【Parisインテリア探訪.2】田舎暮らしを体験し、植物と調和するインテリアを再考。

シニュ・ ベッカー

2021年のロックダウン直前に、スイス国境に近いヴォージュに3週間移り住んだというYlvaya(イルヴァヤ)デザイナーのシニュ・ ベッカーさん。田舎のいいところは伸び伸びと開放的なところと話します。自然と共存したインテリアをご紹介します。

シニュ・ ベッカー
レザーのソファは老舗インテリアショップ、ロッシュ・ポポワで購入。壁に飾ったのはノルウェーの女性フォトグラファーの作品。

陶器を扱うブランド創設者であり、インテリアデザイナーとしても活躍するシニュ・ベッカーさん。3月中旬から始まったパリのロックダウン直前に、夫の両親が住むスイス国境に近いヴォージュに家族とともに移り住み、そこで8週間を過ごしました。

「3世代で長期間過ごしたのは、初めてのこと。大人数でひとつ屋根の下で暮らすことは、お互いの距離感や相手を思いやる気持ちなど、いろいろな気づきがあり、子供たちにとっても学校とは違う学びの時間になりました」。生まれ育ったノルウェーでのフローリスト時代を経て、花器などをデザインするようになったシニュさんにとっては、そこでの暮らしがあらためて自然と触れ合う貴重な時間にもなりました。

「ヴォージュの広い庭で季節の花や植物に触れる生活をし、パリに戻ってから、やはり私は花や植物が大好きなんだと再認識。早速、お気に入りのテラスにオリーヴの鉢を増やし、多肉植物や自作の花器に季節の花を飾り、ボタニカルなムードに整えました」

45㎡の広さを持つテラスは、15年前にこの家に引っ越す決め手となったほどのお気に入りスペース。オーク材のガーデンテーブルは、夫がペンキを剥がし、ナチュラルな木の色にコーティング材を塗り直しました。

「これから寒くなり、植物も寂しい印象になるから、大きなテーブルの色をもっと明るくした方が、みんなの気分がいいかなと思って」。リビングルームに続く第2のサロンとして、読書をしたり、娘たちと一緒に陶芸をしたり。また家族全員でブランチやアペロを楽しむといったシーンにも大活躍しています。そして外出を制限される生活では買い物に対する意識も変わりました。

シニュ・ ベッカー インテリア グラス
白い器とガラスで統一感が美しいキッチンの棚。その間には、シニュさんデザインの花器で、グリーンを演出してアクセントに。

「今までのようにネットやお店巡りで新しいものを買ってインテリアを変えるのではなく、本当に好きなもの、クオリティの高いものを厳選し、長く愛用していきたいと考えるようになりました。たとえばリビングの一角に加えたハンス・ウェグナーの椅子がそう。家での仕事が多いので、デザインがシンプルで、座り心地のいいコンフォートな椅子をずっと探していたんです。やっと出会えました」

シニュさんのインテリアのインスピレーションは「自然」だと言います。「色と調和が大切。白が基調の家なので、そこに植物やクッションなど、手軽に雰囲気を変えられる小物で模様替えを楽しんでいます。たくさんの花やグリーンに囲まれた心地よい空間の中に、70年代のミッドセンチュリーの家具やアジアのオブジェ、アフリカの木彫りのオブジェなどを置き、〝○○風〟などと決めつけないのが、私流のインテリアなんです」家で過ごす時間が増える中、娘たちと一緒に絵を描く、陶芸をするクリエーションの時間を持ち、夕食を囲みながらユーモアと想像力を共有する時間はとても大切と語るシニュさん。先行きが見えず、不安も多い日々ですが、大きな夢もあります。

開放的な広々とした空間
ちらりと見える緑がアクセント。

シニュ・ ベッカー インテリア オブジェ
顔のオブジェは、パスポートができる前、アフリカで国籍証明に使われたネックレス。カメルーン、ガボンなど、国ごとに顔が異なる。
シニュ・ ベッカー インテリア テーブル
手前が最近購入したハンス・ウェグナーの椅子。テーブルの上の花器は、シニュさんがデザインし、ショップで扱っているもの。
シニュ・ ベッカー インテリア デスク
シニュさんのワークスペース。左の椅子は50年代のイタリア製。インドの繊細な木彫り細工が美しいフレームに鏡を収めて飾った。
シニュ・ ベッカー インテリア
大きな窓から中庭の緑が望める気持ちのいいキッチン。機能性重視でイケアのシステムキッチンを採用した。ここにもグリーンを演出。
シニュ・ ベッカー インテリア 椅子
70年代の籐椅子の上にはノルウェー産ムートンの敷物を。ペイントしたトナカイの角のオブジェから下がるサーミ族のアクセサー。
シニュ・ ベッカー インテリア ベッド
テラスに面したベッドルーム。麻のベッドリネンとクッションはメゾン・ド・ヴァカンスのもの。刺し子の布はインド製アンティーク。
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「パリから1時間強の近距離なのに大自然を感じる暮らしができる、イル・ド・フランスにあるフォンテーヌブローに家を持ちたいです。岩山が点在する森を散歩したいですね。そしていつかは生まれ故郷の北ノルウェー、ヴァッツェにもセカンドハウスを。ワイルドな自然にあふれた北欧とパリを頻繁に往復する生活が将来の夢なんです」

『ku:nel』2021年1月号掲載

写真 篠あゆみ/コーディネート 鈴木ひろこ/ 編集・文 今井恵


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