【眠りと寝間着のクリエイター】吉田豊子さん/眠りのスペシャリストとして今年66歳で起業。その1

クウネル世代のカッコいいクリエイターを紹介する「クリエイターズ・ファイル」。

今回は30年以上大手インナーメーカーでナイトウェアやリラックスウェア製作に携わり、2023年4月に日本産ルームウェア『衣香舎IKOUSHA』を立ち上げた、眠りと寝間着と部屋着のクリエイター吉田豊子さんのお話を全3回にわたってお届けします。その1は吉田さんのヒストリーと60代で起業した思いをうかがいます。

PROFILE

吉田豊子/よしだ・とよこ

眠りのデザイン研究室・衣香舎IKOUSHA主宰

20代で着物の仕事に携わり日本の美意識に触れ、ニュー着物の普及や芸能人のコスチュームを手掛ける。その後、百貨店での快適なホームスタイルの売り場作りに参画。フリーランスで30年以上ナイトウェアやリラックスウェアを作る現場に入り2万点以上の製品の開発に参加。眠りとパジャマの関係性を追求し、寝る時のパジャマに着替える習慣を提唱。その経験を活かして日本の暮らしを豊かに過ごすために『眠りのデザイン研究室』、素敵な寝間着と部屋着と毎日着を提供する『衣香舎IKOUSHA』を2024年10月31日から本格始動。

流れのままにファッションの世界へ。25歳で中森明菜さんの衣装に携わる

2023年4月に念願の日本産ルームウェア『衣香舎IKOUSHA』を立ち上げた吉田豊子さんは、1958年大阪に生まれました。幼少期から服が大好きで、中学卒業後はマスコットメーカーでアルバイト。大学生になると生活雑貨やホームウェアアイテム・ファンシー雑貨の企画開発に携わるようになります。

「20歳のときには、大阪の箕面駅前のショッピングセンター内で『THE HOUSE』という約2坪の生活雑貨ショップを、母や姉に手伝ってもらいながら経営していました。こういうバイタリティは今も昔も変わらないですね」

今までの仕事の書類はすべて保管しているという吉田さんの秘蔵資料。80年代、吉田さんも参加した衣装を着る中森明菜さんの雑誌の切り抜きや、携わったカタログの数々。

25歳で京都の呉服会社で、ファッション着物ブランド『KIMONO座』など、和のライフタイル提案の開発と経営に参画します。

「京都と東京を往復する生活でしたが、あるとき商品の企画・開発から販売戦略までを一貫して行うMD(マーチャンダイザー)の日本の先駆者・鈴木ルミ子先生と出会い“洋服のような着物”として人気を博したブランド『KIMONO座』に参加することに」

このブランドが当時大人気だった中森明菜さんのスタイリストの目に留まり、名曲『DESIRE』で採用。
「1983年明菜ちゃんが『DESIRE』で日本レコード大賞を受賞し、そのとき着用した衣装は私がコーディネートしたもの、感激しましたね」

自立したワーキングマザーとして新たな生き方を決断

着物の仕事がひと段落した1980年代後半からは東京で暮らし始め、大手百貨店での呉服・婦人子ども服・リビング生活雑貨などのトレンドやMD、売場の編集や商品開発に加わります。

「次にこれをしようと思ったことはないんです。『こんなことをしてみない?』と声を掛けていただいて、『じゃあやってみよう』そんな風に流れに任せてという感じでした。ファッションにかかわる仕事は、どんなことでも楽しかったですね」

吉田さんの人生で大きな転機が訪れます。

「34歳のとき出産のために大阪に戻ります。家族みんなに助けてもらいながら、といっても家事や育児は、ほとんど母と姉任せ。今こうして仕事が続けられているのも、家族のおかげです」

36歳、大手インナーメーカーで丁寧なパジャマ作りに魅せられてコーディネーターとして再始動

百貨店での活動の縁で、ある大手インナーメーカーから吉田さんに声がかかります。それはパジャマや肌着、部屋着などの企画や開発の打診でした。

「家の中の暮らしや、日常生活に和の要素を取り入れる企画展などを百貨店でしていた流れからのご縁でした。ワクワクしながらお引き受けすることにしました。

そして、30年以上フリーのコーディネーターとして、さまざまな商品開発や販売にかかわらせていただき『素材にこだわった上質のパジャマを作りたい』『ファッション性の高い部屋着を提案したい』『おしゃれをする楽しみをパジャマにも取り入れたい』という思いがどんどん膨らんできて。

2023年に個人で事業を始めようと決心。それが『衣香舎IKOUSHA』です。

大手インナーメーカー時代に吉田さんが企画したパジャマ、ネグリジェ、部屋着。「大切にとってあります。どれもおしゃれで可愛いでしょ? こういうルームウェアはサンプルだけで終わったりなかなか広まりづらかったですね」

65歳『衣香舎IKOUSHA』を起業。「おしゃれね!」「素敵ね!」そう言われる寝間着や部屋着を発信したい

30年以上のインナーメーカーや百貨店の売り場作りで培われた知識や経験、おしゃれな寝間着や部屋着を作りたいという思いが結実し、『衣香舎IKOUSHA』が誕生しました。

「大人の女性が心地よく過ごし眠るための寝間着や部屋着を作ろうと立ち上げたブランドが『衣香舎IKOUSHA』です。

寝るだけの服ではなく、着たときに気分が上がるものを作ろうと、日本中の生地の産地をまわり、肌触りが心地よく丈夫な岡山のコットン生地にたどり着きました。そして縫製も国内で。ぜひ肌で感じていただけたらうれしいです」

軽くて柔らかく通気性の良い綿100%のガーゼ素材を使用。黒のガーゼにゴールドパイピングが映えるプレシャスな、衣香舎 寝間着セットアップ 26,000円/(衣香舎)。

バンドカラー、長め着丈のワークウェアタイプの、衣香舎 寝間着セットアップ メンズ仕様 30,000円(衣香舎)。

部屋着として、寝間着にも。そして羽織って近所にお出かけしても。一年中着回しができる、衣香舎 ルームドレス3種。(左)と(中)各22,000円、(右)20,000円(すべて衣香舎)

その2では、吉田豊子さんのライフスタイルを紐解きます。お楽しみに!

衣香舎IKOUSHA

日本産の生地と縫製から生まれた“寝間着・部屋着・毎日着”を展開。素材選び、デザイン、販売などすべてを吉田豊子さんが行う。オンラインショップ、関西や東京のポップアップショップで販売。

衣香舎HP:https://ikousha.jp/
オンラインショップ:https://ikousha.theshop.jp/
眠りのデザイン研究室 https://nemurinodesign.com
Instagram:@ikousha_lifestyle
email:ikousha.co@gmail.com

写真 玉井俊行 取材・文 河田実紀

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