【月12万円で心ゆたかに暮らす65歳ショコラさんの話②】。コツコツ貯めたお金でマンション購入。

ショコラ

マガジンハウスより刊行している『65歳から心ゆたかに暮らすために大切なこと』。65歳の著者・ショコラさんが、パート勤務に年金をプラスして、月12万円の収入でのびやかに暮らす方法を具体的に記したエッセイは、多くの読者の心をつかみ、背中を押しました。そのなかから、特に注目の箇所をほんの少しご紹介してまいります。シリーズの最後には、ショコラさんインタビューも。第2弾は、46歳で一人住まい用のマンションを購入し、老後に向けて人生設計を考えたお話。

前回からの続きです。

 46歳で買った小さなマンション。住むところさえあればなんとかなる。

別居して初めて住んだのは1K、水道費込みで6万2千円のアパートでした。その部屋には寝に帰るだけだったので、それで十分でした。とはいえ、子どもたちが遊びに来るには手狭だし、キッチンも小さくて。正式に離婚した後、2DKぐらいの賃貸マンションを探していました。

そんなとき、子どもたちの小学校のPTAで知り合い、いまも仲良くしている友だちから「こんなチラシが入ってたよ」と分譲新築マンションを勧められました。持ち家なんて考えたこともなかったし、「そんなの無理」と断ったのですが、友だちも退きません。住宅ローンの返済プランは、月々6万5千円でボーナス払いを合わせて、35 年ローンが組めると書いてあり、 販売価格は2千万円をわずかに切っていました。

 1年前に正社員になったことだし、これならわたしにも手が届くかもしれない。そう思いなおして、モデルルームを見学にでかけました。

見せてもらったのは、低層階フロアの1LDK。トイレとバスタブをかねたユニットバスだったのが気になって躊躇していると、販売担当者が「高層階なら、まだ工事前なのでバスとトイレを分けられますよ」と言ってきました。

フロアが上になると100万円以上加算されるので、断ろうとしましたが、 相手から「こんないい物件ないですよ。いまなら、キャンセルが出たオプションのフローリングを付けます」と、譲歩されて、手付金を入れて申し込むことになりました。頭金に入れたのは100万円。契約や入居にかかる諸経費は母から 60万円援助を受け、自分の手元に200万円は残すことにしました。通帳の残高がそのくらいあると安心なのです。

35年の住宅ローンの借り入れは、簡単にはいきませんでした。不動産販売会社の社長が一緒に金融機関をまわってくださり、3か所目でようやく決まりました。

それがいまも住んでいる部屋です。シングルかディンクスのカップルが暮らす間取りで、窓からの採光がたっぷり。あのとき、チラシを持ってきてくれた友だちは、命の恩人といったら大げさになりますが、それに準ずるぐらいに感謝しています。なぜなら、持ち家があるかないかでは安心感が全然違いますから。

この部屋があるから、「住むところはあるし、たとえ貯金が尽きても、こ こを売れば当面の生活費はまかなえる」と、心のゆとりになっていると思います。

ショコラ 

60歳になれば、 企業年金が5万円もらえる。

そろそろ潮どきかな、と感じたとき、その直感に素直に従えたのには、いくつか理由がありました。先にお伝えしたように、住宅ローンを完済して、 借金はない。半分でも退職金は入る。貯金も少しは手元にある。それに加えて、あと3年待てば、企業年金がもらえることがとても心強かった。普通の老齢年金は65歳からですが、企業年金は60歳からなのです(今後は段階的に 支給開始年齢が引き上げられるようですが)。

 パート時代の4年間と、会社員時代13年間を合わせて、毎月約5万円になります。ここまでは、なんとか頑張っていこうと前向きに考えられました。

老後の資金は、いくらあれば安心かと問われると、なかなか答えられないもの。だから不安が募ると思うのです。 わたしは、「企業年金支給まであと3年」と、目安ができたことが「いま、退職しても大丈夫」と背中を押してくれたように感じました。

 それまで家計簿をつけていたので、わたしには月12万円の生活費があれば暮らしていけることがわかっていました。その割り振りについては、あとのページでくわしく紹介したいと思います。月12 万円と決めてしまうと、やりくりはとてもシンプルになりました。12 万円を確保しながら、できるだけ貯金を取りくずさないために、どうしたらいいか、退職届を書く前に、じっくり考えました。2か月分の有給休暇も残っているし、このあいだに準備ができると心は晴れやかになりました。

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撮影/林ひろし

●月12万円で心ゆたかに暮らす65歳ショコラさんの話
①離婚を決意し別居、「通い子育て」の日々。

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