リタイア後の人生、どんな暮らしを思い描いていますか?「こうしたい、やっぱりあれもしてみたい」。考え出すと止まりません。時間の流れが今までよりもきっとゆっくりしているように感じるのでしょうね。Parisインテリア探訪シリーズの最後は夫婦ともにリタイア、シャンタル・ルクレール=ガルニエールさんの素敵なインテリアたちをお届けします。
夫婦ともにリタイヤ生活。シャンタル・ルクレール=ガルニエールさんは、子供2人が独立し、ご自身は大好きなインテリアの仕事をこの秋に卒業しました。「最近、大好きな刺繍や編み物をするために椅子を購入したんです。天気がいい日は窓辺に移動させて外を眺め、明るい日差しの下で作業できるのでとても重宝しています」
今年になり、当たり前にできていた観劇や映画鑑賞帰りの友人との語らいなどが一瞬でできなくなり、その生活の変化に最初は戸惑いを感じました。
「でもすぐに自分たちのリズムを取り戻し、毎朝30分ジョギング、午前中に20分のヨガをすることをルーティーンにし、生活を整えられました」食材や日用品の買い物には夫とでかけ、料理を一緒に作る楽しみも。
「今は夫婦揃って自由な時間がたくさんあります。時間がなくて見逃していた映画を観ることができるのが喜び。『ロスト・イン・トランスレーション』や『となりのトトロ』は、大好きで何度も繰り返し観ている作品です」
この家は、長男が1歳のとき、独立した子供部屋が必要だと探し、出合ったアパルトマンです。「6階で見晴らしや風通しがとてもよく、家の両サイドから朝日と夕日が眺夫められるのが、この家に決めた理由」それから33年。すでに必要なものは所有し、いつの間にかものにあふれた生活を送っていると気づき、ロックダウンを機に、家の中を整理しました。
「あらためてこれは本当に必要かどうか選択する時間でした。きちんとものに向き合うと、不要なものや同じような道具に気づき、暮らしの無駄が見えてきたんです。そしてもっとシンプルな暮らしを心がけたいと思いました」。大好きなアート作品や散歩の途中に見つけた木の枝や葉。海で拾った貝殻や自然のオブジェなど、心に潤いをあたえてくれる美しいものに囲まれ、シンプルながら、豊かに暮らしたいと思うようになったのです。
夫婦ふたりなので、それぞれの書斎と作業スペースを持ち、お互いが自由に過ごせるようにしましたと、シャンタルさん。インテリアは、パリの人気ブランド、カラヴァンのソファに自作のクッションを飾ったり、床にはモロッコから持ち帰ったアンティークのラグを敷くなど、時代や背景の違う家具や雑貨のミックススタイル。
「夏は白の麻やコットン、秋はベージュやマロンカラーのベルベットやウールで温かみと、ファブリックで色と質感を変え、季節を演出しています。高額な作家のアートより、生活の中で出合う自然のオブジェが好きなので、そういうものを持ち帰り、アレンジして飾ったり、インテリアのスパイスに使っています」。そう話すシャンタルさんの周りには穏やかな空気、そしてゆったりした時間が流れている感じ。
少しの工夫を加えて、
自分たちだけの棲家を。
そして今後の暮らしの展望は?
「フランス南西部にあるシャラント=マリティムにバカンス用の家を持ちたいと計画中。そこは私が子供の頃住んでいたエリアで、気候が安定していて過ごしやすいんです。理想は天井が高くて窓が大きな家。そこで編み物や読書をし、朝夕は夫と海辺を散歩する。そんなバカンスが過ごせるようになったら最高ですね」
シャンタル・ルクレール=ガルニエール
リタイヤ。
夫婦ともにリタイヤ生活。2024年パリ五輪に向けた再開発地区として注目の17区、大人気のバティニョール地区に隣接するクリッシーに暮らす。長女(37歳)、長男(34歳)は独立。
『ku:nel』2021年1月号掲載
写真 篠あゆみ/コーディネート 鈴木ひろこ/ 編集・文 今井恵
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