クウネルがリニューアルした2016年からの5年間の美容界の流れを振り返りつつ、これからの美容トレンドをビューティサイエンティストの岡部美代治さんと読み解いてきたシリーズも最終章。自身もクウネル世代の美容ジャーナリスト、齋藤薫さんにこの5年、そしてこれからについて綴っていただきました。
「クウネル世代は、本格的な衰えの前に、
夢の若返りが間に合ってしまった幸運な人たち!」
化粧品は〝夢を売るもの〟である一方、パソコンのように進化し続けなければならない宿命にあるが、2つの使命がようやく1つになったのがこの5年間だった。つまり化粧品の進化がいよいよ私たちの長年の夢を叶え始めたのだ。
最も象徴的だったのは、ポーラが扉をこじ開けた「史上初のシワ改善薬用コスメ」の誕生だろう。シワを消したい……これは古代からの女性の願い。それが美容史上初めて叶ったことになる。
「乾燥ジワを防ぐ」程度だったのが深いシワも改善するものになったのだから。またヒアルロン酸を柔らかいトゲにして注射のように肌深く溶け込ませるマイクロニードルのブームや、花王の発明による人工皮膚膜を一瞬で作るようなマイクロファイバー機器、顔の下半分をEMSで引き締めるヤーマンのメディリフトなど、本当の意味で美容医療と競り合う超即効性美容の誕生も、その場で目に見えてキレイになれるシンデレラ効果の実現で、諦めていた夢を叶えてくれた。
年齢を諦めずチャレンジ
奇しくもこのコロナ禍で、クウネル世代の友人たちは皆申し合わせたように美容家電を買っていた。ともかくこの世代、若さを手作りする若返りお籠り美容にハマる人が今本当に増えているのだ。〝ファンデなのに美白〟だったり、肌を育てる赤色光だけを浴びられるUVケアコスメだったり、その定義さえ塗り替える進化が始まっていて、 私たちの中にも年齢を諦めずにチャレンジする気持ちが生まれているのだ。
ヘアケアでは、毛染めの退色を防ぎ、 乾かす方が髪に良いドライヤーなど、 逆転発想の進化が目立ったが、最大の逆転はやはりシルバーヘアのブームだろう。髪を染めないこと自体が究極のヘアケアなわけで、シルバーヘアの美しい女性たちが増えるほどに、歳をとることが怖くなくなっていったのは確か。
そして忘れてはならないのが、プチプラコスメが劇的に優秀になり、高級コスメと遜色ないほどになったこと。 抑えるところは抑え、掛けるところには掛けるというメリハリを利かせられるのはもちろん、お金をかけずにキレイになれるという確信は、女性たちにどれだけ勇気と自信を与えたことか!
生まれつきも変えられる時代へ
2020年後半最大の話題となったのが遺伝子ケア革命。これまで遺伝子のゴミ箱とされてきた98%の領域がケアできることがわかり、生まれつきも変えられる時代へ。だから何十歳分も若返る肌の大逆転もあり得るということで、ともかく今、進化に加速度がついている。
数年後には今の自分たちには想像できないほど凄いことになっていそう。だって車が自動運転を始める時代。美容も、塗るだけで美容医療の仕上がりという時代がもうすぐそこなのだ。誰もが難なくキレイになると、それだけで自己肯定感を高める人が増え、世の中きっと明るくなる。クウネル世代は、本格的な衰えを迎える前に夢の若返りが間に合ってしまった、この上なく幸運な世代なのである。
齋藤薫/さいとうかおる
美容記事、エッセイ執筆、広告制作など、クウネル世代を代表するひとりとして幅広い分野で活躍。近著に『美人だけが知っている100の秘密』(角川春樹事務所)。
『ku:nel』2021年3月号掲載
写真 池田 敦 Pile Driver/取材・文 河村美枝 /編集 河田実紀 Hata-Raku
●美容界この5年をふり返りシリーズ
◎【美容界ふり返り・2021年編】科学技術の集大成がやってくる!近未来スキンケア。
◎【美容界ふり返り・2020年編】こんな世の中だからこそ、スキンケアで肌から幸せに。
◎【美容界ふり返り・2019年編】驚きの新発想と、自然由来にこだわった、身体に優しいスキンケア。
◎【美容界ふり返り・2018年編】低価格で高クオリティ、自宅でエステ気分も味わえる。バラエティに富んだスキンケア。
◎【美容界ふり返り・2017年編】美容医療に化粧品が近づいたことで実現。夢の若返りスキンケア。
◎【美容界ふり返り・2016年編】より人を幸せにする美容へ。皮膚科学に基づいた大人スキンケア。