【50代の挑戦。後編】毎日がまさにライブ。老若男女、誰からも愛される料理を目指して。

具体的なイメージを持って、周囲の人に助けられながら、洋食店のオープンに向けて準備を進めたという坂田さん。料理家として自分の味を研究してきてよかったと実感し、毎日ワクワクを味わいながら働くお店での様子をご紹介します。

自ら飲食店を開くことなど、夢にも思っていなかったという坂田さん。でも、もし自分が小さな店を持つなら絶対に洋食店で、具体的なイメージもはっきりしていたといいます。「子どもの頃から家族で通っている洋食屋さんがありました。とにかく洋食が大好き。私にとっての洋食は、そのお店と母の手料理の味です。洋食屋さんがすごいと思うのは、老若男女の誰からも愛される料理であり、それがずっと変わらずにあること。そして、ご く普通の材料で作っているのに、手間と時間をかけて工夫をすることで、いくらでもおいしさを極められること。 そんな洋食店を、下町ではなく都心の街角に開く。誠実に作れば、きっとわかってもらえるのではないかと」 。

まっさらな白木のカウンターは栗。「最初、天ぷら屋さんにしか見えなくて」と坂田さんは笑うが、白を基調にしたシンプルでモダンな雰囲気が、 代官山のこの場所っぽいと評判だそう。

迷いはなかったものの、店を作るのは初めてで、さすがにわからないことだらけ。そんなとき、助けてくれたのが周囲の先輩や友人たちでした。「この年齢にもなれば、皆さん専門分野で活躍している方々なので、的確な助言をたくさん頂きました。ありがたかったですね。オープンして数カ月ですが、本当にやってよかったと思っています。今まで20年以上料理家として自分の味を研究してきましたが、そのことを、これでよかったんだ、これがやりたくてずっと料理をやってきたんだな、と思えました。毎日いろいろなお客様がいらして、日々まさにライブ。 この歳になって、こんなに毎日ワクワクを味わえるとは、考えてもみなかったですね」 。

左から山梨の「駒園ヴィンヤード」、新潟の「胎内高原ワイナリー」、 長野の「ファンキー・シャトー」ほか、ワインはすべて日本産。
実は口笛が得意な坂田さん。「“口笛を吹きながら人生を疾走する” という友人のモットーが、今回の私の挑戦にぴったりかな」と店名に。
猫好きの坂田さん。店内の棚に、フランスの蚤の市で購入した猫型の鍵をディスプレイ。自宅で留守番をしている愛猫ビスコの代わり?
床に並べられた陶板は、開店祝いに友人からプレゼントされたもの。「今の自分にぴったりなフランス語が刻まれているんです」
週末に不定期でデモンストレーション形式の料理教室も開催。「料理家ならではのイベントも仕掛けていきたいですね」と意欲満々。
「男性が早い時間に1人でふらっと夕食を食べにいらっしゃるのが私の理想」。坂田さんが思い描いた通りの常連客、後藤陽次郎さんと。
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『ku:nel』2020年5月号掲載

写真 太田隆生 / 取材・文 和田紀子 / 編集 友永文博

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