【作家・吉本由美さんの猫暮らし①】愛猫たちと過ごす、忙しくも温かな充実した日々。

吉本さん ねこ

2011年に東京から故郷・熊本市に引越した吉本さん。その際には、飼い猫1匹のみ連れてきたはずが、現在、一緒に暮らす猫は何と計7匹に。そんな大家族の世話に追われ、予測不可能の毎日を送っているとか。その忙しくも温かな日常を垣間見させていただきました。

 

吉本さん ねこ
庭猫一家の娘クロロ。長毛のクロマダラ猫。
吉本さん ねこ
東京生活最後の夜のコミケ。
吉本さん ねこ
避妊手術をしたあとの術後服を着たスミレ。
吉本さん ねこ
コミケにそっくりな庭猫ミケコ。
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どうしてこんなことになる?私の朝は超多忙。

 連れ合いもなく子供もなく、兄弟は遠く離れ友達はまばらで、私は毎日を一人きりで過ごしている。毎日を一人きりで過ごしている高齢者を世間は「孤独」で「寂しい」と決めつけたがるが、そんなことは人それぞれで、私のように真逆な人間もいるのである。もちろん右を向いても左を向いても一人きりだから孤独には違いない。けれど孤独だからって寂しいわけではない。それどころか忙しくってたまらなくて体がもう一つ欲しいくらいだ。たとえば朝。夜更かししたときは別だけれど通常朝は7時に起きる。7時じゃ遅いと言う人が多いが、半分リタイアの夜好き人間としては7時起床が最適ライン。ベッドの上で軽くストレッチしたあとトイレに入る。するとドアの前に猫が来る。まずはスミレ(雌)がお相撲さんのようにドスドスと音を立てて。次にむーたん(雄)が忍者のように忍び寄って。最後に老女コミケが神楽坂の芸者さんのようなシャナリ歩きでお出ましに。用を済ませると3匹を引き連れキッチンに入る。

 キッチンでは「早くしろ」と命令調の鳴き声3匹分にせかされながら床に並んだ彼らの食器を洗い、ボウルに新鮮な水を注ぎ、各自の好みに応じたカリカリ3種を皿に投入。自分に水分補給をしたあと居間のカーテンを開ける。
と、テラスに庭猫3匹が。行儀良く座ってこちらを見上げニャアニャア鳴く。「はいはいはーい」と急いで外猫用朝食セット(カリカリ+煮干し)の容器2つを手にしてテラスへ。6匹から今は3匹となったマミ母娘の食器を洗い、ブラインドを上げ風を通し、デッキを掃いて、彼女らの寝床の敷物(冬場は毛布、夏場はタオル)を庭に干す。それから恒例のブラッシング。外猫なので放っておくと汚れてノラの匂いになるため毎日行う。彼女ら自身ブラッシングは快適らしく、マミをやっていると娘のミケコ、クロロが理髪店の客のように自分の番を待つ。

吉本さん ねこ
長谷川潾二郎の猫絵に似ているむーたんの寝姿。
吉本さん ねこ
⑨さらに好きなのが障子破り!
吉本さん ねこ
昼寝中の母猫マミとミケコ。
吉本さん ねこ
⑪屋根上で思いに耽るクモスケ。
吉本さん ねこ
ブリジット・バルドーに似てる、と噂のスミレ。
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 彼女らとおしゃべりしながら毛を梳いていると表に通じる小径のほうから「ひゅんひゅんひゅん」という鳴き声。どこぞのかわいい坊ちゃんか、と、胸ときめかせる声の持ち主は、熊本地震のあと血だらけの顔でウチの車庫に隠れていた黒猫だ。可愛い声のわりにはブス男くんでそのギャップがチャーミング。車庫にいるのでクモスケと名付けた。さっきの「ひゅんひゅんひゅん」という声は「おいらをいつまで待たせるンだ」という意味である。もっともな催促に「はいはいはい」と容器片手に表に回る。表の車庫が彼の住まいになっている。彼にも黒光りするまでブラッシングを施す。そして耳と目の清掃、団らん、給餌。これで朝の猫仕事は終了した。部屋に戻り時計を見る。すでに9時を回っている。

『ku:nel』2020年9月号掲載

写真・文 吉本由美 / 編集 友永文博


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