マガジンハウスより刊行している『65歳から心ゆたかに暮らすために大切なこと』。65歳の著者・ショコラさんが、パート勤務に年金をプラスして、月12万円の収入でのびやかに暮らす方法を具体的に記したエッセイは、多くの読者の心をつかみ、背中を押しました。そのなかから、特に注目の箇所をほんの少しご紹介してまいりました。シリーズの最後は、ショコラさんインタビューです。後編ではこれからの生き方について伺います。(前編はこちら)
ショコラ
1956年2月生まれ。2016年、60歳で始めたブログ、「60代一人暮らし大切にしたいこと」がシニアブログとしては異例のPV数を記録し、話題となる。
「老前整理」として不要なものを処分し、好きなものだけに囲まれて暮らす。月々の生活費を12万円ときめ、必要な分だけ働く。無理なく、のびやかな暮らしが多くの人の共感を呼んでいる。
息子2人が小学校に上がったときからパート勤めを始め、42歳で別居、5年後に正式に離婚。43歳で転職、契約社員から社員となり、最終的には営業所長に。57歳で退職してからは、パート勤務。
●ここまでの話
◎①離婚を決意し別居、通い子育ての日々
◎②コツコツ貯めたお金でマンション購入。
◎③12万円の内訳とやりくりのコツ。
◎65歳からの働き方とお金のこと。
◎インタビュー前編/私は現金主義なんです。
――注目を集めている、「月に12万円の生活費で暮らす」ですが、ときには我慢をする場面も出てくるのでしょうか?
ショコラ:服とかバッグとか、「すごいほしい!」って欲求が高まるときはやはりありますよ。そこで飛びつかないで、冷静になって考える時間をとるようにしています。たとえば素敵なバッグを見つけたとします。そのときには「これ以外ありえない!」「一生ものとして使えそう!」なんて欲求が高まっているんですけれども、いったん寝かします。そして冷静になってこう思うんです。「一生使おうと思っても、一生なんてありえないわよ」って。
――耳が痛いです。いくら気に入っていても、時が経てば、新しいものに目がいってしまいますものね。でも、普通はそこまで客観的に考えられず欲に負けてしまうケースが多いのですが……。
ショコラ: これはもう訓練だと思います。「我慢」しながらも、どこかで甘やかす部分をつくって、帳尻を合わせています。「いつか飽きちゃうだろうな」っていうのは長年の経験でわかってきたので、ほかの楽しいことに頭を切り替えてリセットするようにしています。
「シンプルに暮らす」ことについて
――ショコラさんの生き方のテーマでもある「シンプルに暮らす」について、決めているルールはありますか?
ショコラ :わたしの場合は本当に、やりたいことだけやるっていうところでしょうか。
――本のなかにも「64年と11カ月生きてきて、いまほどストレスがないときは、これまでなかったかもしれません」と書いてありましたね。人生を振り返って、「いまが一番」といえるのは、本当に素敵なことです。
(ここで、『65歳から心ゆたかに暮らすために大切なこと』の担当編集者登場)
担当:ショコラさんは幸せの基準がはっきりしていて気持ちいいですよね。人はたいてい、「まわりと比べて自分はどう」って思って喜んだり悲しんだりしてしまいます。でも、ショコラさんの暮らしを知って「そういうことではないんだな」、「65歳になってこういう暮らしができたら最高」って思われる読者の方が多いようです。
「幸せのかたちは人それぞれ」、そういう勇気をもらえるのですね。そして、40歳過ぎて、そのとき働いてなくても、その歳からでもショコラさんのようにバリバリ働けるといういうモデルケースにもなっているんですね。
ショコラ :自分の好みや、こうなりたいということをはっきりしていくことは大事ですね。そして、それはすべて自分が基準。人と比べることはしないですね。もちろん、「あの人いいな~」とは思うこともありますよ。でも、「だから自分はどう?」とは思わない。
――今後「こうしていきたい」などビジョンはありますか?
ショコラ :あまり遠い未来のことは考えず、近い将来のことしか考えていませんね。いままでもそうでした。たとえば、「60くらいには年金をいくらもらってそのお金でどう暮らして……」、とかいう予測は立てますよ。実際に起こることですし。でも「じゃあ70歳とかになったらどうするの?」って聞かれたら、それ以上は答えられないですね。65歳っていうのがいまのピリオド。
――先の老後の心配をされる方も多いと思いますが。
ショコラ :そうですよね。わたしも「仕事をやめたらどうなるだろう?退屈だろうな」とか、その程度のことは漠然と考えています。でもそれ以上はないですね。たとえば、「要介護になったらどうしよう?っ」て心配している方もおられると思います。なるかもしれないことを考えるのはすごく大事なこと。わたしももしかしたらボケてしまうかもしれない、老人ホームに入るかもしれない。でもそれが何歳になるかなんてだれもわからないじゃないですか。
――そうですね。ならないかもしれないですし。
ショコラ :そう、だからあんまり先のことを深く考えすぎないようにしているんです。未来って本当にどうなるか分からないですもの。40代のとき、何かで耳にして、ずっと大切にしている言葉があるんですす。
「起こるかどうか分からない将来のことを心配して、いま現実にある幸せを捨てることはない」
――深い言葉ですね。
ショコラ : 病気になるかな?とか、お金に困るかな?とか、起こるかどうかわからない先のことにとらわれて、いま現状の幸せに目を向けないのはもったいないって思っているんです。
わたしにとって一番身近で、リアルな老後は、いま91歳の母や88歳の叔母なんです。おかげさまで、どちらもすこやかに暮らしています。それがわたしにとっていま描けている未来。ご家族に要介護な方がいらっしゃる方とかは、また捉え方がちがうと思うのですが……。
――では、いまは本当に「心ゆたかに」暮らせているんですね。
ショコラ :はい。心配は息子が結婚しないくらいかしら(笑)。まあ、結婚したから幸せになるとは限らないですし。
――はい、幸せのかたちは人それぞれですものね。
以上で【月12万円で心ゆたかに暮らす65歳ショコラさんの話 】 の連載は終了いたします。もっと詳しくお知りになりたい方は、 『65歳から心ゆたかに暮らすために大切なこと』 をぜひお手にとってください。
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撮影 林ひろし/聞き手 鈴木麻子