都心から鎌倉へ移住。三角屋根と焼杉の壁の一軒家。トルコの手織りラグなどクラフトがアクセント

各界著名人の気になるお住まいを拝見。これまで住んできた家のお話も合わせてお聞きする「住まいの履歴」。今回はアートディレクター、「アピスとドライブ」オーナーの今井クミさんのお住まいです。

大都会から鎌倉の「隠れ里」へ。ガラリと変わったライフスタイル。

オフィス兼、喫茶スペースのキッチン。ステンレスと黒が基調の大人っぽい空間。よく使う道具や器はオープン収納にしている。

鎌倉・銭洗弁財天のそばの谷戸(やと)に、今井クミさんの住まいはあります。2年前に都心から夫婦で引っ越してきました。 谷戸とは、周囲を小高い山に囲まれた谷間の土地のこと。ここも南の窓の外はすぐ山になっていて、竹が茂っています。

「山の隣なんて住めるのかしら?と少し不安に思ったのですが、今となっては、そこがかえって良かったです」

いろいろな土地を探すなかで、「ほかは東京でもありそうだけど、こういう立地こそ越してくる意味がある」と、鎌倉 に住む人に背中を押されたのだそう。

直射日光を避けた心地よいリビング。傾斜した米栂(べいつが)の天井が温かな雰囲気をつくっている。トルコの手織りのラグや、旅先から持ち帰ってきたアートやクラフトがアクセントに。

先輩の建築家が設計した家は、黒い焼杉の壁に覆われた三角屋根の一軒家です。 「ここに来る前は、東京・神宮前にいました。鉄骨造りで1階はガラス張りの事務所兼住まいでした。いつか、都会を離れて暮らすなら木の家に、焼杉の壁がいいと思っていたんです」

無垢の木の床、米栂の天井、自然素材中心の家は、伸びやかな空気感をまとっています。大きな窓の外には、風にそよ ぐ竹林......。

寝室奥のデスクコーナー。壁にはバーを取り付けてよく着る服をかけている。

「神宮前の家もとても気に入っていて、『ここに一生住む』というつもりだったんです。でも、コロナで世界がストップ してしまったときに、閉塞感を感じたんですよね。それで気分転換に遊びに来た鎌倉がすごくリラックスできて。土が近い感じというか。呼吸が深くなり、心がふっと軽くなったんです」

それから二か月後には、この土地に決めていたというから、よっぽどこの土地に引かれたのでしょう。

寝室の本棚にはアートブックがずらり。棚の上には作家のアート作品や南アフリカで買ったオブジェをディスプレイ。

「都会での生活は、もう考えられない。 それくらい、ここでの暮らしが気に入っています。夜になると静かで、真っ暗で、 深い深い眠りに入れるんですよ」

趣味のお茶を楽しみたくて、和室をしつらえた。時にはギャラリースペースに。壁と天井には、 草木染めの和紙を貼った。

住まい年表

20代 梅が丘の家
父の他界後に母とつくった二世帯住宅。結婚前に住んでいた。ドアも無垢材で、木の温もりたっぷり。天窓から空が見える日当たりのいい家。

30代〜40代後半 神宮前の家
結婚後、長く暮らした鉄骨造りの家。 今とは対照的、超都会の便利な場所 にありモダンな雰囲気。地下と1階がオフィスで、2~3階が住まい。

PROFILE

今井クミ /いまい・くみ

アートディレクター、「アピスとドライブ」 オーナー
デザイン事務所「アピスラボラトリー」代表。広告や、商品パッケージなどのデザインをする。週末限定のギャラリー喫茶『アピスとドライブ』も営む。スキンケアブランド『ジョ シーユ』のディレクションも。

『クウネル』2024年9月号掲載 写真/馬場わかな、取材・文 /鈴木麻子

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『クウネル』NO.128掲載

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