キャラクターではなく実在していた!内助の功で知られる「おかめ」は今なお夫婦円満のシンボル【酒井順子さん女人京都Vol.2】
『女人京都』を読み女人ゆかりの地を行くと都の陰影も見えてくる。『女人京都』の著者であるエッセイスト・酒井順子さんに、歴史上の4人の女人にまつわる地を案内いただきました。
教えてくれた人
酒井順子/さかい・じゅんこ
エッセイスト
東京生まれ。平安女性文学を通じて京都好きとなり、大学の講座を受けに長期滞在したことも。『都と京』ほか京都関連著作も多い。最新刊『ひのえうまに生まれて』。
『女人京都』酒井順子
歴史上の女人足跡を訪ね想像巡らす、雑誌連載をまとめた京都案内エッセイ。史跡巡りの合間になごみの栄養補給も。小学館文庫
おかめ ーー 大報恩寺
おかめ(阿亀)
夫である長井飛騨守高次が棟梁として臨んだ1223年からの大報恩寺本堂の造営に際し、夫の苦境を救う。夫をたて上棟式を待たず自ら命をたった内助の功の話に人々は同情し、夫婦円満や家内安全のシンボルとなっていった。
本堂には兼好法師も訪れたことが『徒然草』に記されている。歴史を経た木造の建築は細部も風合いも必見。本堂の中では、おかめの助言で最後に柱の上につけられたという「ますがた」も見られる。
国宝建築の中で、実在したアイコンの生き方に思いを馳せる。
かつて西陣に宿泊した時、周囲を歩いていて大報恩寺に偶然辿り着いた酒井さん。国宝である洛中最古の本堂が建てられた時、ある女性がかかわっていたという話に魅入られたと言います。
おかめを信仰する人々がその証として寺に奉納したおかめ面や人形などが本堂の一角に並ぶ。入口の方は室町時代のもの。
「それが、おかめさん。キャラクターと思っていたおかめは、実在の人でした」
本堂造営の棟梁を務める夫が、あやまって柱の1本を短く切り落としてしまった時、おかめは朝に晩にお百度を踏み、とうとうご本尊からお告げを得て夫に伝授。そのとおり夫は行動して、見事落慶は叶ったけれど、夫の名誉を守るため自分の存在を消そうと自害……その物語は本堂内にかかる絵にも描かれています。
来年建立から800年となる貴重な木造本堂。隣の霊宝館の仏像展示なども圧巻。
「おかめさんは夫婦円満の象徴となって、広く信仰されるようになりました。今なお大工さんたちがお参りしているのを見て、いにしえと繋がる京都を実感したことも。八百年の時を経た本堂の中に入れるのも、ありがたいことです」
境内のおかめ塚。
さらにご住職より、おかめさんのお顔の細部にも様々な意味があることをうかがったり、霊宝館内の国宝や重要文化財群に見入ったり。
「都の歴史を五感で感じることができます。お盆の六道参りの頃に夜訪れると、お経と灯りで幻想的な雰囲気」。小さくても多彩な魅力を秘めたお寺です。
おかめキーホルダーもかわいい。
大報恩寺(千本釈迦堂)
1220年奥州藤原家、秀衡の孫である義空上人が開創。本堂は京洛最古の建物。大根炊き行事や陶器市でも賑わう。
住 : 京都市上京区五辻通六軒町西入溝前町
境内の参拝は自由。
本堂・霊宝館拝観 : 9:00~17:00
https://daihoonji.jp/
\ほかに立ち寄るなら/
寺を出たら小路を抜けて『ふた葉』であつあつのうどんを食べて上七軒あたりを流すのも一計。西大路まで出て酒井さんも大好物の生フルーツゼリーなどを『クリケット』でいただくものもよし。
ふた葉
住 : 京都市上京区真盛町719(北野上七軒)
http://www.futaba-kami7ken.com/
のっぺいやけいらんなどおろし生姜が効いた餡かけうどんや丼ものが人気。
クリケット
住 : 京都市北区平野八丁柳町68-1 サニーハイム金閣寺1F
https://cricket-jelly.com/
生フルーツゼリーやフルーツサンドが人気を誇るフルーツパーラー。
MAP
『クウネル』2026年9月号掲載
写真/大段万智子、イラスト/友野可奈子、取材・文/原千香子
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『クウネル』NO.140掲載
旅を深める本76冊と歩く、京都。
- 発売日 : 2026年7月17日
- 価格 : 1,080円 (税込)