お世辞も誇張もなく、ユーモアに溢れて。言葉の名手、樹木希林の【かっこよく生きるための言葉】

樹木希林

それぞれの時代で輝き、「かっこいい女性の生き方」を私たちに見せてきてくれた方々。自分の足で立ち、新しい道を切り拓いてきた彼女たちの言葉は力強く、示唆に富んでいます。俳優・樹木希林もそのひとり。改めてその生き様を振り返り、潔い言葉の数々を味わいましょう。

PROFILE

樹木希林/きき・きりん

俳優
1943〜2018

劇団「文学座」を経て悠木千帆の名でデビュー。樹木希林へ改名後、ドラマ『寺内貫太郎一家』やCMで人気に。私生活ではロックミュージシャンの内田裕也と結婚。『モリのいる場所』『万引き家族』など、晩年は国内外の映画賞を席巻。老いや死を見つめる独自の死生観や言葉も広く共感を呼んだ。2018年に75歳で死去。

流されず、自分らしくあり続けた唯一無二の役者。

めったに取材を受けないけれど、受けるとなったらとことんに。亡くなった後はそれら残した言葉の数々が活字になり、「言葉の名人」として多くの人の支えになっている樹木希林。

淡々と、飄々と、ユーモアを交えつつも、おべんちゃらも誇張もなく、はっきりと「ほんとうのこと」を語ってきました。その表現は決して紋切り型ではなく、役者・樹木希林の生きた言葉たち。働くこと、人とつながること、生きること、死ぬことについて、逃げずに鋭く話してきたのです。そこに共通して横たわるのは、「なんでも面白がる」という樹木流の視点。

「全身がん」を公表してからは特に、老いや死というテーマを問われがちに。でも本人は「『死をどう思いますか』なんて聞かれたって、死んだことないからわからない」なんてさらりとかわす余裕ぶり。がんと闘うのではなく受け入れる。撮影現場には自分で運転して出向くなど、自然体で暮らしていました。そして、死を感じ、命を有限だと捉えるからこそ、生きることに向き合えるという境地もまた見事。「いつかは死ぬ」ではなく、「いつでも死ぬ」という意識で心もものも整理し、「始末」に励みました。

最晩年でも冴えていたのは例の「面白がり」の視点。老いや病の現象も「なるほどこうきたか」と受け止めると語ります。最後のロングインタビューを著した『この世を生き切る醍醐味』の結びはこう。「今日までの人生、上出来でございました。これにて、おいとまいたします」。かっこいい生き様とはまさにこのこと。

樹木希林

19902月頃、東京で撮影された。お茶目な表情が印象的。写真提供:朝日新聞社/ゲッティ イメージズ

樹木希林が残した言葉。

樹木希林言葉1

子育ての話で、娘から「お母さんは愚痴っていうのを言ったことがないね」と指摘されたことを受けて。最終的には「自分に関心がないからかも」と結論づけている。

樹木希林 言葉2

多くのものを持たず、あるものを生かして始末よく暮らしていた樹木らしいひとこと。「欲なんてきりなくある」けれど、「求めすぎない」。という話の続きのひとこと。

樹木希林 言葉3

老いをネガティブに捉えなかったことが伝わる言葉。「そうやって、何でもおもしろがって毎日を楽しく過ごしていたら、いい年のとり方ができるんじゃないか」と結んでいる。

「ときめき」というポジティブな言葉が新鮮なひとこと。度々、タッグを組んだ是枝裕和監督の映画『海よりもまだ深く』の主演・阿部寛さんとの対談で語った、ポジティブなひとこと。

『クウネル』2026年7月号掲載
取材・文/鈴木麻子

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『クウネル』NO.139掲載

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