【女ひとりで家を建てる①前編】自分のために7軒もの家を建てた女性の家づくりの記録。

井手しのぶさん 連載1

自分のために建てた家はなんと7軒!。そんなパワフルな女性、〈クウネル・サロン〉プレミアムメンバーの井手しのぶさん。そんな井手さんが7軒目を建てるときに、本誌では『おんなひとりで家を建てる』と題して、家づくりのルポを連載していました。その家づくり顛末記をご紹介してまいります。まずは6軒目の海の家の話から……。

キッチンで夕食の支度をしていると、目の前の海にオレンジ色の大きな太陽が沈みはじめる。そうなったらもうワインの栓を開けずにはいられない。グラス片手に調理の手もいきおい滑らかに。
ホームビルダーの井手しのぶさんが愛犬ジャックと昌夫、愛猫のブチャ&虎一とともに暮らすのは神奈川県・葉山の海に面した一軒家。3階にあるダイニングキッチンからは打ち寄せる波も手にとるよう。仕事も暮らしも長年湘南をベースにしてきたのに、実は海が見える家に暮らすのはここが初めて。

井手しのぶさん 連載1
神奈川県・湘南エリアを中心にナチュラルな家づくりをする「パパスホーム」代表として長年活躍。現在は、フリーデザイナーとして活動。

「ずっと海がばーんと見渡せる家に住んでみたかったんです。ある日、車で目の前の国道を通りかかったら、ここが更地になっていて、売り出し中の看板が。やったー!という感じでした。長者ヶ崎の海岸の真ん前。看板にあった横須賀の不動産屋さんにすぐ連絡をとりました」
当時、井手さんが住んでいたのは鎌倉 山の古家をリノベーションした家。自分の好きなように手を入れた思い入れある空間だったが、見つけた土地の値段はその家と土地を売却すれば何とかなりそうな金額。ここは思い切って「あっちを売って、こっちを買う」。6年前の一大決心だった。いよいよ海が目の前の理想の家づくりがスタート。

「でも実際は仕事の方があまりに忙しくて、自分の家のことはあまり考えられなかったんです。まずは海が見えればいいや。次に、お風呂が大好きだからバスルームは屋上に設けて露天風呂気分にしたい。とりあえずはその2点をかなえようと決心しました」
土地の広さは約30坪。そこをフルに生かして2×4工法の木造3階建ての家に決めた。間取りは1階がオフィス。脇の階段をトントンと上がると2階に玄関スペースと寝室、3階はLDKのみ。犬と猫がいるから掃除しやすいように床はモルタル、壁は調湿性のある珪藻土にした。キッチン天板は「シミも汚れも魅力になる」とあえて無垢材を選び、側面に張るのはブルックリンの古いビルで使われていた錆びた天井材。もちろん屋上には望みどおりにバスルーム。
「チマチマした空間は嫌いなので、ワンフロアに1空間と決めました。扉も作らず、下から上まで全部がつながるイメージ。どうしても冷暖房効率は悪くなるけど、美しく住まおうとすると、どこかでひずみが出てくるものなんです。この家の場合はそれが冷房費と暖房費。夏はまだしも、冬は寒い! 背に腹はかえられず、寝室の入り口にはシーツをかけてしのいでいます。窮余の策だったのに、訪れる人からは素敵ねと褒められます」

【女ひとりで家を建てる①後編】に続く

井手しのぶさん 連載1
井手しのぶさん 連載1
海側に壁一面の大きな窓を実現するため、2 × 4 工法に門型フレームと 呼ばれる耐力工法を組み合わせた。夏はその窓の真正面に太陽が沈み、遠景には江ノ島や富士山も。
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