【松永加奈のフランス便り29】「フランス人は10着しか服を持たない」は本当?

松永加奈 服

数年前に日本でベストセラーになった『フランス人は10着しか服を持たない』。本当に気に入ったものを少し持つというミニマルなライフスタイルの先駆けともなりました。印象的なタイトルですが、本当にフランス人は10着しか服を持たないの?在パリの松永加奈さんが検証します。

数年前のベストセラー『フランス人は10着しか服を持たない』。当の本の内容は、とあるフランスマダムのライフスタイルや価値観の紹介で「手持ちの服が本当に10着のみ」という話ではありませんが、インパクトのあるタイトルに衝撃を受けた方も多いのではないでしょうか。もちろん、私もその一人。「フランス人て、なんてミニマリストなの!」と思っていました、パリに来るまでは…。

以前ご紹介したように、パリには流行という括りがなく、ファッションに対してみんな自由で人の目を気にしません。だから、いつ会っても同じ(ような)服を着ている人が多いのも事実です。でも、人気ショップは常に賑わい、セールは大盛況。鏡の前でカゴいっぱいのセール品をとっかえひっかえ試しているマダムもよく見かけます。「クローゼットが足りなくて買い足した」とか「タグが付いたままの新品の服が山積み」という話も聞くし、私が知る人たちのクローゼットはぎゅうぎゅう詰め…あれ、「10着だけ」のイメージと違うような? 結局のところ、洋服やショッピング好きな人のクローゼットがぱんぱんなことは、日本もフランスも変わりないようです。

物価が高いといわれるパリでみんなが待ちに待っているセール。街ではショッパーをいっぱい提げた人たちが行き交います。フランス人だって10着以上服を持つんです。

セール期間中に試着室が混みあうと、店内の隅でどんどん試着するマダムが登場します。下着姿もお構いなし(もちろんトップスですが)、フランスマダムのお買い得品に賭ける情熱はすごいのです。

以前友人たちと参加したフリマでは、値切り倒してごっそり買って行くマダムから、1€のセーターも吟味するおしゃれなマドモワゼルまでさまざま。「フランス人のこだわり」が垣間見えました。

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ただ、パリでは「10着志向」のような、コンパクトな生活をせざるをえない住宅事情があります。パリの一般的なアパートは収納がとても少なくて、クローゼットは寝室に1つだけ、あとは吊り棚のみということも珍しくありません。基本的にウォークインクローゼットは無し、地下にカーブ(物置)が無い場合も多いので、収納を増やすならクローゼットを買うか、持ち家ならリノベーションするか、どちらにしても後付け。しかもアパート自体が古く、広さやら構造やら雰囲気やらが関わってきて「あー、だったら物を減らす!」となる(人もいる)わけです。また、フランス人はこだわりとプライドが”強め”なので、洋服もインテリアも「お気に入りのものだけで暮らしたい」と思う人も少なくありません。DIYで素敵に整えた無駄なものがない部屋は、フランス人のご自慢です。ということで「フランス人は10着しか服を持たない、ということはない」。つまりどの国も同じ、人それぞれなのでした。

家探しをしたときの1軒。2LDKの家のクローゼットは寝室のこの1つだけ。他のアパートも似たような感じで、あるとしてももう1つくらい。

ある都心の1DKのアパートの収納は、写真上部の天袋のみ。でも不動産屋さんは「あそこにたっぷり入りますよ!」と自信満々でした…。

パリのアパートは一見同じですが、リノベしてあるので間取りはそれぞれ。ちなみに我が家はクローゼットと小さいウォークインクローゼットのみで、日本から持ってきた”隙間家具”が大活躍。

街角にある回収ボックス。洗濯済みの洋服、布類、靴(両方揃っているもの)、革製品などを入れることができます。

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実はフランスには「断捨離」をしやすい環境が整っています。粗大ごみは申告すれば無料回収、街には洋服などのリサイクル用ポストがあり、スタッフが定期的に回収に来るというアパートも。使える家電はリユース、古着は寄付されたり資材になったりと有効活用されています。ただ捨てるわけではないので心も痛みにくい…とはいえ、やはり大事なのは普段からの心がけ。かわいい!素敵!と思ったものについ飛びついてしまう、ミニマリストには程遠い自分…。でもね、フランスには心踊るものがいっぱいあるから仕方ないんです!と、この場をお借りして言い訳しておきます。

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