【島田順子さんの運命の一冊】世界への扉を開き、夢を与えてくれた「地図帳」という存在

ふとしたきっかけで読んだ本が、その後の生き方に大きな影響を与えていたり、転機になったり......。第一線で活躍している島田順子さんが、長い人生のなかで指針にしてきた本、運命の出合いをした本とは?

PROFILE

島田順子

千葉県館山生まれ。1966年からフランスに在住。本誌にて「島田順子のフランスの日々、日本の日々。」を好評連載中。待望の新刊『島田順子 おしゃれも生き方もチャーミングな秘密』が、小社より発売。

地図の上で旅をして、夢と希望を持てました

島田順子さんの運命の本は地図帳。初めて船でフランスを訪れたときも、高校時代に使っていた地図帳をトランクに入れて行きました。

「ページをめくりながら、この国にはどんな景色が広がっていて、誰がどう暮らしているんだろう、行ってみたいなと、千葉の南端の小さな町から妄想を膨らませていました。その頃から地図上で旅をするのが好きでしたね」

少女だった頃の50年代は、パスポートは特別な人にしか発給されず、お金もほとんど海外に持ち出せなかった時代。外国は想像もつかないほど遥か遠い場所だったからこそ、世界地図は空想の旅を描く大切な道具でした。

『Britannica Atlas』

「世界地図帳は何冊も持っていたのに、いつの間にかどこかへいってしまって。これは東京の家にある夫のもの。たぶん英国に赴任中に買ったのね。もう消えてしまった国も載っています」

地図帳は夢をくれるもの。ここではないどこかに行けるような、希望が持てるような自由さがあります。眺めているだけで旅をしている気持ちになるし、訪れたことのない土地を覗いてみる感覚です。それから、昔の地図をずっと持っていると、そこに書かれている国が今は消えてしまっていたり、国境線が変わっていたりと、変化している世界情勢を興味深く捉えられる。それも地図を見る醍醐味の一つです」

日本から持ち込んだものはぼろぼろになって紛失してしまい、現在ブーロンマーロットの家の書棚には、フランス版、イギリス版、アメリカ版が並んでいます。地図はインターネットでも簡単に見られるようになりましたが、やはり紙の本がお気に入り。

「今でもすぐ手に取れるところに置いて、夜寝る前によく眺めています」

『Le Monde ATLAS UNIVERSEL』

「こちらはブーロンマーロットの家にあるもの。大型の地図帳だと、行ったことのない国の小さな村まで出ているから、調べやすいのよ。私の地元の館山市もちゃんと載っています」

『ku:nel』2023年1月号掲載
写真/松永学、取材・文/ 綿貫あかね、編集/黒澤弥生

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『クウネル』掲載

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