小さな驚きを召し上がれ~フレンチシェフ×デザイナーのレストラン『OLINA』
フランス人シェフと元ファッションデザイナーが作ったフレンチレストラン『OLINA(オリナ)』が東麻布にオープン。パリで培われたフランス料理の技術とアートな感性で、新たな食の体験を提案する2人に話を聞きました。
目 次
パリから帰国後、わずか1か月でのスピード決定
フランスやオーストラリアなど、ミシュラン星付きも含むさまざまなレストランで経験を積み、スーシェフも務めてきたオリヴィエ・ガルシアさんと、ファッションブランド『Acne Studios』のデザイナーとして活躍して来た高遠菜都子さん。パリで暮らしていた2人が日本へ帰国したのは2023年春のこと。
「以前から私の地元である千葉県の木更津で、料理を通して地元の方たちと関われるスペースを作りたいと考えていたんです。彼も新しい国での挑戦に意欲的で、"パリではない場所で新しいことを始めたいね"と話していたこともあり、そのプロジェクトを進めるために帰国しました」(菜都子さん)
その後、オリヴィエさんが勤めていたレストランのオーナー夫妻が日本に移住。彼らから東京でのレストランオープンの話が来たのは、2人が帰国してわずか1か月後のことだったそう。
「私たちは既に木更津で動き出していたんですが、東京のお店の話がトントンと進んでいったので、ローカルプロジェクトは家族と一緒にゆっくりと進めながら、まずは東京のお店にトライしてみようということになりました」
目指すのは自由で心地よい「ラスティックモダン」なレストラン
『OLINA』のオープンにあたって、2人が目指したのは「ラスティックモダン」なレストラン。"素朴さと現代的な佇まいを組み合わせる"というこの言葉の意味は、「懐かしさを感じながらモダンなフランス料理を提供したい」という思いと、もともと「ローカルで地域や若い生産者との関りを深めながらスペースを作りたい」と描いていたイメージにも通じます。
「店内の設えは、ゲストが訪れた時から居心地のよさを感じる色使いやライティング、テーブルや仕切りの微妙な高さにもこだわりました。"ちょっといいもの食べたいな"という気軽な感じでも、ドレスアップしても落ち着ける空間で、フレンチに対する堅苦しさやハードルを外して楽しんでいただければと」
キッチンはフレンチには珍しいフルオープンスタイル。ここにはシェフであるオリヴィエさんの思いが込められていると言います。
「キッチンと客席は、空間の距離感を保ちながらどんな様子かお互いに確認できるようこのスタイルに。みなさんにはキッチンの様子を見ていただきたいですし、私はゲストの方々が料理をどう感じているか、特に一口目の反応が気になるので、毎回緊張しながらそっと見守っているんです」(オリヴィエさん)
他にも特徴的なのが、スタッフのユニフォーム。こちらはデザイナーだった菜都子さんが手がけたのだそう。
「ワークウェアをデザインしていた経験を活かして、フレンチワークウェアにインスパイアされたユニフォームをデザインしました。機能的なのはもちろん、フレンチレストランのイメージの一新にもひと役かっています」
「発酵」の力と日本の食材で作り出す『OLINA』流フレンチ
『OLINA』では「シェフのおまかせコース」1種類を用意。使用する食材はオリヴィエさんの「できるだけ地元(日本)のものを」という考えから、生産者のもとに足繁く通い、味だけでなく育て方も含めて共感する食材を選んでいるのだそう。
「日本の食材をフランスのテクニックで料理したり、定型ではない素材の組み合わせやアレンジは"喜んでいただけるはず"とワクワクする一方で、その反応が気になって緊張もします。そして私のキッチンでは"発酵"も重要な要素になっていますね」
パリのレストランでは"発酵チーフ"だったというオリヴィエさん。肉や魚の熟成、野菜の発酵に関心が高く、『OLINA』のメニューにも発酵食材をふんだんに取り入れています。
「発酵は1つの食材からさまざまな風味や質感が得られる、食材の可能性の扉を開く技術です。食材を余すことなく使い切ることもできる。その技術を使って、見た目では想像がつかないようなたくさんの味と食感を、ひと皿に盛り込んでいます」
ミニマルかつグラフィックなビジュアルからは予想できないおいしさをゲストに楽しんで欲しいと、メニューリストの説明も極力ミニマル。
「先入観なく自由な感性で、食事を楽しんでいただけたらと。"この野菜にはこんな味わいがあったんだ"というような、小さな驚きと発見を感じていただきたいと思っています」
心の底まで感動してもらえる料理を提供していきたい
「東京は屈指のグルメシティ。私たちは星の数ほどあるレストランの中に、ふっと出て来た新星みたいなものです」と話すオリヴィエさんと菜都子さん。だからこそ『OLINA』には、クラシカルに留まらない自由なフレンチを展開できるかろやかな空気が満ちています。
「私たちはまだまだ無名な存在。もっと多くのみなさんに『OLINA』の料理を知っていただけるよう、日々、創造性を最大限に発揮しています。心の底まで感動してもらえるような料理で、本当に素敵なひとときを過ごしていただきたいですね」
懐かしさと新鮮さのある味と香りに溢れ、五感に響くような「日本の食材」「発酵」「フレンチの技術」の融合。フランスの感覚的な繊細さと、日本の風土が織りなすおいしさの体験を、ぜひ。
Olivier Garcia(オリヴィエ・ガルシア)/ヘッドシェフ
フランス出身。20歳で料理の世界に入り、オーストラリア、フランス、スウェーデンのミシュラン星付きレストランを含むさまざまなレストランで経験を積み、2019年、パリ『TARAMAグループ』のガストロミーレストラン『Tracé』にてスーシェフ、同グループのガストロワインバー『Nellu』でシェフを務める。2024年2月、『OLINA』のヘッドシェフに就任。
©2024 OLINA
高遠 菜都子/レストランマネージャー
千葉県出身。ファッションを学ぶため2009年に渡仏。デザインやオートクチュールの専門学校、パリのトップメゾン勤務などを経て、『Acne Studios』に就職。デニムなどのワークウェアデザイナーとして活躍し、2018年に本社のスウェーデンへ移住後、パリへ戻りフリーランスに。2023年3月オリヴィエとともに帰国し、2024年2月、『OLINA』のレストランマネージャーに就任。
©2024 OLINA
OLINA
住:東京都港区東麻布3-6-11 THE CITY 麻布十番 EAST 5F
営:火~土、12:00~15:00 (ランチ)、18:00~23:00(ディナー)、※金・土のみ21:30~24:00までワインバーを営業
休:日・月
公式ホームぺージ:https://olina.tokyo/
公式インスタグラム:https://www.instagram.com/olinatokyo/
記事TOP画像、サムネイル画像:©2024 OLINA
取材・文/松永加奈