【インタビュー】タイの人気俳優ミュー・スパシット「私にとって演技をすることは人生をおくること」

タイのTVドラマシリーズ『TharnType/ターン×タイプ』で主役のターン役を演じ、世界中から注目を集めたMew Suppasit(ミュー・スパシット)。俳優はもちろん、モデルや歌手としても活躍するミューの仕事に懸ける思いや、さまざまな学びを続けるライフスタイルについて聞きました。

スカウトと母の後押しで芸能界へ

オーディションに参加を始めた当初は慣れないことばかりで「毎回がドキドキの連続でした」

多くの話題作に出演し、本国のタイのみならず、世界中から熱い視線を注がれている人気俳優ミュー・スパシット。多彩な才能を発揮し、今ではタイエンタメに欠かせない存在ながら、スカウトされるまでは芸能界に入るとは考えていなかったのだそう。

「高校の帰り道にモデル事務所の方にスカウトされたのですが、実は子供の頃は恥ずかしがり屋で……。でもせっかく声をかけてもらったので、CMなどに出演経験のある母に相談してみたところ、"やってみたら?"と後押しされ、トライしてみることにしたんです」

しかし、慣れない演技やセリフ覚え、緊張で表情も固くなってしまい「演技をきちんと学びたい」と思うように。

「大学の工学部に所属していたのでそちらの勉強もやりながら、2年間演技学校へ通いました。その結果、『TharnType/ターン×タイプ』の出演が決まる流れになったんです。両立は大変でしたが、頑張ってよかったと思っています」

探求心で溢れる仕事への思い

ファンミーティングではシティポップも披露し、会場からは大きな歓声が。

俳優のみならず、歌手、モデルと活躍の場を広げるミュー。もともと衣装選びが好きだったこともあり、ファッションに関わる仕事は楽しみの1つなのだそう。

「モデルの仕事はそれぞれの時代の変化、ファッションの変遷を感じられるところが魅力ですね。ブランドのショーに参加したり、ファッションのトレンドの理由が分かること、1年後の流行がどうなるか見えてくることも楽しいです」

歌手活動では、メッセージをダイレクトに届けられることに面白さを感じる反面、ライブではその難しさを実感することも。

「歌は歌詞なのかメロディなのか、アーティストのやり方でメッセージの伝え方が変わるところに魅力があると思います。ただ、大きいライブ会場だと、遠い席のお客さまに音が遅れて届くことや、機材トラブルが起きることも。その解決策をいつも考えてライブに臨んでいます」

撮影ではさまざまなハプニングが悩みのタネ。「演技をする上では、どんな環境も乗り越えなくてはいけないなと感じています」

「俳優としては……モデルも歌手も含めたすべての仕事の問題がここに集中するんですが(笑)。まず俳優業の1番の魅力は、違う人の命を感じられること。その人の考え方が勉強になることもあります。ただ、現代だけでなく、過去や未来などいろいろな環境に生きる人になるために、彼らを取り巻く環境を学ばなければならない、そこにはこだわっています」

話し方から衣装まで「その人がちゃんと生きている」ということを演じながら創り上げていくことに、俳優として何よりの魅力とやりがいを感じているそう。但し、撮影という環境ではさまざまな問題が発生するそうで……。

「例えば、台本が10ページにもわたる長台詞の撮影がビルの屋上で、あまりの暑さや騒音の激しさで集中するのが大変だったり、首の痛みをこらえて演技を続けていたら、蜂に刺されていたなんていうことも。あの時はもうダメだと思いました(笑)」

学び続けるのはスムーズに生きていくため

多岐に渡る活動の傍ら、博士号取得のために大学院へ通い、取り組む仕事の中でも常に学びの姿勢を大切にしている理由とは?

「これからはどんな仕事にもさまざまな知識が必要だと考えているので、学んだことは俳優だけでなく、すべてのシーンで生かしたいです。今は博士号の勉強を一旦やめていますが、落ち着いたら再開予定で、今後はAIを学んだり、仏教的な学びにも興味があるので出家のプランも考え中です。私にとって演技をすることは人生をおくることと同じ。仕事も人生もバランスを取りながら工夫して、どうすればスムーズに生きていかれるかということを大事にするために、これからも勉強を続けていきたいと思っています」

オフがあればゆっくり寝たりドラマを観たり、最近では絵を描くことも始めたそう。「たくさん時間があればいろんな所に出かけたい。それぞれの場所の歴史的なことも知りたいです」

いつか映画という限られた時間の中で役を演じ切りたい

プライベートの充実を仕事に繋げていきたいと語るミューが、これからやりたいことは「映画」。

「ドラマと違って、映画は限られた時間でたくさんのメッセージを伝えなければならないことが条件。それぞれのシーンを大切にしていくことは、難しいながらも良い勉強になるのではないかと思っています」

来日すると毎回行く場所は「秋葉原」なのだとか。他にも名古屋や高山、有馬温泉なども行ったことがあるそう。「前回は関西方面をドライブしました。温泉大好きです(笑)」

今回のインタビューの翌日には、東京でのファンミーティングがスタンバイ。日本のファンの印象を訊ねると……。

「いつも印象的なのは、みなさんが礼儀正しく、マナーが素晴らしいこと。私とのスペースのバランスをきちんととって下さりとても感謝しています。時々、着物を着て公演に来て下さる方がいらっしゃって嬉しいです。とてもかわいいんですよね」

クウネルサロンのみなさんへのメッセージもいただきました。

「クウネルサロンに初めて登場できてとても嬉しいです。今回は4回目のファンミーティングでの来日となりました。今後のタイと日本のエンタメには、もっと楽しいことがたくさんあると思います。私も日本での活動を楽しみにしていますので、これからもよろしくお願いいたします」

Mew / Suppasit Jongcheveevat(ミュー / スパシット・ジョンチーウィーワット)

1991年2月21日生まれ、タイ・ノンタブリー県出身。
カセサート大学で産業工学を専攻し、第一級金メダル取得して卒業後、チュラーロンコーン大学にて産業工学の修士号を取得。(現在は同大学にて産業工学の博士号を取得中)
2017年ドラマシリーズ『I Am Your King』で俳優デビュー。2019年に初の主演ドラマ『TharnType/ターン×タイプ』、2020年~2021年に続編となる『TharnType2 -7 years of love- 』に出演。俳優のほか、歌手やプロデューサーとしても活躍。
公式ファンクラブ:Mew OFFICIAL FAN CLUB in JAPAN
Instagram:@mewsuppasit

撮影/小沼 高、取材・文/松永加奈

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