南青山の人気店『のみやパロル』流「しらたきとピーマンのきんぴら」と「シャキシャキポテトサラダ」の作り方

親しみのある味と店主・桜井莞子さんのおおらかな人柄で人気の『のみやパロル』(南青山)。見慣れたはずの料理なのに、ひと味違う。そのおいしさの秘密を、2つのレシピを通して教えていただきましょう。

PROFILE

桜井莞子/さくらいえみこ

1943年満州生まれ。ケータリング会社の経営を経て1994年東京・西麻布に『ごはんやパロル』を開く。還暦を機に店を閉め、伊豆で料理教室を主宰。2014年、71歳で再び『のみやパロル』を南青山に開店。

いつもの定番料理をひと味違ったごちそうに

懐かしくて、でもどこか新しい。いつ食べてもほっと安心できて飽きのこない味。だからまた通いたくなる。味にうるさい食通も、昔なじみも、ふらりと立ち寄った人も惹きつけてやまない『のみやパロル』の料理には、どんな秘密があるのでしょう。

「パロルを始めるときに本当にやりたかったのは、冷蔵庫にあるものでお客さんのリクエストを聞いて作ること。でも店だから、やっぱりメニューがないと難しくて断念。余裕があるときは、たとえばだし巻きを甘くして、くらいの声には応えますけどね」

食べる人に喜んでもらいたいと寄り添う気持ちは、母の背中を見て、そして料理の世界に飛び込んでさまざまな経験やキャリアを重ねるうち、桜井さんのなかでますます揺るぎないものとなったようです。

「料理は愛情って、よくいうでしょう。思いをかけるのは愛する人だったり、家族だったり、私の場合はお店かしらね。じゃあ、どうやって愛情をかけるかというと、野菜を丁寧に始末するとか、切り方ひとつにもこだわるとか、そういうところだと思うんです。たとえばきんぴらを作るとき、しらたきなんておなじみの安い食材だけど、しつこく炒めることで驚くほどおいしく仕上がります。つまりは手間をかけることだと思うの」

定番のおかずをごちそうに変える切り方とは?

しらたきと極細のピーマンが絶妙にマッチング。定番のおかずをごちそうに変えるのは切り方の妙。パロルのきんぴらは、基本的にどの素材も千切り。

「しらたきとピーマンのきんぴら」の作り方

◎材料(2人分)

しらたき1袋(350g)、ピーマン3個、赤とうがらし(スライス)1/2本分、太白ごま油大さじ1、白だし大さじ2、酒大さじ2、ごま少々

◎作り方

1.しらたきは食べやすい長さに切り、15分ほど茹でたら、ざるに上げて水を切る。

2.ピーマンは縦2つに切り、種を取り、細く切る。

3.フライパンに太白ごま油を入れて熱し、赤とうがらしを入れ、1.を加え、弱めの中火でほぐしながらじっくり10分ほど炒める。パラパラになってきたら、2.を加え2~3分炒め、強火にして酒を加え、さらに炒め、白だしを加え、全体がよく混ざったら火を止める。

4.皿に3.を盛り、ごまをふる。

極細に切るのがポイント。ごく細い千切りにすることで、食感も変われば見た目もぐんと繊細に。まずは、よく切れる包丁のご用意を。

よく煮てしっかり炒める。しらたきは15分茹でて、さらにしっかり炒めること10分ほど。水分をしっかりとばし、パラパラになるまで。

じゃがいもをマッシュせずに作る美味しいポテサラ

素材を細切りにして合わせるポテトサラダは、食感も楽しい1品。じゃがいもをマッシュするいつものポテサラに飽きたら、お試しあれ。

「シャキシャキポテトサラダ」の作り方

◎材料(2人分)

