何百年と受け継がれる上菓子の意匠。庶民のおやつにも伝統技法が息づく【京菓子の世界/後編】
上菓子からお饅頭、餅菓子まで。日本文化が詰まった京菓子の世界を銘木師・中川典子さんに教えていただきました。
上菓子屋さん、おまん屋さん、お餅屋さん……それぞれの違いが楽しい【京菓子の世界/前編】からの続きです。
目 次
教えてくれた人
中川典子/なかがわ・のりこ
銘木師、「京都・和菓子の会」主宰
生家は京都で300年近く続く材木商で、 幼少からの和菓子好き。家業を継ぎ銘 木師として活動しつつ、「京都・和菓子の会」を主宰。10月1~6日、新宿髙島屋で開催されるイベント『和菓 子魂』で開幕トークショーに出演。
【 京菓子の意匠 】 上菓子の抽象的な表現と淡い色、 そして何百年と継がれるデザイン。
京菓子は、デザインにも“ならでは”があります。それが色濃く出ているのが、季節を表わす上菓子の意匠。「抽象的であることが非常に大切。たとえば、春を表す蝶。そのものをかたどってあしらうのではなく、真っ白の薯蕷饅頭に、黄の差し色をひとつ入れることで表現することを良しとします」。
琥珀 柚子も、柚子皮の黄色がほんのり透けて見えるところが奥ゆかしく、京都らしい。また、何百年と変わらぬデザインがあるのも魅力です。
有名なところでは、琴や橋をかたどったとされる八つ橋。3本の棹で形作る、入り江を模した洲濱も、屋号は変わりましたが、約370年前の姿形をいまに伝えています。
千本玉寿軒/季節の上生菓子 ひまわり
千本玉寿軒(せんぼんたまじゅけん)
西陣で3代続く上菓子店。「現当主は技巧が素晴らしく、自由度が高い。夏のひまわりの花を、黄色の細かいきんとんで表現しています。隣りの茶寮では、目の前で作った和菓子がいただけます」。(7月中旬販売)508円
住 : 京都市上京区上善寺町96
営 : 8:30~17:00
休 : 水曜
https://sentama.co.jp/
※季節の和菓子のため、販売終了しているものがあります。
すはま屋/洲濱(すはま)
すはま屋
『植村義次』の銘菓を、14代目の元で修業をした女性店主が継承。「お菓子の向こうにある物語がいい。大豆粉と飴、砂糖の菓子なので、コーヒーなど苦みのある飲み物とよく合う」。1本1,000円(2日前までに要予約)
住 : 京都市中京区常真横町193
営 : 10:00~17:30
休 : 日曜、祝、第2・4水曜
永楽屋/琥珀柚子
永楽屋
向田邦子御用達の佃煮でも知られる、甘辛どちらも扱う店の銘菓。「琥珀は、シャリシャリとした歯触りに尽きます。本店は菓子が並ぶガラスケースやお迎え花など、昔ながらの風情が感じられます」。6包12本入 1,200円
本店
住 : 京都市中京区河原町通四条上る東側
営 : 10:00~19:00
休 : 水曜、不定休
https://www.eirakuya.co.jp/store/
【ふだんのおやつ 】いつも変わらぬ定番の甘味にも代々継がれた技法と技術が潜む。
いつ行っても同じ味と姿で迎えてくれる庶民のおやつも名品揃い。『スピノザの診察室』に登場する長五郎餅と矢来餅は、それぞれ北 野天満宮と下鴨神社の門前菓子でもあります。
「今宮神社のあぶり餅もそうですが、お寺や神社と深い結びつきがある菓子は、簡単に看板をおろすわけにもいかないし、味も変えられない。代々技法を継承し、いまも手作りで頑張っています」。
祇園の街を支える職人たちの小腹を満たしてきた『京都 和菓子めぐり』に載るしんこもしかり。「いつも同じ味を再現するのは、とても難しいこと。実は、季節や気候によって、材料の配合や蒸し加減、焼き加減を微妙に変えているんです」
長五郎餅本舗/長五郎餅
長五郎餅本舗
秀吉が北野天満宮で開いた北野大茶会で使われたという400年以上続く菓子。「こしあんを薄い餅皮で包んだだけのシンプルさですが、餅の口あたりが絶妙」。『スピノザの診察室』限定ラッピング(6個入)も。2個入 470円
本店
住 : 京都市上京区一条七本松西
営 : 9:00~17:00
休 : 木曜、ほか不定休あり
https://chogoromochi.co.jp/
祇園饅頭/しんこ(白、にっき、抹茶)
祇園饅頭
南座の隣で江戸時代より続くおまん屋さんの代表銘菓。もち米ではなく、うるち米の粉を使う。「関東のすあまに近い、京都の餅文化の真骨頂ともいえる菓子で、蒸し加減が命。東山にある工場でも販売」。各1本 190円
住 : 京都市東山区中之町196
営 : 10:15~17:00
休 : 不定休
https://gionmanju.com/
ゑびす屋加兵衛/矢来餅(やきもち)
ゑびす屋加兵衛
下鴨神社の門前で営む矢来餅専門店。下鴨神社に伝わる神話にちなんだ菓子で、菓銘もそこに由来。餅に粒あんが入る。「夏も熱々の鉄板で1個1個焼き目をつけて、やわらかな餅に香ばしさを添えています」。1個 190円
住 : 京都市左京区下鴨松原町13
営 : 10:00~18:00
休 : 不定休
『クウネル』2026年9月号掲載
イラスト/平野恵理子、取材・文/齋藤優子
SHARE
『クウネル』NO.140掲載
旅を深める本76冊と歩く、京都。
- 発売日 : 2026年7月17日
- 価格 : 1,080円 (税込)