パリでの3年間の暮らしを経て帰国後、ものを選ぶ側から、作る側に立つ新しいチャレンジをスタートさせたスタイリングディレクター、古牧ゆかりさん。50代になって一歩を踏み出した経緯や、かごバッグへのこだわりについて教えていただきました。
古牧ゆかりさんが、かごバッグのブランド「カーゴ」を始めたというニュースが到着。本業のキャリアを順調に重ねる中で、新たな分野に踏み出したのは?「パリ暮らしの経験や世界を旅した経験も含めて、自分自身のバックグラウンドを生かしたいと思ったのがきっかけ。年齢を重ねるにつれて、その思いが強くなってきたんです」 。
そこで同じく一歩を踏み出したいという思いをもつPR業を営む同年代の友人、林田美香さんと合流することに。 「やりたかったことを実現しようと。それが、好きなかごバッグ作りへと集約していきました」。 目指すは自分たちが心から欲しいと思える、世の中にありそうでないかごバッグです。
かごバッグ本体は王道である天然素材でなく、あえてビニール素材を選択。「ビニールは丈夫で発色もいい。そんなチープシックなかごバッグの楽しさを、大人にもぜひ知ってほしいという思いから。それを大人が満足できる品質に仕上げるには、一から作るしかないという考えに至ったんです」。 しかし、イメージを形にしてくれる工場探しは困難を極めました。「ものづくりに携わるのは初めて。工場に片っ端から問い合わせては、すげなく断られる日々が続きました。林田さんの知人を介して工場を紹介してもらったことで、やっと光明が差してきて。PR歴の長い彼女のネットワークに助けられた形です」 。
いざ、進み始めると「古牧さんはもの作りにかける情熱がすごい」と付き合いの長い林田さんも圧倒されるほどの勢いで、何度もパターンを引き直したり、最適な素材を検討し、本領を発揮。二人の奮闘はときに深夜まで及びました。そして昨年末、構想2年のかごバッグがついに完成。展示会でお披露目すると、軽くてポップなかごバッグは多くの共感を集めました。「50代の挑戦ということでの反響も大きく。でもやはり一人では無理で。同じ志をもつ友人と一緒でこそ夢を形にできたのだと思います」 。
こまきゆかり
スタイリストとして独立後、フランス文化に憧れてパリ暮らしを3年間体験。帰国後雑誌『エル』のファッションエディターを経て、 現在はファッションとインテリアの両分野において、フリーランスのスタイリングディレクターとして活動している。
Instagram: @cargo_basket
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『ku:nel』2020年5月号掲載
写真 玉井俊行 / 取材・文 間中美希子