この夏、世界中から注目を浴びたパリ。パリは「アムール(愛)」の街とも言われています。「愛に生きる」フランス人についてフランスで6年暮らしたライターの松永加奈さんのレポートをお届けします。
※記事の初出は2021年。内容は執筆時の状況です。
感情表現が豊か(ストレート)なフランス人。笑ったり泣いたり怒ったり、街の中はいつも賑やかです。そして、それは愛情表現も同じ。「Amour(アムール=愛)」の国と呼ばれているフランスは、常にアムールにアグレッシブ。道の真ん中で、スーパーの棚の前で、いきなり激しいラブシーンが繰り広げられることは日常茶飯事。「耐え忍ぶ愛」なんてどこ吹く風、老若男女問わず、愛に向けて猪突猛進です。
フランスで暮らしていると、周りの人々の離婚や再婚、カップルのくっ付いたり離れたりの多さに驚きます。同性または異性のPACS(事実婚)が認められていることもあり「今は●人目のパートナーとPACSしている」という話もよくあること。もちろん、長年連れ添った相手とお別れしたら、その思い出を胸に生きて行く…という人もいますが、それは重要なことではない様子。例えば、夫を亡くした友人の義母。とても落ち込んでいたので、家族みんなで励まし、盛り立てていましたが、彼女にとっては家族の愛情だけでは全然足りず、70歳にして自らマッチングサイトデビュー。そこで5つ年上の男性と出会い、恋に落ち、パリとベルギーでの遠距離恋愛を成就させ、見る見るうちに元気を取り戻したんだとか。友人曰く「ママは根っからのフランス女だからねえ」とのこと。パートナーがあってこそ輝く自分、そこに年齢や国境は関係ない…うーん、やるなあ、フランス女!
婚姻関係があったりパートナーがいながら、他に好きな人ができた場合は「新しい恋を見つけてしまった」と表現するフランス人。言われた方はたまったもんじゃありませんが、そうなったら悔しさをエネルギーに変えて、自分も恋人探し。恋愛なんてもうコリゴリ…と、とりあえず仕事に打ち込む人も。いずれにせよ男女問わず「いつまでも1人寂しくいるとは思わないで」とばかりに、次のステージへ切り替えるところが「逞しいなあ」と思います(もちろんそういう人ばかりではありませんが)。
ちなみに出会いの場はさまざま。最近は先のマダムのような「マッチングサイト」の利用が多いそうで、この手のサイトは4~5年前に急激に増え、当時、メトロ構内にも特大の広告がよく出ていました。ひと昔前は街やバー、公園などで熱心に声がけしたり、友達に紹介してもらっていた若者たちも、今ではサイトからリアルな恋愛に発展するパターンが珍しくないようです。
フランスでも「自分から強く押せないんだ」という内気なタイプの人は当然いて、全員が恋愛に関してアグレッシブというわけではありません。生涯パートナーは1人だけというカップルもいます。ただ、何はなくとも個人主義で自己主張するのが重要なこの国。溢れ出る情熱にフタなどせず、自分の思いのままに人々は突っ走っています。
●松永加奈さんのフランスカルチャーレポート
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