上菓子屋さん、おまん屋さん、お餅屋さん……それぞれの違いが楽しい【京菓子の世界/前編】

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上菓子からお饅頭、餅菓子まで。日本文化が詰まった京菓子の世界を銘木師・中川典子さんに教えていただきました。

教えてくれた人

中川典子/なかがわ・のりこ

銘木師、「京都・和菓子の会」主宰 

 生家は京都で300年近く続く材木商で、幼少からの和菓子好き。家業を継ぎ銘木師として活動しつつ、「京都・和菓子の会」を主宰。10月1~6日、新宿髙島屋で開催されるイベント『和菓子魂』で開幕トークショーに出演。 

京菓子に関するおすすめ本3冊

京都の和菓子屋には、上菓子屋さん、おまん屋さん、お餅屋さんがあると中川典子さんは言います。上菓子屋さんは、茶席やおもたせに使う菓子を作る店。おまん屋さんは、『出町ふたば』『中村軒』に代表される大福や饅頭など日常の菓子を売る店。お餅屋さんは『鳴海餅』のように白餅を搗く、お赤飯がある店です。

そして、それぞれに役割があって、あんの甘さひとつとっても違いがあります。「上菓子はお茶の邪魔をしないことがなにより大事ですから、洗練された奥ゆかしい甘さ。一方、おまん屋さんや甘味処などの菓子は、〝甘チャージ〟のためにありますから、ざらめを使った、ガツンとパンチのある甘さが特徴なんです」

京菓子と聞くと、美しい色彩や繊細な意匠の上菓子をイメージしがちですが、「普段使いの餅菓子やお饅頭も、なくてはならないもの。京都は職人さんの街。職住一致の家も多く、彼らの小腹を満たすお菓子として暮らしに密着してきました。さらに『スピノザの診察室』に出てくる長五郎餅のような門前菓子や祇園祭などの行事にちなんだ菓子もあり、そのどれもが揃うのが、京菓子の魅力です」

和菓子『スピノザの診察室』

『スピノザの診察室』夏川草介

京都の地域病院で、終末期の患者に寄り添う和菓子好きの医師の物語。「看取りや介護の話の中で、和菓子が一服の清涼剤として出てくるところに感銘を受けました」水鈴社 

それらの中には、菓銘や意匠などに謂れを持つ菓子もたくさんあります。「歴史、自然、色彩、趣向......。和菓子はさりげないものですが、その小さな中には、日本の、京都の文化が詰まっています。ただ、食べて〝おいしい〟で終わってしまうのでは、もったいない。『京都 和菓子めぐり』や『江戸時代の和菓子デザイン』を読んでから味わって、その奥深さに触れてほしいと思います」

和菓子『京都 和菓子めぐり』

『京都 和菓子めぐり』 鈴木宗康、鈴木宗博

和菓子研究家・鈴木宗康著『京・銘菓案内』の、息子・宗博による改訂版。「『京・銘菓案内』は私の宝物。美意識が高かった著者が、名店80軒の銘菓を解説しています」淡交社 

そこで、季節、意匠、普段使いをテーマに、3冊にちなんだ京菓子を選んでもらいました。出向く際にはぜひ、本店へ、と中川さん。看板、暖簾、お迎え花......。京都の和菓子屋さんの設えや風情に触れると、もうひとつ味わいが深くなるそう。

和菓子『江戸時代の和菓子デザイン』

『江戸時代の和菓子デザイン』中山圭子

徳川家御用菓子屋の絵図帳からの抜粋で、意匠や菓銘も解説。「意匠や歴史に精通する著者による1冊で、和菓子がいかにクリエイティブなのかが伝わってきます」ポプラ社 

季節や歳時記を大切にする街の、 寒天や青柚子を使った夏の菓子。

「京都の人は自然観の意識が強く、近所のお寺でかきつばたが咲いているのを見ると、唐衣を食べなきゃという気持ちになります」

正月の花びら餅にはじまり、椿餅、うぐいす餅、桜餅......と、店頭に並ぶ四季折々の菓子を楽しみます。夏に多くなるのは、葛や寒天 で涼やかさを表した琥珀糖や、青柚子、夏みかんなどで酸味や香りを添えた菓子。

「最近では、和菓子ではタブーとされてきた柑橘の レモンやミントを使ったものも登場し、魅力が増しています。寒天菓子は、涼を誘う演出がとても大切なので、竹の籠や笹などパッケージも楽しみのひとつです」。『京都 和菓子めぐり』の掲載店から、季節限定の涼味を。 

※季節の和菓子のため、販売終了しているものがあります。

亀屋則克/涼菓 浜土産 (はまづと)

亀屋則克(かめやのりかつ)

いまも座売りを貫く老舗の銘菓。蛤の貝殻に流した琥珀糖に、味噌風味の浜納豆がひと粒入る。「甘じょっぱさがいい。夏になると我が家の冷蔵庫には必ずあって、冷やしていただきます」。1個500円(~9月中旬)

住 : 京都市中京区堺町通三条上ル
: 9:00~17:00
: 日曜、祝、第3水曜
https://www.kameyanorikatsu.com/

虎屋菓寮 京都一条店/青柚子氷

虎屋菓寮 京都一条店 青柚子氷

虎屋菓寮 京都一条店

羊羹で知られる和菓子店の京都限定氷。果皮をすりおろした青柚子のペーストが香り高い。「ひと際爽やかで、素材の良さを際立たせるのがうまいなぁと感心します。庭を眺めつつ楽しめるのも贅沢」。1,760円(~8/31) 

住 : 京都市上京区広橋殿町400
: 9:00~17:30L.O.
休 : 元日、毎月最終月曜(祝、12月除く)
 https://www.toraya-group.co.jp/

大極殿本舗/琥珀流し(7月のミント)

大極殿本舗 琥珀流し(7月のミント)

大極殿本舗

毎月、味が変わる名物甘味。ゆるく固めた寒天にミントのシロップがかかる。「ミント味はあまり好きではないのですが、これだけは特別。甘く、爽やかで、葛切りと寒天の間のような食感も喉越しがいい」。980円(7/31まで)

本店
住:
京都市中京区高倉通四条上ル帯屋町590
営 : 10:00~17:00L.O.
休 : 水曜
https://www.instagram.com/daigokuden.honpo/

『クウネル』2026年9月号掲載
イラスト/平野恵理子、取材・文/齋藤優子

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