じゃがいも3個、玉ねぎ1/2個、セロリ1本、きゅうり1本、ハム4〜5枚

ドレッシング…マヨネーズ大さじ3、塩、コショウ少々、辛子お好みで

◎作り方

1.じゃがいもは皮をむき、マッチ棒よりもやや太め、長さは同じくらいに切る。

2.玉ねぎは薄くスライスし、水にさらし、ざるに上げる。

3.セロリは筋を取り、3~4㎝の長さに細切り、水にさらしてから、水気を切る。

4.きゅうりは縦2つに切り、種部分を取り除き、3~4㎝の長さに細切り、水にさらす。

5.ハムは細く切る。

6.鍋の湯が沸騰したら、1.をサッと茹で、すぐに氷水に取る。

7.それぞれの材料を、ふきんなどで水分を取ってからボウルに入れ、ドレッシングと和える。

シャキッとした歯ごたえが肝。じゃがいもはくれぐれも茹ですぎず、氷水にとったら水気をしっかり切る。

通いたくなる店、パロルの魅力

パロルでは、ブランドや産地にこだわった高級な食材や特別な調味料を使うわけではありません。「ふだんの素材を一段引き上げておいしくするのが私の仕事」という桜井さんがこだわるのは、手間をかけること、時間を惜しまないこと。ランクアップの秘訣はいたってシンプルですが、簡単なようで、それが意外に難しく……。

「そうね。今、時短料理もすごく多いじゃない。下処理は電子レンジで済ませるとかね。でも、私は嫌いなの。電子レンジを使うのは、ひとり分のごはんを温めるときくらい。わりと頑固なんです。忙しい人たちはしようがないかもしれないけれど、私たちの世代であれば、なにもそこで時間を節約しなくてもいいんじゃないかしら」

さらにはレシピに頼りすぎず、自分の舌や感覚を大事にするべきとも。「家庭料理って、作るときにいちいち分量を量ったりしないでしょう。母の料理ノートを見てもレシピはずいぶんいい加減だし、私自身記憶をたどって作ってきたつもりが、材料すら違っていたなんてことも。勝手に自分の舌や感覚で変えちゃっているのよ」

休みの日には、家で自分のために料理を作り5時頃からひとりで晩酌。「昨日も気がついたら4品も作っちゃった。楽しいし、やっぱり食いしん坊なの。ただ、この年齢になると食べ歩くことが少なくなるから、料理を更新できないのがもどかしいわね」

食べる、作る、もてなす。桜井さんは、どんなときも大好きな料理に変わらぬ愛情を注ぎ、食を一生の仕事として歩んできました。

「週に2、3回来るお客さんに『よく飽きないわね』って言っちゃうんだけど、お店に通ってくれる人は、きっと私の舌と似ているんだろうなと思います。『おいしい』と言ってくれたらやっぱりうれしい。励みにもなります」

「同じ舌」をもつ人たちで、今夜もパロルは賑わいを見せています。

おいしさを引き立てる、欠かせないもの

店の新定番は和食にも合う自然派ワイン。2年前からワインはすべてナチュラルワインに変更。店のスタッフでもある桜井さんの娘、海音子さんが仕入れを担当、おすすめを提案してくれる。個性豊かな作り手たちから届く多彩なワインは、パロルの味にぴったり。

おめがねにかなった調味料とは長いつきあい。桜井さんの味を長年支える定番の調味料。右から、三留商店の「薬膳ソース」。ヤマサの醤油。山家屋の「白だし」。京都の村山造酢の「千鳥酢」。竹本油脂の「太白胡麻油」。ギリシャ産のエキストラバージンオリーブ油「L&KO」。

カウンターや棚にずらりと並ぶのは、すべて黒田泰蔵さんの白い器。どれに何を盛るかは決めておらず、そのときの気分とひらめきだそう。主役の力をもつ器に、料理をどう盛りつけるか。「器との競い合いもまた楽しいものよ」

のみやパロル

住:東京都港区南青山2-22-14 フォンテ青山101
営:18:00~21:30(L.O)
休:土~月曜、祝日

※予約は電話03-6434-5959(15:00~)かInstagram:@nomiya_paroleのDMで。

SHARE

『クウネル』No.121掲載

料理好きな人のいつものごはん

  • 発売日 : 2023年5月19日
  • 価格 : 980円 (税込)

IDメンバー募集中

登録していただくと、登録者のみに届くメールマガジン、メンバーだけが応募できるプレゼントなどスペシャルな特典があります。
奮ってご登録ください。

IDメンバー登録 (無料)