田舎での自粛生活で増えた、隣人たちとの交流時間。アーティト、仕事仲間のスタイリストにフォトグラファー、お互いに響き合う何かを感じながら、良い距離感を保つことで、充実した日々を送る順子さん。気の合う友達との素敵な関係性を紹介していただきました。
→島田順子さん春の装い。家の中では自分のためのおしゃれを楽しんで。からの続きです。
最初のロックダウン期間中に、順子さんは隣に住む若手アーティストのエロイーズさんと親しくなりました。「私はそれまでパリと行ったり来たりしていたから、村の近所の人とはあまり交流してこなかったんです。でも田舎で自粛生活をしている間に、彼女と言葉をかわすようになったらウマが合って、行き来が始まりました。今ではうちの犬の散歩まで引き受けてくれるようになって。とても助かっています」。
秋の初めには、娘の今日子さんが以前使っていた棟に、一緒に仕事をしているスタイリストのイリアスさんと、若いフォトグラファーのマリリンさんがシェアして住み始めました。「イリアスは本当に優しい人。元は今日子の友達だったのですが、初対面のときにいろいろな話をしたら、すごく通じ合う部分があって。それなら私の仕事を手伝ってと頼んだんです。もう10年くらいになるかしら。それからずっと変わらず付き合いが続いています」。
ロックダウンによって仕事をオンラインに移行する会社が増えた影響で、人が多く騒がしいパリから郊外へと転居する人が後をたたないといいます。 イリアスさんもパリ脱出組。マリリンさんは、村に近いバルビゾンで、若いクリエーターが居住しながら作品を作るレジデンスに住んでいましたが、こちらに引っ越してきました。
「イリアスは『クロワッサン買ってきたけど食べる?』と聞きに来てくれたり、夜に部屋で映画を観ながらうとうとしていたら、小さい声で『夕飯作ったけど…どう?』と言って持ってきてくれたり。それが写真に撮りたいくらいきれいなセッティングでね。マリリンはいい写真を撮るし、とっても可愛い人。野菜のスープを作ってくれたり、 私の好きな音楽を iPhone でキャッチしたらスピーカーにつないで聴かせてくれたりする」と、話します。
「何だかひとりで住んでいる気がしなくて。私はつくづく人との出会いに恵まれているなと実感します。身近に気の合う仲間が増えて、こんな幸せなことがあるのかと思うのよ」。若い隣人たちと良い距離感で付き合えるのは、お互いに響き合う何かを感じるからかもしれない、と順子さん。それを少しずつ発見すると嬉しくなって、さらに親密度が増していきます。
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『ku:nel』2020年3月号掲載
写真 松永学/コーディネート 鈴木ひろこ/取材・文 綿貫あかね