長くフランスに住んでいても「私は心底日本人」という島田順子さん。ずっと接して来たフランスの人々の興味深い点を、順子さんの視点で見てみると、まず思い浮かぶのはアイデアで暮らしを楽しみ、幸せを見つけようとする姿勢です。

「1970年代のオイルショックで、日本と同じくフランスも経済危機に陥りました。そのときパリの街角のポスターに〝我々フランス、お金はないけれどアイデアがある〟と書いてあったんです。それを見て『まさにこれよね』と感動しました。フランス人はアイデア次第で幸福になれると信じている人たちです」

たとえ友達と外食するお金がなくても、家に招いてできる範囲のご馳走を作り、キャンドルを灯すなど知恵を絞った素敵なテーブルセッティングでもてなす。

「そこに心が感じられれば、立派な食事会でなくていい。招かれた側にとって他の人にできないことをしてくれるのは、それだけですごく嬉しいことでしょ？」

誰かの真似をせず、自分のひらめきで日々を楽しく演出する。アイデアを持っている人を尊敬する社会です。

「私は父がそういう性質だったのもあり、幼いときから工夫する癖がついていましたから、パリではお金をかけずに工夫して生活を楽しみました。その点ではフランス人と同じタイプ。共感できますね」