AI時代だからこそ、生きた言葉が心を動かす。俵万智さんと考える言葉の力。【Vol.1言葉をめぐる短歌編】

俵万智さん

歌人の俵万智さんが昨年出版した言葉をめぐる新書『生きる言葉』が大きな反響を呼んでいます。短歌の世界はもちろん、映画や演劇、ラップ音楽の言葉、ネットに氾濫する言葉、AIの出現などなど、多面的な角度から俵さんが考え、深めていった言葉への思い。そんな俵さんに聞く「言葉の力」とは。今回は、俵さんが詠んだ「言葉をめぐる短歌」とともにお話を伺います。

PROFILE

俵万智/たわら・まち

歌人
1962年大阪府生まれ。早稲田大学在学中に佐佐木幸綱氏の影響から短歌を始める。現代歌人協会賞、迢空賞など受賞多数。著書に『アボカドの種』『みんなの短歌』など。

言葉の短歌1

俵万智 『アボカドの種』

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23年に出版された俵さんの歌集『アボカドの種』の最後に掲載された短歌。「お金は残せなくても、親は子に言葉という一生減らない財産を残すことができるんです」と俵さん。

言葉の短歌2

俵万智 『アボカドの種』

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ありふれた「ごめん」と「ありがとう」という言葉。しかしそれを入れ替えただけで、母娘の日々の感情は変化した。心をのせてこそ、言葉は人を動かすのだと俵さんは言う。

言葉の短歌3

俵万智 『未来のサイズ』

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生まれては消えていく新しい言葉や言い回し。セラミックナイフのようなそれを大人が使うときには、若者とはまた違った心構えが求められるかも。切り傷には注意しながら。

言葉の短歌4

俵万智『生きる言葉』

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俵さんの著書『生きる言葉』の最後に掲げられた一首。雨の日も晴れの日も一緒に生きている言葉。同書は「言葉は、世界をともに歩く頼もしい相棒だ。」としめくくられている。


心をのせて使うから言葉は生きてくる。

言葉をめぐる環境はこの数十年で大きな変化を遂げました。直接会ったことがない人とメールだけで友人になる、AIが言語や思考を学習し、その人のキャラクターを反映した文章を代わりに考えてくれる。

「100年前だったら、自分のことをまあまあ知ってくれている周囲の人と顔を合わせて使うのが言葉でした。この人はこういう家のこんな性格の人だとお互いを知っていて、言葉だけがコミュニケーションを担うものではなかったですよね。今は顔を合わせたこともない人とコミュニケーションをするのは普通の話。言葉を使う上では、相当高度な技術を要することをしています。

でもそんな難しいことを日常的に、案外無防備にやっていて、それでいやな思いをしたりする場合も。だからこそ、この言葉でいいのか、この言い方で自分の気持ちが伝わるのかという不安は増しましたし、言葉の大切さをより強く感じているのでは。そんな背景もあって、私の本を多くの方が手に取ってくださったと思います」

上の短歌は言葉をめぐって俵さんが詠んだ多くの歌のいくつか。

2番めの短歌は、サポートしている高齢の母親が、俵さんが手助けをすると、「ごめん」「ごめん」と繰り返したときに生まれました。「何かするたびに『ごめん』と謝られるのがストレスで。母に『ごめん』の代わりに『ありがとう』って言ってほしい、と提案したんです。そうしたら母も『ありがとう』のほうがよかったようで。ありふれた言葉だけれど、使う言葉を変えたことでお互いにいい気分になれました。言葉ってそんな力があるんですね」

動画が公開中です!

『クウネル』2026年7月号掲載
写真/目黒智子、ヘア&メイク/内藤茉邑、取材・文/船山直子

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『クウネル』NO.139掲載

これからを生きるための「言葉の力」。

  • 発売日 : 2026年5月20日
  • 価格 : 1,080円 (税込)

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