【松永加奈のフランス便り25】「流行の先端」パリには流行はないって本当?

松永加奈さん 25 流行

ファッションの都・パリ。私たちがおしゃれの手本とし、「流行の先端」と思っているはずの街ですが、なんと、そこには「流行なんてない!」という松永さん。一体どういうことなのでしょうか?

新しい年がスタートしました。今年はどんな年になるのでしょうか?1年の幕開けは「今年のトレンド予想」が取り上げられる時期でもありますね。流行(ファッション)の発信地と呼ばれるパリに住んでいると、日本の友人たちから「今なにが流行っているの?」とよく訊かれます。私も渡仏するまで、「パリの流行って何だろう?」と気になっていました。さて、実際に移住してみると…。

服や髪型はもちろん、背筋を伸ばして歩く姿も圧倒的にかっこいいマダム。「流行りではなくこれが私の着こなし」と背中で語られている気がしました。

半袖の人、セーターにマフラーの人、ファーを羽織る人…自分が着たいものを着るのがフランス人流。ちなみに「これ素敵ね!」と見知らぬ人が突然声をかけてくれることもあります。

夏になると出回るてろんとしたワンピース。「涼しい」「すぐ乾く」という理由で着る人が一気に増えるので、バカンスシーズンだけは同じような格好の人が続出。

流行りのデザインではなく、サイズ感とトータルバランス重視のパリジェンヌ。ブランドバッグよりもポイントになるトートバッグ派が多いです。

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当時「少しでも馴染むようパリジェンヌをお手本にしよう」と街の中を見渡すと、人々のファッションはばらばら。洋服もバッグもヘアスタイルも人それぞれ。そこにはぱっと見て「ああ、これが流行りなんだな」と分かるものは1つもなかったのです。フランス人に訊ねても「今のトレンド?」「さあ、あるのかしら?分からないわ」と言われる始末。みんなが持っている最先端があるはず!と勢い込んでいた私はびっくり。パリには流行がない…。でも、この街で暮らしているうちに、人々が何をベースに物を選び、自分を構成しているのか少しずつ分かって来ました。

フランス人は自分の信念、こだわりを何より大切にします。それは発言しかり、ライフスタイルしかり。会話でも「同調」より「議論」が大好きで、求められるのも常に「自身の意見」。結果、「なるほどね」と互いに尊重はするものの、それはそれでおしまい。人は人、自分は自分なのです。ファッションも同様で「人と同じ」を良しとせず、色やデザイン、機能性など「私にはこれが合う」と選んだものを、自信を持って身に付けています。そこに「他人の目を気にする」という感覚はありません(事実、誰も気にしていませんが)。新しいものが話題になっても、本当に好きで自分に合うものかが重要なので、それが一大旋風にはならないのです。

ファッションウィークには世界中からファッショニスタやセレブが大集合。「あーここパリなんだなあ」と感じるシーズンでもあります。

全身赤、全身白、というマダムも結構な頻度で見かけます。ご本人は好きだから着ているので(そして似合う)、目立つ目立たないは関係ないのです。

某デパートのオープニングイベント。出席者は周りの装いは気にせず、カクテルドレスからパンツスタイルまでさまざま。本当にフリースタイルです。

カフェに居合わせた仕事中の女性。洗練されたスタイルが素敵で、友人たちと思わずため息。誰にも似ていないかっこよさ、身に付けたいものです…。

色使いにはコンサバな人が多く、黒、白、グレー、ネイビーといったベーシックカラーが定番。

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そんなフランス人が何かをお手本とするなら「尊敬する生き方、考え方」を持つ人。セレブリティであれ身近な人であれ、その人が歩んできた人生と、磨かれてきたセンスに憧れて「私もこんな人になりたい」と人物像を目標にする人が多いように感じます。そしてそれは、同じ物を身に付けるだけで叶うことではないと分かっているので(何といっても本人もポリシーが強いので)、憧れの人のファッションであっても、安易に真似しないのだと思います。

街を歩いていると時々、はっとするほど素敵でかっこいい、フランス人でさえちょっと振り向くようなマダムとすれ違うことがあります。彼女たちはただおしゃれなだけでなく、色んなもの手にしたり捨てたりしながら生きて来たのだろうと感じさせる独自の雰囲気と、オリジナリティをまとっていて…あ、そうか、これが流行を発信する側の貫禄、流行りは追わない真のパリジェンヌの姿かもしれません。プライド、こだわり、人生観…パリ6年生になった私ですが、やはりまだまだ未熟者。パリジェンヌへの道は長く険しそうです。

編集部注:写真はコロナ禍前のものも含みます。

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