経験ゼロから始めたケータリング業。「お金は少しでも、知恵と工夫でなんとでも」

伊藤千桃さん お弁当

葉山の山の上で貸し切りレストランとケータリング業を営む伊藤千桃さん。「私にできることはなにかしら?」と経験も知識もゼロから十数年前に始めました。いまでは娘さんと二人三脚でおいしいごはんをつくり、デリバリーしています。

『桃花源(とうかげん)』の屋号で、自宅を拠点にケータリングや、B&Bを営む伊藤千桃さん。その始まりは、かなり手探りなようでした。

「40代後半で離婚したとき、長女は高校一年生でした。私はその時、仕事をしていなくて、周囲には『どうやって子ども二人を養うの?』とすごく心配されましたね。でも、私自身はそんなに心配していなくて……。『どうにかなるでしょ』と思っていました」

今の自分に「何ができるか?」と考えた千桃さん。周りを見渡し、自分の強みは亡き養母から受け継いだ、豊かな自然に囲まれた家ではないかと思い至り、この家で何かを始めようと決意しました。

取材の日、撮影スタッフ用にと『桃花源』のお弁当を頼んだ。

近くの漁港で買った魚のフライに、旬野菜のマリネなど、季節のおいしさが詰まっている。

自家製山椒の実とちりめんじゃこのおむすび。

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「料理も好きだったこともあり、山の上の家のレストランを始めたんです。しばらくひとりで切り盛りしていて、それなりに成り立っていたのですが、やはり大変な部分もあって……。こんな田舎で一日数組のお客様だけでやっていて、そんなに高いお料理を出すわけではないし、これじゃ採算が合わないわねとなったんです」

結婚して家を出ていた娘さんが、離婚をして戻ってくるタイミングで、まだ日本では黎明期だった民泊を始め、料理の方はケータリングへとシフトしました。

「葉山、逗子、鎌倉、三浦、横須賀地域限定ですが、テレビや映画の撮影のお弁当などを配達しています。あとはご近所の方から、『ホームパーティをするからいくらくらいの予算でお料理をつくって』とかのご依頼があったり」

千桃さんの庭でとれた野菜や果実、野草を使ったお料理は、見た目も味もバラエティに富んでいて、旬のおいしさがふんだんに盛り込まれています。素材の味を生かした料理は、食べ終わった後に心と体が満たされる健康的な力を宿しています。

庭で採れた野草や果実は干したり漬けたりして、日々の食卓で活用。

庭のビワの葉を干してお茶に。

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「お金は、たくさんはないけれど、なければないで何とかなるものだし、その分、頭と手を使って工夫するのが楽しいんです」

いまある幸せに感謝し、あるものを最大限に活かすことを考え、心を込めて手を動かす。千桃さんのモットー「贅をつくさず、精をつくす」の精神に学ぶことは多くあります。

●伊藤千桃さんの記事、ほかにもいろいろ
ぶれない心。「元ミス日本」マダム・伊藤千桃さんが辿った数奇な運命ストーリー。~日本の母編~
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千桃さん山の上の台所から。長年作り続けた十八番・アップルパイレシピ。

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