「映え」はもう古い!?あっという間に移り変わる若者言葉の今。【後編】
時代を映し出す若者言葉は日々進化。Z世代独特の言葉遣いは、ポップなフィルターを通して痛みや現実を中和し、コミュニケーションを円滑にするツール。その言葉の裏にはSNS時代を生き抜く若者の〝知恵〟が見え隠れしていました。
コンテンツ・SNSから拡散した言葉。
「だしょ?」「ちょ、待てよ」......80〜90年代はドラマのセリフが一世を風靡することがありましたが、今はドラマのセリフが若者の間で流行る事例が少なくなっているようです。「若者の間で流行った言葉がテレビで流れるまで何年もかかるので遅いです。広告もドラマも後追いが多いですね。TikTokから流行りが生まれるというより、流行ったものがTikTokで回っていることも多いです」と、石崎さんは分析。
【High-T】
若者に人気のYouTuberジョージ -メンズコーチ- さんから拡散。テストステロン高め=自信、活力のある強くて男らしいことを指す、いい意味の言葉。
【わかんの】
発信源は平成フラミンゴ。「それな」を一段上げた「わかりすぎてつらい」という強い同意や共感を表す。「推しの新曲、良すぎて死んだ」「わかんの!!」
一方、恋愛リアリティショー『ラヴ上等』(Netflix)には生の若者言葉が登場。「水はヤベェだろ」も、ここから出た言葉。番組の感想コメントにあった「目勃起」もパワーワードです。輩っぽいオラオラ感を「やかる」と表現するのは、前から一部で使われていて、このショーの登場人物が使ったことで広まりました。
【水はヤベェだろ】
Netflixの恋愛リアリティショー『ラヴ上等』で、出演者が水をかけられた場面での一言。度がすぎた行動を非難する言葉として話題になりミーム化。
【目勃起】
性的な目つきで女性を見る男性のこと。マッチングアプリや出会い系で、性的な目的で近づく男性を指す「ヤリモク」が進化したネットスラング。
M!LKの曲「イイじゃん」発祥の「ビジュいいじゃん」も、石崎さん的には「もう時代遅れ」だそうですが、「ビジュいいね」は、ほめ言葉として使われているとのこと。微妙な違いが重要です。
「自認レゼ」は漫画『チェンソーマン』の登場人物レゼに自分を重ね合わせる人を冷笑する言葉。心の奥に闇を抱えた中二病的なキャラクターです。「アニメ『薬屋のひとりごと』の主人公、猫猫(マオマオ)に自分を重ねる『自認マオマオ』もいます」と、渡邊さん。元ネタの漫画やアニメを知らないと話が始まらないので、常にアップデートが必要です。
【ビジュいいね】
M!LKの「イイじゃん」の歌詞から拡散した言葉だが、今は「いいじゃん」から「いいね」と語尾が変化。もはや一般的なほめ言葉として定番化。
【自認レゼ】
漫画『チェンソーマン』で主人公を狙うキャラクター「レゼ」に自己を投影。オタク女子がミステリアスさを自認している中二病的な状況を揶揄する言葉。
言葉の流行も倍速で変化。
若者の感性は時にシビアです。「きゅんです」「指ハート」など、大人の男性が使い始めたら終わり、という説も。「おじさんが流行りの言葉を取り入れるのは女性に対する下心に紐づいています」と、石崎さんの男性としての意見は参考になります。「若者に迎合しようとしていると引いちゃう」と、渡邊さんも同意。
「若者言葉は揺れ動く感情を表現していることが多い。若者同士の秘密の言葉はあまり使ってほしくないですね。お母さんに日記を読まれた感覚に近いです」と、正直な思いを打ち明けます。繊細な感性を遠くから見守る方が良さそうです。大人は若者と仲良くなりたくて使っている面もありますが「若者言葉を使わなくてもコミュニケーションは取れますよ」と、三上さん。
すでに時代遅れ? 「消えた言葉」
【きゅんです】
愛らしいものにときめきを感じたときに使う言葉として2020年頃から流行したが、もはや死語に。指でハートマークを作るポーズもすっかり消えた。
【ぴえん】
泣きたい気持ちを表す擬態語。2020年頃をピークにいまやダサいワードの筆頭に。「無理して使っている感」のある言葉は消えるスピードも速い傾向が。
【インスタ映え】
Z世代に人気のリアル重視なSNS「Be Real」に代表されるように、飾らない雰囲気やストーリー性が好まれる今の時代、「映え」は古いとされる。
現在進行形で使われる「残った言葉」
ちなみに30歳を超えてからは、色気があって魅力的な意味の「メロい」と「エモい」を推し活のときに使うくらいだそうです。
その「メロい」や「エモい」は今後も使われ続ける言葉に選ばれました。他にも、人間関係のドロドロを表す「グロい」や、ジャンルを指す「○○界隈」も、長く使われることが予想されています。
「日常会話で違和感なく使える言葉が残っています」と、渡邊さん。三上さんは「使っていて気持ちが良い単語や、意味が複数あって使う人によって解釈が変わる単語も定着していくと思います」と推測。大人世代は、ブームが一段落して完全に定着してから使うのが安全そうです。
【メロい】
「メロメロになる」からきた言葉で、心奪われるような魅力的なものに対して広く使われる表現。「かわいい」よりもやや色気のあるニュアンスを含む。
【エモい】
英語のエモーショナルが由来。メロンソーダ、純喫茶、フィルムカメラなどパターン化されたエモい事象を指す「パタエモ」という言葉も登場。
【○○界隈】
特定の趣味や価値観、関心事を持つゆるいつながりやコミュニティを表す。「苦労キャンセル界隈」の商品がトレンド予測になるなど経済にも波及。
お話を伺った方
PROFILE
辛酸なめ子/しんさん・なめこ
セレブ、スピリチュアル、美容、 大人の生き方、社会現象など、多様な話題の事象を取材、独自の観 察眼による画文が人気。『世界はハラスメントでできている 辛酸なめ子の「大人の処世術」』(光文社新書)ほか著書多数。
『クウネル』2026年7月号掲載
イラスト・文/辛酸なめ子、編集/矢沢美香
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