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在パリ約6年のクウネル・サロンメンバー松永加奈さん、日本への帰国が決まり、フランスレポートがいよいよ今回でラストとなります……。トラブルは少なくないけれど、世界屈指の観光地の美しい景色にときめきをたっぷりもらい、あっという間の6年間だったと振り返ります。
松永加奈のフランス便り 締めくくりシリーズ
パリ暮らしの一歩はテロ騒動から
初めてパリへ来たのは6年前の秋でした。ファッションウィーク、いわゆる〝パリコレ〟の時期と重なり、ファッショニスタが闊歩する華やかな街を眺めながら「ここに住むのかー」といまいち実感がわかないまま、住まいを決めて一旦帰国。その直後にテロが起き、観光客が一時的に姿を消し、銃を持つ兵士が街中に配置された2015年の冬、私のパリ生活はスタートしました。
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日本的な「暗黙のルール」は通用せず
海外生活はソウルに続いて2回目でしたが、言語はもちろん、アジアとヨーロッパでは生活習慣がかなり違うので、生かせる経験は「度胸」のみ。当初は「Bonjour」「Merci beaucoup」の連発とジェスチャー、周りの人の動きを真似してみる…の繰り返しで、失敗しても「次こそは」と果敢にトライする日々でした。それでも意思疎通できなかったり、あまりにアバウトな国民性にため息をつくことも(むしろそればかり?)。とはいえ、落ち込んでいる暇はなし。フランスで「暗黙の了解」は通用しないので、自己主張は強めに、しょっちゅう起きる生活トラブルは「まあこんなものだろう」と受け流していたら、あっという間に6年が過ぎた感じです。
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フレンドリーな人々と美しい景色に元気づけられる
もともとフランスに強い憧れがあったわけではありませんでしたが、来てみれば、やはり世界屈指の観光地。巨大なモニュメントに歴史的建造物、有名な美術品など、教科書やテレビで見た「あの」本物が身近にあることは感動的で、それは最後まで貴重な経験でした。そこに暮らす人々はプライドが高く、個人主義…ではありますが、基本的に人との距離感が近く、他人でも気軽に何か訊ねたり、手を貸したり、目が合うと挨拶や笑顔を交わしたり、イメージしていたよりずっとフレンドリーな印象。おかげで、旧式ばかりの不便な日常や、在パリ中に起きた大規模スト、長期間のデモも、「C’est la vie」(これも人生さ、仕方ない)と声を掛け合ったからやり過ごせたシーンがいくつもありました(でも大変だった…)。
一方、治安の悪さは変わることなく、事件は多いしスリはうようよ。美しい景色の中に悪い人の影がチラチラ見えるのは腹立たしい限りですが、結局これもパリなわけで、人ごみでは常に緊張感を持って行動。改めて「日本の治安の良さ」を思い返しています。
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パリ生活終盤はロックダウンに
パリ生活の終盤は、予想だにしなかったウイルスとの闘いでした。道から人も車も消え、公園は閉ざされ、外出が厳しく制限される完全ロックダウンをまさか海外で経験するとは。つくづく、生きているといろいろなことがあるなと実感。フランスの人々が好む「芝生で何もせずのんびりすること」「公園をぶらぶらすること」「友達と会っておしゃべりすること」がいかに楽しく贅沢な時間の過ごし方か、ということを改めて知った気がします。
私にとって遠い異国の地だったパリは、いろんなことがあった6年間で、縁のある街になりました。再び始まる日本での暮らしの中で、自由とバカンスをこよなく愛するフランス人と、芸術家たちがこぞって描いてきた美しい風景がふと思い出されるのも、悪くないなと思います。それでは、フランス便りはこのへんで。ありがとうパリ、またいつか。
★松永加奈のフランス便りをご愛読いただきありがとうございました。
11月からは、東京に居を移した松永さんの日常便りをお送りします。お楽しみに!