暮らしを循環させ、自分らしく楽しく生きるー生活庭園研究家・四井千里さん【住まいと暮らしvol.67】

部屋やごはん、お気に入りの道具たちを本人撮影の写真で見せていただき、バトンを繋いでいくリレー連載。前回の遠藤千恵さんのバトンを受けてご登場いただくのは、生活庭園研究家の四井千里さんです。

四井さんの暮らしのルール

1)目の前のことにひとつひとつ丁寧に向き合う
2)みんなが心地よく暮らすことを大切に
3)日々の暮らしの所作や言動を美しく

八ヶ岳南麓に移住し、持続可能な暮らしのための「生活実験」をしているという四井さん。家族4人、猫、犬、ヤギ、鶏8匹と共に暮らしながら、夫婦でオンライン講座「未来の暮らし研究所」などを通じて、発信をしています。

「大学を卒業後、“自分らしく生きたい”という気持ちが芽生え、図書館でパーマカルチャーの本を見つけて“これだ!"と思いました。地に足をつけた農的な暮らし、しかもパーマカルチャーの仕組みを取り入れた、循環、持続する暮らしがしたいと強く思ったんです」

菜園仕事をするときは、甲斐犬のすみれを連れて。「おいしい空気と太陽の光のもとで気持ちよさそうです」

普段から味噌や醤油などの基本調味料や、ジャムや漬けものなどの保存食づくりをするほか、菜園の作業ができなくなる冬は、ドライフラワーのアレンジメントを楽しんでいるという四井さん。

「フラワーシロップ、蒸留、染めものなどもします。12月に入り、たくあんや青菜の漬物の仕込みが終わるとシュトーレン作りも。無農薬の柑橘類の皮で作っておいたピールで、心待ちにしてくれている方々の顔を思い浮かべながら準備。ラッピングを考えている時間も楽しいです。

また暖かな薪ストーブの部屋で一年を振り返りながら、自分で育てた花でアレンジメントを作る時間も、本当に楽しくて幸せ。また春から、この美しさのために頑張ろうと思えます」

春に種をまき、育ててきたお花は摘んで、ドライフラワーに。

インテリアは日本の文化が無意識に感じられるよう、こだわっているという四井さん。

「在来工法の家に西洋文化や現代のものを取り入れたインテリアに。プラスチック製品ではなく、天然素材を選ぶようにしています。

これまでじっくり暮らしに向き合って経験を積み、インプットに集中してきたので、これからはアウトプットをできるようにしていきたいです」

シュトーレンは、ピールも自家製。自宅周りで集めた素材でラッピングしてプレゼントするそう。

広葉樹に囲まれたご自宅。「夏は葉が茂り日かげを作ってくれて、冬には葉が落ち、リビングの大きな窓に優しい西陽が差し込み、とても気持ちが良いです」

四井さんが「魔女戸棚」と呼ぶ棚には、菜園で採取したハーブとチンキ、精油、フラワーエッセンスなどがいっぱい。

菜園で育てている芍薬は、満開になる前に摘み取って花瓶に活けて。「甘い香りのゴージャスな花で、リビングが一瞬で華やかになります。毎年芍薬を花瓶いっぱいに活けたくて、わが家の堆肥をたっぷりあげてお世話しています」

自家製ピールをたっぷり使って焼いたケーキ。「菜園仕事が忙しくなるとケーキ作りから遠ざかってしまうのですが、組み合わせを思いつくと焼きたくなってしまいます。わが家のニワトリが卵を産んでくれたときは、その卵を使って。冬は薪ストーブのオーブンで焼くので、よりおいしいケーキが焼きあがります」

暮らしの作業の合間に、自家製ケーキとおいしいお気に入りの紅茶、菜園から摘んできた花を飾ってお茶の時間を楽しむそう。「五感すべてが満足するお茶会を来年は開催したいと思っています」

ひらめきからジャムやお菓子を作ることが多いという四井さん。「夏の間に収穫してすぐに冷凍しておいたブルーベリーとルバーブをかけ合わせたら、色も美しく、おいしくなりそうと思って。ハーブで香りをつけたジャムができあがりました」

バラの花びらで起こした酵母で焼いたというパン。「酵母のブクブクしている様子を見ると、命を感じてワクワクします。パンを口に入れると、ほのかにバラの香りがして感動しました」

たくあんを漬けを作るために、真夏の最中にタネをまいて育てた大根。「4ヶ月かけて育った大根を1本ずつ抜いて、洗って軒下に吊るして干しているところ。太陽の光に当たったこの暮らしの景色が好きです」

摘みたてのブラックベリーとブルーベリー、ピンクレモネード。「何を作ろうかなとワクワクしながら、一粒一粒丁寧に摘み取ります」

雪が降った日に、真っ白な雪の上に、植物染めをした靴下を並べて。「美しい青色に染まる藍の生葉染めは、その時期にしか染められない色。ほかのものは保存してき、冬にゆっくりと染めます。明るく鮮やかな色に染まる植物を探すのもとても楽しい」

野菜メインに果樹や花、ハーブを育てている四井さん。「オルレアの白い花々に、黄色いバラのゴールデンボーダー。フラワーガーデン風な景色にも一瞬出会えて嬉しい」

冬の時期が長い八ヶ岳。「まだ緑の葉が出る前に、このすみれが咲き出すと、私にとって春の訪れになります。茶色の土の上に紫色のすみれを見つけると嬉しいし、すみれの摘みとりが私の植物との暮らしのスタートに。今年はどんな植物と楽しもうかなとワクワクします」

ノリウツギがうっすらピンク色に色付いてきた頃。「草と、食べているヤギのユキちゃんの白。ノリウツギの白色、ピンク色のコントラストがきれいです」

profile

千里/よついちさと

生活庭園研究家。東京に生まれ、農的暮らしに憧れて八ヶ岳へ移住。パーマカルチャーデザイナーの夫、息子2人、黒猫、甲斐犬、ヤギ、鶏8羽とともに、堆肥を作り、土を作り、菜園で植物を育て、循環する暮らしを20年実践している。命の巡る菜園で育てた植物は、日々の暮らしに活用。「循環する暮らしのなかで、自分らしく楽しく、幸せに生きる」を研究している。

オンライン講座『未来の暮らし研究室
Instagram@chisatoyotsui

四井さんがバトンを渡すのは、メイクアップアーティストの早坂香須子さん。「今年長野の森に移住した香須子さん。細部までこだわった家とインテリアで、本当に美しい暮らしをされています」と四井さん。早坂さんの暮らしは、1月中旬に公開予定です。どうぞお楽しみに。

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