【Parisインテリア探訪.3】子供たちの独立をきっかけに、暮らしを上質でコンパクトに変化。

ヴァレリー・ラドゥレイ インテリア

今回はインテリアデザイナー、ヴァレリー・ラドゥレイさんのインテリアをお届けします。今までは子供たちに合わせた家具、広い空間を必須としていたインテリア。ですが、3人の我が子の独立をきっかけに、お家のサイズをぐっと小さくし夫とゆっくり二人暮らしに。

ヴァレリー・ラドゥレイ インテリア 椅子
フィッシュボーンの床にイサム・ノグチのセンターテーブルやスワンチェアを。ベネズエラ人アーティストの赤いアートがお気に入り。

この夏、息子3人が独立したことを機に、自宅をサイズダウンして引っ越しをしたというヴァレリー・ラドゥレイさん。「夫婦ふたりで220㎡の家はさすがに持て余すので、暮らしをコンパクトにしようとサン・ジェルマン・デ・プレの中心地に125㎡のアパルトマンを見つけました」この家ではおもに夫婦で暮らし、子供たちも自由に泊まりに来られるよう、ふたつのゲストルームも用意しました。

「そのうちひと部屋はふだん仕事部屋として使っています。せっかくパリに住むのならと、オスマニアン様式の部屋にこだわる方もいます。でも私は仰々しくてあまり好きじゃないので、あえて18世紀の建物を選びました」。現代に通じるモダンを感じつつ、派手さのないエレガントが魅力。アパルトマンが建つサン・ジェルマンも、小さい頃に住んでいたという懐かしい街。「歴史を感じつつ、落ち着いた街並みなのも気に入っている理由。夫婦で舞台や映画、オペラを観に行ったり、友人と食事をすることが多いので、そういう意味でも便利な立地です」部屋の両側にある大きな窓からは、一日中明るい日差しが差し込みます。

ヴァレリー・ラドゥレイ インテリア
フラットで生活感のない並列型のオープンキッチン。昔のルノワールのような絵は、ベルギー人アーティストHarry Gruyaertの作品。

またヴァレリーさんが無駄と感じる廊下もなく、すべてが続き部屋でプロポーションがいいのも気に入った点。「今年に入ってリノベイトを始め、ロックダウンで一時中断し、夏前に仕上がりました。工事では収納スペースを増やし、18世紀のアパルトマンが前の改修でその良さを失った部分を元に戻す工事もしたんです。たとえば窓の格子や扉の上の飾りをつけたり、昔っぽいラジエーターを窓の側に置いたり」

その中でもヴァレリーさんがとくにこだわったのがキッチンです。「私も夫も人を招いて食事をすることが大好き。ふたりでマルシェに買い物に行き、一緒にキッチンに立つことも多いんです。家での食事が増えた今、キッチンに妥協しなかったことは本当によかったと思っています」このアパルトマンにたどり着く前に、ヴァレリーさんは大失敗をしたと話してくれました。

生活の一部にアートを溶け込ませて。

ヴァレリー・ラドゥレイ インテリア 棚
オーブンも埋め込み型にし、コーヒーマシンなどは扉を閉めて見えないようにする使い勝手のいい収納に。見た目が、とてもすっきり。
ヴァレリー・ラドゥレイ インテリア グラス
「お気に入りのフローリストで買った花をつねに欠かさないようにしています。テーブルの上にはライトに合わせた赤い花を」
ヴァレリー・ラドゥレイ インテリア
「この花はフランシス・ベーコンの作品に合わせて」。ギャラリーのようであり、インテリアにも溶け込ませるアートセンスはさすが。
ヴァレリー・ラドゥレイ インテリア ベッド 寝室
フットベンチは中国の家具。リネンはブルーグレートーンでまとめて。床置きしたアートは、キッチンにも飾るHarry Gruyaertの作品。
ヴァレリー・ラドゥレイ インテリア 照明
天井から下げたのは、クリニャンクールで見つけたスイス人の若いアーティストの作品であるライト。蚤の市巡りは夫婦揃っての趣味。
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「実は図面上で新築の家を決め、購入していたんです。でも工事が進んでいくにつれ、どんどん迷いが生まれ、どう考えてもこの家に住む自分が想像できないと思い、夫に懇願し、解約してもらったんです。そこから再び家探しをして、この部屋と出合えたんです」インテリアデザイナーである自分を過信した結果の失敗。でも今では夫婦共々あの家を買わなくてよかったと話しているそうです。

「唯一残念だと感じているのは、家の面積が半分になってしまったことで、かなりの家具とお別れしたことです。20年前、中国に3年ほど住んでいたんですが、そのときに買った家具の数々など、別れるのが辛いものがたくさんありました」厳選した家具やアートには心から愛情を注ぐヴァレリーさん。好きなものだけに囲まれた、充実の日々だそう。

「ロックダウンを機に郊外で生活をしたいと考えるようになった人も多いようですが、私たちは会いたいときに人と会える、ある程度利便性のある生活を気に入っているので、パリの中心地以外に住むという選択肢はありませんでした。暮らしに合わせた変化はあるかもしれませんが、この家での生活を楽しんでいきたいと思っています」

『ku:nel』2021年1月号掲載

写真 篠あゆみ/コーディネート 石坂紀子/ 編集・文 今井恵


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