パスタが好きで、好きで、大好き、という料理家のコウケンテツさん。 そんなコウさんに、数あるレシピの中から、トマト缶を使って家庭でも手軽に作れるパスタ料理を3つ教えてもらいました。クリーム&オイルベース編、4つの極意編と合わせてご覧ください。
「パスタ楽しいなあ〜!」。
調理中、コウさんの口から思わず飛び出た言葉です。1カ月前にできたばかり、新居のキッチンでのパスタ作りは今日が初めて。
広い作業スペースの機動性を堪能するかのように、パスタを作ります。 「学生のころパスタ店でバイトしていたんです。接客担当でしたが、暇さえあればキッチンに入って、 シェフの動きを見ていましたね。塩加減はゆで汁で調節する、麺は早めに湯からあげてソースと一緒に煮込む。パスタ作りで大事なことをそのときに多く教わりました」
まずは「粗びきボロネーゼのタリアテッレ」を作ります。
「ぜひ、牛肉は自分でたたいて粗びき状にしてみてください。そのほうが肉の味が濃く、旨味を存分に楽しめますよ。ひき肉は、最初はハンバーグのように塊にして焼きつけることで、おいしさを閉じ込めます。最後にバターやオリーブオイルを加えて、さらに味に奥行きを出します」。
~粗びきボロネーゼのタリアテッレ~
【材料】(2人分)
タリアテッレ…160g
牛肉(切り落とし)…200g
セロリのみじん切り…1/3本分
玉ねぎのみじん切り…1/4個分
にんじんのみじん切り…1/2本分
にんにくのみじん切り…1かけ分
赤ワイン…1/4カップ
トマト缶(ホールトマト)…1/2缶
ローリエ…1枚
砂糖…大さじ1/2
パルメザンチーズのすりおろし… 適量
バター…10g
オリーブオイル…適量
塩、粗びき黒こしょう…各適量
【作り方】
1)牛肉は包丁で粗くたたいて粗びき状にし、軽く塩、こしょうをする。
2)熱したフライパンにオリーブオイル大さじ1を入れ、野菜とにんにくを加えてしんなりするまで炒める。1の肉を加えて一つにまとめて両面を焼きつける。
3)赤ワインを加えて強火で水分とアルコールをとばす。手でつぶしたホールトマト、ローリエ、砂糖、水1カップ(分量外)を加える。煮立ったら肉のかたまりをほぐして弱めの中火で15分ほど煮詰める。
4)鍋に湯をわかして塩を入れ(1.5ℓに塩大さじ1の割合)、タリアテッレをゆで始める。
5)3のフライパンにゆで汁をおたま1 杯分加えて煮詰める。
6)目安のゆで時間より2 分早くゆで上げたタリアテッレを、5に加えて1 分ほど炒め全体をよく混ぜる。パルメザンチーズ、バター、オリーブオイルを加えてからめ器に盛る。さらにパルメザンチーズをたっぷり散らす。
次に作るのは、鯖とトマト・オリーブのリングイーネです。
「トルコを旅したときによく食べた、トマトソース味の青魚料理からヒントを得たレシピです。鯖はアンチョビのようなイメージで使います。トマトソースは、ほんのちょっと砂糖を加えることで、酸味の角がとれてぐっとまろやかな味になるんですよ」。
~鯖とトマト・オリーブのリングイーネ~
【材料】(2人分)
リングイーネ… 160g
鯖の切り身…半身
トマト缶(ホールトマト)… 1缶
オリーブの実(種なし)…12~13個
ケイパー…大さじ1
にんにくのみじん切り…1かけ分
オリーブオイル…大さじ3
赤唐辛子…4~5本
砂糖…大さじ1/2
イタリアンパセリ…適量
塩、粗びき黒こしょう…各適量
【作り方】
1)鯖は小骨を取り、2㎝幅くらいに切って、塩、こしょうをする。ケイパ ー、オリーブの実はそれぞれ粗く刻む。
2)フライパンにオリーブオイルを入れ、 にんにくを弱火でじっくり熱する。香りがたってきたら、赤唐辛子、鯖を加えてさっと炒め、手でつぶしたホールトマト、ケイパー、オリーブの実、砂糖を加えてとろみがつくまで煮詰める。
3)鍋に湯をわかして塩を入れ(1.5ℓに塩大さじ1の割合)、リングイーネをゆで始める。
4)2にゆで汁をおたま1 杯分加える。リングイーネを目安のゆで時間より 2 分短めにゆで上げたら、2に加えて 1 分ほど炒めて全体をよく混ぜる。
5)器に盛り、刻んだイタリアンパセリ、粗びき黒こしょうをふる。
最後は、玉ねぎのポモドーロ。にんにくをあえて使わず、炒めた玉ねぎでコクを出し、トマトの風味を楽しむひと皿です。トマト缶だけでなく、プトマトを入れることで甘味も加わり、シンプルな材料で驚くほど味わい深いソースに仕上がるのです。
~玉ねぎのポモドーロ~
【材料】(2人分)
スパゲティー…160g
玉ねぎのみじん切り…1/4個分
トマト缶(ホールトマト)…1/2缶
プチトマト…8個
砂糖…小さじ1
オリーブオイル…大さじ3
塩、粗びき黒こしょう…各適量
【作り方】
1)熱したフライパンにオリーブオイル大さじ1を入れ、プチトマトをさっと焼きつけて、取り出す。
2)同じフライパンに残りのオリーブオイル、玉ねぎを入れ、手でつぶしたホ ールトマト、砂糖を加えて半量になるくらいまで中火で煮詰める。
3)鍋に湯をわかして塩を入れ(1.5ℓに塩大さじ1の割合)、スパゲティーをゆで始める。
4)2のフライパンにゆで汁をおたま 1 杯分加えて煮詰める。
5)目安のゆで時間より2分早くゆで上げたスパゲティーを加えて、1分ほ ど炒め全体をよく混ぜ、器に盛り、粗びき黒こしょうをふる。
コウケンテツ
雑誌、TVなど多くのメディアで活躍する料理家。韓国料理はもとより、和洋中、オールジャンルをこなし著作も多数。二児の父で、食育活動にも力を注ぐ。インスタグラム: @kohkentetsu
『ku:nel』2016年5月号掲載
料理・スタイリング コウケンテツ/写真 小出和弘/文 鈴木麻子