【私のこれから】ともかく書くことが大好き。 人に喜んでもらえる文章をいつまでも

経済ジャーナリスト  荻原博子

いつも笑顔でストレートに、家計の問題を解説する荻原博子さん。 そのぶれないスタンス、明快な語り口に女性の信頼は厚いのです。

書くことで人のためになればいい

「私、ものを書くことが好きなんです。フリーのライターとして独立して40年、まあ、よくやってきましたよね。でも好きなことだから、長続きしたのかもしれないです」

ピンクのジャケットが鮮やかな荻原博子さんは楽しげに笑います。貯蓄や保険、年金など、誰にとっても切実だけれど、簡単には理解できない家計や経済の問題。荻原さんはそうしたテー マを掘り下げ、多様なメディアで、わかりやすく解説をしてきました。

「でも、私、別に経済が好きだったわけではないんですよ。脚本家やルポライターを目指したこともあったし、書ければなんでもよかったのです」就職氷河期で、 たまたま入れたのが元新聞記者で経済の専門家の事務所。そこでの仕事がその後の活動の原型となりました。

荻原さんが仕事を始めたころは、男女雇用機会均等法の前、女性が、特に結婚した女性が外で働くことは珍しか った時代……。

「それでも、私はフリーでやってきたから、会社勤めの人より軋轢は少なかったと思います。忙しかったけれど、仕事も子育ても楽しんできたし、両立で悩んだこともないんです」

でも60歳を過ぎて、同世代が会社で定年を迎えるころから考え始めました。 年も年だし、これからは、ボランティアをしたり、悩みを電話相談で聞いたり、人のためになることをするべきなのではないか。

どうすれば人の役に立てるだろうかと考える日々。そしてたどり着いた結論は、「やはり本を書いていこうと思ったんです。ボランティアより、書くことで人のためになればいいって。そういう時間の使い方をしたほうが、私らしいって」

書くということは、自分のことを考え、人のこと、そして世の中の仕組みを考えること。ずっと続けてきたことの原点に立って、読んでためになったと、読者に思ってもらえる本や記事を書くこと。そう時間を使って最後までいけたら、なによりも幸せなのだと思い至ったのです。

愛犬の黒柴と毎日の散歩に出かけ、 最近始めた釣りをたまに楽しみながら、 荻原さんの「書くことが喜び」の暮らしはまだまだ続いていきそうです。

『クウネル』2022年3月号掲載
写真/小出和弘、取材・文/船山直子

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