きなものに囲まれて暮らしたい。だからテーブルの上には、大好きなアスティエ・ド・ ヴィラットの白い器も日本で買った豆皿などの和食器も一緒に並べ、折衷スタイルを楽しんでいます。インテリアもそうですが、あえてバラバラの絵柄や大きさで、それぞれの個性が並ぶのが楽しいです」

最近のちょっとした変化は、エコロジーなライフスタイルを目指すこと。 「プラスチック製品は買わない。お水もブリタでろ過して使い、スパークリングウォーターもソーダストリームで作っています。野菜も袋に入ったカット野菜ではなく、丸ごと買ってエコラップで包み、ゴミをへらすようにしています。少しずつ心がけていき、環境問題に自分なりのアプローチができたらと思っています」

各国から集めた、お気に入りのツールで美味しく料理

石坂紀子 フランスの台所
大のカゴ好きなので、キッチンにもいろいろ。ブタのバッグはメキシコのマーケットで、チュニジアで見つけたラクダの口当て用のカゴも。
石坂紀子 フランスの台所
丸いプレートはブダペストで、クルミの木のスプーン、インドのローズウッドのお椀、 マダガスカルの胡椒挽き、 モロッコ産のまな板。
石坂紀子 フランスの台所
左から時計回りに、彩り人参のハリッサグリル、ウイキョウとザクロのサラダ、ロマネスコのゴマ和え。どの料理もヘルシーで美味。
石坂紀子 フランスの台所
ロマネスコは刻んで茹でてからタヒニ(ゴマ)で和えて、メ ープルシロップを隠し味で少し加える。石坂さんの得意料理のひとつ。
石坂紀子 フランスの台所
「葉っぱのモチーフが好きなのは母ゆずり」。左上はお母様から、右上はマダガスカルで購入。右下はバカンス先のタイで購入した。
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『ku:nel』20215月号掲載

写真 篠 あゆみ / コーディネート 鈴木弘子、 石坂紀子(白石さん)/ 文 今井 恵

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